第35話 『ぼく、そう?』
1/2
そんなわけで、坑道掘りをイーアンさんに任せて、『僕』は隠れ里(命名『オレ』さん)に戻ってきた。
『ちょっと出しゃばり過ぎた』とか言って、『オレ』さんは引っ込んでしまっている。
どっちもクアルトなんだから、かまわないと思うんだけど『スジガトオラナイ』んだそうだ。
よくわからないけど、大人のツゴウってやつなのかも。
『僕』の後ろには『ジンクゴーレム』の騎士が一体付いてきている。
護衛ということではなく、今回は荷物運びだ。
昨日、『オレ』さんが考えていた『ジンク』製パイプを背負ってくれている。
これで、『家』がもう少し立派になるはずだって言ってた。
今の『家』も気に入ってるんだけどな。
一部屋しかなくて、みんなで『ザコネ』? できる。
生まれ育った家ではできない経験だもん。
「クアルト様!」
周囲の人たちからの視線には応えないで真っ直ぐ家に戻ると、アンナがびっくりした顔ですっ飛んできた。
「どうしたの?」
首を傾げてしまう。
なにか慌てるようなことがあったかな?
「か、彼は・・・何者ですか?」
彼?
アンナの視線を追う。
「ああ」
自分がバカ過ぎて呆れちゃう。
アンナが警戒しているのは『ジンクゴーレム』だ。
見たこともない重装歩兵連れてきたら、そりゃびっくりするよね。
「大丈夫だよ。僕の『ゴーレム』だから」
「え?」
うわっ。
すっごいマヌケ顔!
普段とは違う残念な顔が、ちょっとかわいいかも。
「ご、『ゴーレム』なのですか?」
「そうだよ。せっかくの鉱山だからね。残ってた鉱石で作ってみたんだ。『あえん』っていう金属らしいよ?」
よくはしらない。
金属って聞くと『僕』にわかるのは、『鉄』、『銅』、『金』、『銀』くらい。
他は見たことないしわからない。
「……クアルト様。これは……本当に……?」
アンナの声が震えていた。
「だって…紙と、布‥…」
「ここは鉱山だもん!」
「鉱山・・・あ。なるほど・・・言われてみれば材料がたくさんあるんですね」
「うん。そうなんだっ!」
うれしくて、ちょっとはしゃいじゃった。
「でね。『ゴーレム』を作るやり方で、こんなの作ってみた。家づくりに使って」
『ジンクゴーレム』にお願いして、パイプを下ろしてもらった。
ああ、それと板。
平らになってるのもある。
「これは・・・助かります」
アーネストが一本と一枚を持ってみて、使えると思ったみたいだ。
助かったって顔で笑ってる。
「では、さっそく」
パイプを手にしたアーネストが、家を振り返った。
なにするのかとみていると、屋根に使ってた枯草を全部払い落としている。
で、代わりにパイプを並べた。
柱がいらなくなったんだろうね、真ん中の石を積んだ塔も崩しちゃった。
あれは・・・うん。
寝るときすごくジャマだったからうれしいかも。
で、石壁の上に並べたパイプの上に、板を並べていく。
これで屋根にするみたい。
そっか。
だから草を払い落しちゃったんだね。
もう使わないから。
使わない・・・のか。
アンナがはいて、一か所に集めた枯草の山を見る。
使わないとして。
「使えないかな?」
ちょっと考えちゃった。
だって、金属とかは『オレ』さんに任せるしかない。
よくわかんないもん。
でも、僕だって『ゴーレム』作ってみたい!
『オレ』さんは、こんなこと考えなさそうだし。
『枯草』で『ゴーレム』作るとか。
何の役に立つの? って感じだもんね。
こんなの、子供じゃないと作ろうなんて思わないよ。
つまり,『僕』だね!
『僕』だからの『ゴーレム』も一体くらいいていいと思う。
だよね?
いいってことで!
「『ゴーレム制作』っ!」
【『ドライグラスゴーレム』を制作しました。】
「できちゃった・・・」
胸がドキドキして、なんか笑いが止まらない。
で。
んと。
『素材鑑定』で『枯草』があったんだから、作れるのは当然なのかな?
でも、ほんとにできちゃうもんだね。
形は・・・なんだろ?
こんもりとした山になってるんだけど?
「寝藁ですか?」
「ねわら?」
アーネストの手伝いをしていたアンナが、声をかけてきて首を傾げてしまった。
とっさに思い出さなかったんだもん。
しょうがない。
だけど、よかった。
すぐに思い出せた。
馬の寝床、馬房にある敷き藁のことだ。
「寝藁かぁ。確かにそうだね」
枯れた草を集めて重ねたものだ。
家畜を寝かせるために置いておくもの。
ちゃんとしたものだと小麦の茎とかで作るけど、家畜のエサにしようと集めたけど質が悪かったものとかを使うこともある。
家でもたまに騎士団の厩務員さんが草刈りついでに、刈り取った草を干して作ってるのを見ることがある。
外にまとめられた草の山は格好の遊び場だ。
飛び込んでよし、隠れて脅かすもよし。
勉強サボって昼寝するなら、最高の場所になる。
暖かいし、柔らかい。
「っ!?」
思いついた!
「これいっぱい作って、家の床に敷けばいいんだ!」
そうすれば、夜暖かくて柔らかいとこで眠れる。
昨夜はちょっと肩とか腰が痛かったし、じっとりしてたもんね。
地面に薄い布敷いただけだったもん!
「ザコネ?」
なんかそんな言葉があった気がする。前の世界で。
でも、みんなで寝るのって楽しいよね。
「そうしよう!」
あたりを見渡せば、枯れた草なんていくらでもある!
「あー、そっか」
後ろ頭を掻き掻きしながら、息を吐いた。
『いっぱい』とは言ったけど。
『一つの素材で10体』なんだよね。
10体作ったところで止まっちゃった。
枯草はまだまだいっぱいあるのに!
物が『草』だからか、魔力にも余裕あるのにっ!
「えっと。無理に使わなくても・・・」
様子を見に来ているセティが、なんか遠慮がちに声をかけてきた。
隠れ里の中を歩き回っていたのが目に入ったみたいで、話しかけてきたのだ。
ちょうどいいと思ったから、「枯草使っちゃっていい?」と聞いてみたんだよね。
返ってきた答えは、「畑の雑草抜いて放置してるだけだから、無くなってくれた方が嬉しいかな。
あんまり増えすぎると、そのうち火事の心配をしないといけないから」ってことだった。
ならばって、全部なくしちゃおうと頑張ったんだけど。
全然なくなってない。
セティは、僕の作った寝藁の山を見て、ぽかんと口を開けていた。
「……ほんとに、作れるんだ……」
なんだか、ちょっとだけ尊敬された気がした。
だけど――
「むう」
つまんない。
なんとか、もっと作る方法ないかな?
「あっ!」
「えっ?」
思い出してつい、大きな声出しちゃった。
驚かせたみたい。
「ごめんなさい」
「え、あ。ううん。大丈夫。なにかあった?」
「いいこと思い付いた。たぶんだけど」
『オレ』さんがやっていたことだ。
『ペーパーゴーレム』の『積層』。
『クロスゴーレム』の『重ね着』。
この『ドライグラスゴーレム』には『集約』がある。
たぶん、同じ内容だと思うんだよねっ!
『オレ』さんなら、もっと慎重にやるんだろうけど……僕は楽しいからいいや!
「スキル『集約』発動!」
これでどうだ!
「できた!」
10体のゴーレムが5体になってる。
で、レベルが2になった。
これはいける!
「さらに、こうだっ!」
5体のうち4体を『集約』!
「おおっ!」
またしてもレベルアップ。
雑草って簡単にレベルが上がるんだねっ!




