第34話 『奴隷の就労条件』
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「す、すごいですね」
お?
イーアンを忘れていた。
ずっと横にいたけど、空気だったからな。
ちょっとびっくりした。
とりあえず・・・。
「すごいでしょっ!」
えっへん!
胸を張っておいた。
年相応の反応ってやつだ。
それはそうと。
「えっと、この辺で何か『銅』以外の鉱石って見た覚えある?」
「『銅』以外、ですか?」
首を傾げている。
いや、別に『銅』でもいいんだけどさ。
『銅』は徹底的に掘り尽くしているっぽいから、たぶん望み薄。
放置されている他の鉱物に期待したいわけなのだが?
「・・・・・・」
なんか、すっごく悩まれている。
チラチラと、『ジンクゴーレム』、『ライムストーンゴーレム』、『ゴールドゴーレム』、『シルバーゴーレム』を見ていた。
『銅』しかは言わなかったが、これら以外のことだとわかってくれているのだ。
「鉱石でなくて、石材でもいいんだけど?」
今度こそ大理石とか。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言はやめてくれ!
居たたまれなくなるからっ!
「おもいあたりません」
首を振られた。
あー、何となく予想はしたよ。
そうでなければ、あんなに悩まないだろう。
まぁいいか。
「わかった。もし何か思い出したら教えてくれ」
「それは・・・はい。わかりました」
うん。ゴーレムはとりあえず、これで作り止めっと。
「話しは変わるけど、この鉱山って鉱夫たちの・・・いや。人質と奴隷の働き方ってどんな感じになってるの?」
「働き方・・・ですか?」
あ。意味が伝わっていないな。
「んーっと。監視が付いているとか、ちょっとでも動きを止めると鞭が飛んでくるとか?」
なんか、奴隷で鉱山だと、そんな光景が目に浮かんでしまう。
「な、なんですか。その地獄は?」
「違うの?」
「もちろん違います!」
違うらしい。
「では、どうなってるの?」
違うと断言するのなら、正解を教えてほしいものだ。
「基本的には放置です。坑道を掘らせて、鉱石を採掘させるだけですね。その量が一定レベルを維持している間は、完全に無干渉。著しく低下していると、見せしめに誰かが痛めつけられることもありますがまず起こりません」
「監視はついていないんだ?」
「どうせ、坑道内からは逃げ出せませんからね。監視しても意味がないですし、労力が無駄になりますから」
もっともだ。
監視していたところで作業効率は上がらないからな。
監視員を置くくらいなら、そいつらにも鉱石を掘らせる方がいい。
「奴隷に与えられている命令・・・正確な内容は知ってる?」
こまごまとした内容で縛られているとしたら、正直手は出せない。
シンプルで単発の命令なら、何とか裏をかけるかもしれないと思うんだけど。
「『銅を含む鉱石を掘り続けろ。掘り出した鉱石は通路に出して置け』だったと思います」
「・・・え?」
「なにか?」
「それだけ、なのか?」
いや、待て。
その前に。
「通路に出して置け?」
「掘ることに専念させておきたいようで、そう命じられているということでした。通路に置かれた鉱石は、見回りついでに兵隊が集めていましたよ」
採掘を命じられている。運ぶのは別の者の仕事。
そういうことか。
ならば、連れ出しても問題がないのでは?
『銅鉱石を掘って』さえいれば、命令違反にはならないってことだからな。
「奴隷って、主の側にいなくても苦痛を与えられたりするのかな?」
遠隔で罰を与える仕組みとかあると困るんだが?
「高額な奴隷用の拘束具には、そういう能力もあるそうです。ですが・・・」
「あー。いい。わかった」
高額なら、鉱山労働用の奴隷に使うわけがない。
「人質と奴隷のいる坑道にも案内を頼めるか? 全部の坑道という意味だが?」
一か所、では意味がない。
「すべて繋げるということでしょうか?」
そうなるのか?
「代官側でない人間はすべて保護したい。その目的に必要なら、全部だな」
「それでしたら、全部ですね。専属の鉱夫たちも、いまでは代官側ではありませんので」
いまは、か。
「前は支持していたわけだ。なぜ心変わりを?」
理由が分からないと、信用しにくい。
「発掘する鉱石のノルマを徐々に増やされたのです。現在は、支持していたときの6倍になっています。疲労は忠誠心を削るようですよ」
わお。
わかりやすい。
『オレ』が引き籠る前に勤めていたブラックな企業でも行われていたのだ。
最初は、手が届くくらいの上乗せ。
休憩を取らず、飯も10分くらいで掻き込んで走り回って達成すると、それが平常運転になる。
『いやいや、無理ですよ?』、冗談ですよね? と聞くと。
『やれてただろうがっ! 手を抜くなっ!』
まるで、こっちがサボっているような言い方で逆切れされる。
泣く泣く、やっているとさらに上乗せ。
『普段やっていることより、少し増えるだけ。できるだろ!』とキレられる。
それが何度か続いて、しかもふと気が付くと給与計算がおかしい。
確認を取ったら、『勝手な残業は許さない』とサービス残業扱いになっていて、賞与もなし。
完全にやる気がなくなって、出社を拒否して引き籠った。
うん。疲労は心を削る。
実感を持って断言できる。
鉱夫さんたちは、こちら側だ。
「ダイハッケンダナ」
シンハッケンかもしれない。
この世界では、ね。
はぁ。
小さく息を吐いて、前世の記憶を振り払った。
『オレ』が引きずるのはしょうがないが、『僕』にそんな実感を持たせたくはない。
クアルトは知らなくていいことだ。
たちだでさえ、『僕』の胸がきゅっと痛んでいた。
七歳の子供でも、これは間違っているとわかる。
「全部繋ぐ。最短ルートを考えてくれ」
決定。
鉱夫全員を避難させるための道を通すことにする。
「それが済んだら、食料庫にもトンネルが必要だな」
鉱夫たちを飢えさせるわけにはいかないからな。
「あとは、それら全部を用が済み次第埋める用意をしておけばいいな」
うん。完璧だ。
「最短というのは距離的に、ですか?」
距離?
ああ。
「いや、労力面。または時間的に、だな」
直線距離でトンネルを掘りまくるのではなく、すでにある坑道同士を効率よく繋いでいく形をとりたい。
「それですと、・・・とりあえず閉鎖された坑道を2つほど経由することになります」
「問題ない」
大きく頷いて見せる。
「ゴーレムたちへの命令権を一時的に委譲しよう。頼めるか?」
ずっと指揮をとり続けることはできない。
『オレ』は問題ないが、『僕』にはキツイだろう。
七歳の子供なんだからな。
「命令権を・・・て、大丈夫なのですか?」
何か心配された。
初めにあった時から、ずっとどこか達観しているしというか、表情が乏しかったが、ここにきて感情が見えた。
少しは心を許してくれたんだろうか?
「大丈夫じゃないことをするつもりなのかな?」
クアルトは首を傾げて笑った。
七歳の子供が言うには、あまりにも穏やかで、あまりにも恐ろしい言葉だった。
「い、いえっ! そんなつもりはありませんっ!」
「なら、大丈夫でしょ?」
にっこり、微笑んであげた。
「・・・はい」
引き攣っていたけど、頷いてくれたから大丈夫だ。
きっと。
たぶん。




