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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第3話 『試作』

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「で、『ゴーレムマスター』ってなに?」


 みんなして騒いだあと、ひとりで部屋に帰ったところで首を傾げた。

 それを全く考えていなかったのだ。


「えーっと・・・」


 『神託』を受けた教会でのレクチャーを思い出してみる。


 すべての『適性』に共通するシステムの立ち上げ方だ。


 そう。『ステータスオープン』の魔法である。

 呪文はいらず、単に魔力で自分の内面を引き出す感じ。


 青白い光の粒が集まり、薄い板のような画面が空中に浮かぶ。


「出た」


 ちょっと手間取ったものの、目の前に三次元モニターを出すことに成功した。

 要はアレだ。

 スマホでアプリを開く感覚である。

 魔力という動力を流し、自身の意志というパスワードを入力するイメージだ。


 『オレ』先輩の知識によるものだ。

 『僕』には馴染みのないイメージだからね。


 で、青く光るウィンドウには・・・。



 【『ゴーレムマスター』:ゴーレムを制作・使役する。】



「いや、それくらいわかるっちゅうねんっ!」

 簡単すぎる説明に、思わずエセ関西弁でツッコミを入れた。


 エセ関西弁ってなんだろう?




「はぁ」

 時間を置いて、ともかく自分を落ち着かせた。

 というか・・・。

 『僕』よ、難しいと思った問題を全部『オレ』に投げるのはやめろ。


 ・・・まぁいい。


「あれだな。ようは中古で買ったゲームソフトみたいなもんだ」

 安く投げ売りされている代わりにマニュアルがないなんてよくあることだ。

 やりながらルールや設定を読み解くしかない。


 それと同じだと思えばいい。

 懸念は、リセットボタンがないこと。

 変な結果になったら取り返しが付かない「かもしれない」ってことだ。




「とりあえず————」


 魔力を少しずつ込めながら、『ゴーレム制作』を実行してみる。


 ふぉんっ!


 柔らかな音とともに、足元に魔法陣が展開した。

 黄金色の線が床を走り、五芒星がゆっくりと形を成していく。


 おお。なんか魔法使ってるって気になる。

 テンションが上がるね。


 誰が書いているんだ?

 問い質したくなるほどたどたどしいが、まぁ愛敬だろう。

 魔法陣も初心者とかあるのかね?


 で。



 【『材料選択』:材料を選択してください。】



 項目が出た。


「なるほど」

 『制作』だからな。

 材料が必要なわけだ。


「と言ってもな」


 きょろきょろと部屋を見回してみる。

 初めてだし、まだ子供の体で作るのだ。

 小さい方がいい。


 あと、万が一のためにも弱いのがいい。


 だけど・・・。


 ゴーレムの材料になりそうなモノなんて転がっていない。

 そんなに都合よくはいかないよな。

 笑ってあきらめようとした。


 その瞬間、閃いた。


「いや、ある!」


 思いついた。


 『亀』だ。


 うん。自分でも意味不明なことを言ったとの自覚はある。

 もちろん、本物の亀をどうこうするって話じゃない。


 折り紙だ。


 引きこもっていた頃、暇さえあれば折り紙を折っていた。

 動物も花も、気づけば床が埋まるほどだった。

 特に亀は三種類の折り方を駆使して作りまくった。


 ・・・今考えると、もうその絵面だけで精神科医を呼ぶ光景になるな。


 ともかく、紙ならこの部屋にもある。

 質は前世世界とは比較にならないほど厚くて硬いが、ゴーレムを作るならそれくらいの方がいいだろう。




 『ゴーレム』と聞くと大概の人は、人型の石像がのっしのっしと歩く姿を想像するだろう。

 しかし、それはあくまで一例に過ぎない。


 ゴーレムとは、無機物に仮初の命を与えた存在の総称だ。

 材質も形状も問わない。

 人型が多いのは、ただ生活に便利だからにすぎない。

 ・・・と、書かれていた——気がする。




 読める本を片っ端から読み漁った書庫。

 そこにある魔導書の類にそう書かれていた、正しいかはわからない。

 正確なことは、今後自分で確認しながら進めることになるだろう。


 そんなわけで。

 机から紙の束を取り出し、一枚を正四角形に切る。



 15センチ・・・いや、15マルク角だ。

 センチとマルクは基準に同じものを使っているようで、数字部分は前世の記憶と変えなくていい。


 ただ、単位がセンチではなくメルテ。

 メートルはサーメルとなる。


 数字部分は違わないので、あまり気にはならないし、しない。



 ハサミが無くてナイフなのが怖いが、何とか切れた。

 あとは、折り方を覚えているかどうかだけが心配になる。


「・・・意外と覚えているものだな」


 折り始めると、すぐに思い出した。


 というか、折りながら『材料選択』で目の前の紙を選択したら、ほぼほぼ自動で折られていき完成した。

 手作業は必要ないらしい。

 頭の中に制作するデザインがあればいいようだ。


「これでいいのかな?」

 形はできた。

 これで動くのか?


 『命令書込』:命令を書き込んでください。



「なるほど、ゴーレムだもんな」

 命令を書き込む必要があるわけだ。


「えっと」

 とりあえず『指示通りに動け』としてみる。



 【『字数制限』:5文字までで書き込んでください。】



 そうきたか。

 何となく予感はあった。

 『書込め』だからな。


 5文字か。

 なら・・・『命令で動け』、なら?


 行けそうだ。

 羽ペンにインクを付けて書き込む。

 紙でよかった。



 『ペーパーゴーレム(亀)Lv1』を製作、完了。



 出したままだったウィンドウにそんな文字が出た。

 そして、『亀』が動き出す。


「おお。動いているっ!」


 ゴーレム一号が誕生した。


 センチに満たない、短い首が、小さく揺れた。


 紙の質感のままなのに、動いた。

 その違和感が、逆に胸を熱くした。



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