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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第33話 『人質の所在』

1/2

 


「えっと、あとは・・・」

 なにか確認しないといけないことがあったはずだ。


 なんだっけ?


 首を傾げそうになった。

 セティの来訪が早すぎたのだ。

 今夜一晩考えを整理して、明日の朝にでもって漠然と考えていたからな。


「あっ。思い出した」

 そうだ、そうだ。

 これだけは聞いておかないといけない。

 今後、どう動くにしても、そこは重要なポイントになる。


「他の人質たちの居場所を知っているか?」

 なにかをするつもりなら、まずはそれを把握しておく必要があるのだ。

「もちろんです」

「遠いのか?」

「いえ。近いですよ。同じ鉱山内ではありますから」

 同じ?


「ああ。もしかして鉱石掘りか?」

 いや、もしかしなくても当然にそうだろう。


『銅』を掘ることに執着しているのだ。

 労働力を無為に過ごさせるわけがない。



「そうです。どこかの坑道を掘らされているはずです。かなりの数の奴隷と一緒に」



 奴隷。

 ここで言う奴隷とは、経済的に困窮した者たちが自分の自由を金に変えたことでなるもののことだ。

 職業選択の自由と居住の自由を売り飛ばす代わりに、命を守る選択をした者たちともいう。

 まぁ、借金をして返せないと、強制的にそうなるんだけどな。

 この世界には自己破産の制度なんてないから。

 いや。ある意味自己破産した者のことを奴隷と呼ぶってだけとも言えるのか?

 強制力はエグイけど、ようはそういうことだよな?


「どの坑道かとかはわからないよな?」

「わからないわね」

 だろうな。

 知らせる義務なんてないからな。


「・・・ん?」

 奴隷と一緒に?


「もしかして、坑道掘りは奴隷しかしてなかったりするか?」

 奴隷と肩を並べての採掘作業。

 一般的にはあまり喜ばれないと思うのだが?

「一番新しい坑道は本職の鉱夫が掘っているはずよ。それ以外は、奴隷と人質が掘らされているわ」

「そういうことか」


「奴隷たちって、どんな風に使われているかわかるか?」

「・・・ここに閉じ込められている私に聞く意味ある?」

「あー、そうだな。ないよな」

 ごもっとも。

 ぐうの音も出ん。


「採掘について知りたいなら『』に聞いて。私の知識は彼に聞いたことばかりだから」

「わかった。明日また付き合ってもらっていいか?」

「伝えておくわ。えっと・・・他に何かある?」

「とりあえず、そんなところかな? なにか動きがあったら報せるよ」

「そうしてもらいたいわね」

 こうして、セティとの会談一回目が終了した。

 おそらく、この会談は今後も定期的に行われることになるだろう。

 そんな予感がした。




「何か聞きたいことがあるとか?」

 朝。隠れ里の入口へ向かうと、『』がすでに待ち構えてくれていた。

 無駄がなくてありがたい。


「そうなんだ。とりあえず聞きたいのは、この鉱山で『銀』は採れないかってことだ」

 金で『節制』が付いたなら、もしかして貴金属にはすべて同じ力があるのでは?

 何となく、そんな気がしたのだ。


「『銀』ですか」

「そう。どうかな?」

「多くはありませんが、採れるはずです。採掘中に何度か見た覚えがありますから」


 おお。あるのか!


「ここの坑道から掘りに行けるか?」

「掘るための人手があれば」

「いけるのか。どこから掘ればいい?!」

 人手なら何とでもなる。



「ここから、この方角に掘っていくと、私が以前掘っていた坑道に出ます。そこになら少しはあるかもしれません」

 無数にある横穴。そのうちのひとつ。その奥で右斜め、下がりながら進む角度を示された。


「いいね」

 坑道の壁に手を当てて、確認した。

 『材質鑑定』でみると、ここの壁は広範囲に渡って『ゴーレム制作』の素材がある。


 『石』と『岩』だ。

 鉱石ではなく、石材でもない。


 『コレ』と言える代表となる成分がなく、周囲と強い結びつきのない『石』。

 同じように代表となる鉱物を持たず、周囲とがっちり固まりを作っている『岩』。

 この二つで構成されているのが分かったのだ。


 なら、どうするか?

 言わずともわかるだろう。

 『ゴーレム』と聞いて真っ先に思い出す、ポピュラーゴーレム——コモンゴーレムと言うべきか? ——の『ストーンゴーレム』と『ロックゴーレム』を作るのみである。



「でけた」

 まずは一体。


『ストーンゴーレム』を制作してみた。

 穴を掘らせたいので、形状は人ではない。


『蟹』だ。

 大きなハサミを使って、どんどん掘っていただきたい。


 どこにでもある『石』が素材であるせいか、維持魔力も多くはないようだ。

 あとは、意外に動きが軽くて動きがいい。

 今は、魔力も満タン。


「どんどん作るぞ!」


 『ストーンゴーレム(蟹)』を増産した。

 それだけで。坑道が掘れていく。


 当然だ。

 『ストーンゴーレム』を作った分の石がごっそりなくなって穴が開くんだから。

 ゴーレムにならずに転がった石は『ジンクゴーレム』と『ライムストーンゴーレム』が片付けてくれる。


 ときおり、大きな塊を見つけては『ロックゴーレム(蟹)』も作った。

 何となく、『石』よりは『岩』の方が維持魔力は大きい気がする。

 重く密度が高いからだろう。


 動きが重々しい。

 『石』が装甲車なら、『岩』は重戦車だ。


 細かな数字は出さない。

 出せなくはないが面倒なので、そこはどんぶり勘定だ。

 いちいち作業を止めて魔力の回復速度を測るのは、時間の無駄でしかないからな。




「よし。お前たち『銀』を探せ―!」

 『ストーンゴーレム(蟹)』と『ロックゴーレム(蟹)』が、それぞれ10体になったところで号令をかけた。


 一斉に散っていく40体のゴーレムたち。

 四十の影が一斉に壁へ取りつき、坑道に金属音と石の砕ける音が響き渡った。


 そう。騎士姿のゴーレムも槍を片手に採掘だ。

 なにしろ、猶予がない。

 魔法力が七割にまで減っていて、さらに減っていっている。


 マイナスになっているのだ。

 早めに『銀』——『シルバーゴーレム』——を作って『節制』スキルの有無を確認しなくてはならない。

 もしも、ないようならプラスに転じるまで間引きしなくてはならなくなる。


 すでに、『警鐘』とでもいうように頭がガンガン痛み始めていた。

 視界の明度が落ちていく。


「見つかったか?!」

 30分ほど待機ののち、一体の『ストーンゴーレム』が戻ってきた。

 すかさず、案内を頼んで追いかけた。


 ついた先では別の蟹と騎士が二体、壁を割っていた。

 縦に入った溝からは、暗鉛灰色で金属的な光沢が見えている。

 たぶん、あれが銀を含む鉱石なのだろう。


「どれどれ」

 手をかざして『材質鑑定』。


 おお。

 間違いない。

 銀がある!


 『シルバー(Ag)ゴーレム』。


「できた!」

 周辺から絞り出すように引き出して、一つの塊に。

 その固まりを任意の形に変えて、ゴーレムにする。


 形は、『ヤドカリ』だ。

 巻貝を背にした可愛らしい。その子を手の平にのせた。


 可愛い!

 嬉しい!

 そして・・・。


 『節制』もある!

「よしっ!」

 拳を握り締めてしまったね。


 目指せ10体!

 ガンガン作った。

 まぁ、全部が手の平に乗るサイズなので『ガンガン』はちょっと違うけど。


「いける。イケるぞ!」

 嬉しくて声が弾んだ。

 『シルバーゴーレム』が6体を越えたところで魔法力が回復を始めたのだ。

 10体揃えれば、もっと『ゴーレム』を増やせる。


 それだけじゃない。

 途中、『金鉱石』も見つかったので、すでにある『ゴールドゴーレム』に吸収させてやった。

 吹けば飛ぶようだった『銭亀』が、ちょっぴり大きくなる。

 それで、ふと気が付いた。


 もしかして?


 金の量が多いと節制できる量が変わる気がする。

 大きくなると維持魔力が増えるから、たぶん大きくすればいいというものではなくどこかに境界線があるはずだろうとは思う。そこについては、いつかきっちり検証が必要にるだろう。


 あとは・・・。

「くくくっ」

 笑いが止まらない。


 『ゴールドゴーレム』のレベルが上がったのだ。

 なんと、彼等はなにもしなくても経験値が増えるらしいのだ。


 あー、いや。

 これだと語弊を招くな。


 『節制』スキルは維持魔力を下げている限りは常時稼働状態。

 結果、時間経過がそのまま経験値になるようなのだ。


 10分で1程度。

 気が遠くなるが、ポジティブに考えれば放っておいても勝手にレベルが上がるわけでありがたい。

 レベル5くらいまでなら、あっという間だろうしな。


 当然ながら、『スキル』レベルも上がっている。

 消費魔力軽減の効果が上がってくれているものと予想。


 ありがたい。

 ありがたすぎる。

 時間経過だから、10体すべてが立て続けに『レベルアップ』したのだ。


 まだまだ、ゴーレムは増やしていけそうだ。


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