第31話 『増産』
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そんなわけで、新ゴーレム『ジンクゴーレム』制作が始まった。
坑道内で『亜鉛』の濃度の高い場所を見つけては、ゴーレムに変えていくのだ。
一体、また一体とクアルトの後ろにフルボディアーマーが付き従っていく。
あ。そうそう。案内人イーアンは帰らせた。
もう案内の必要はないからね。
坑道は迷路ではないので、横穴は無数にあるが迷うような作りにはなっていない。
当然だ。
鉱夫が作業途中で迷うようでは、作業効率が悪すぎる。
ダンジョンではないから魔物も出ないし、洞窟ではないからモンスターも動物もいない。
放棄されてずいぶん経つから落盤の危険もない。
クアルトが一人でいても問題はないのだ。
『僕』はちょっと不安そうだったが、『ゴーレム作成』のワクワクが勝ったらしい。
『ジンクゴーレム』を作っていくついでで、『ゴールドゴーレム』の制作も続けた。
かなりの広範囲から集めるので時間はかかる。
その割に出てくる金は少ない。
割に合わない気持ちになるが、そこは『ゴールド』なので我慢した。
「間違いないな」
『ゴールドゴーレム』の三体目を制作したところで、確信した。
実を言うと『ジンクゴーレム』は金属である上に身長が2メートル。
維持に必要な魔力が多かったのだ。
すでに6体いるのだが、魔法力の回復速度がどんどん低下して6体目でついにマイナス・・・要はなにもしないでいても魔力が減っていくようになっていた。
これか!
合点がいったね。
種類ごとに10体のゴーレムを作れるとなったら、すごいことになるのでは?!
そう考えた時期があったのだ。
だが、そうではなかった。
ちゃんと制限がかかっていたのだ。
魔法力の枯渇という制限が!
どんどん作れるわけではない。
当たり前だ。
世界の調整力を舐めすぎだったと、自分を顧みて反省した。
それが、時間経過での回復が再び起き始めている。
『ゴールドゴーレム』が三体になってから、だ。
「間違いなく『消費魔力軽減効果』が付いているね」
「ふふふふふ」
こらえきれずに笑いが漏れた。
魔法力が自然に減る事態になって、ちょっと焦っていたのだ。
まだ余裕があるとわかっていても、なんとなく視界が暗い気がした。
聞こえていない耳鳴りが気になる。
そんな感覚。
それが、解決の糸口が見えたことになる。
『ゴールドゴーレム』のスキル欄にあった『節制』に一縷の望みをかけて『ゴールドゴーレム』三体目を制作してみたが、正解だったようだ。
となると、がぜん金が欲しくなる。
あと七体作れたら、かなり楽になるはずだからだ。
少なくとも、あと一体作れれば『ジンクゴーレム』を10体作り終えても魔法力が自然回復する。
これはかなり重要だ。
「とりあえず、金鉱石を見つけて全部をゴーレムにしてしまおう」
それが終わってから『ジンクゴーレム』制作の追加を行う。
じゃないと魔力枯渇で倒れてしまう。
倒れるだけならいいが、それで意識を失ったら最悪死ぬ。
ゴーレムへの魔力供給ラインが切れればいいが、切れないなら魔力は回復しないままだからだ。
使命に燃えて坑道内を歩き回った。
坑道一本。
横穴も含めてすべてを網羅して、『ゴールドゴーレム』Lv1を10体揃えることに成功した。
「つ、疲れた・・・」
目の奥がジンジンする。
魔力を絞り出しすぎて、頭の芯が熱い。
それでも、金を見つけた興奮が勝ってしまう
おかげで、魔法力の回復速度がすごい。
今だと、1分で100くらい回復する。
計算上、使い切ったとしても一時間後にはフルチャージできてしまうってことになる。
これなら、もう怖くない。
『ジンクゴーレム』制作の続きを!
——始めなかった。
その前にやることがある。
「騎士をモチーフにしたのに、無手はないよな」
『ジンクゴーレム』を振り返って呟いた。
武器の話である。
全身鎧を着ているのに手ぶらはダメだろう。
ということで。
「こんなんできましたー!」
チャチャラチャッチャッチャー!
手の中のものを高く掲げた。
『ジンクスピア』。
言わずと知れる『亜鉛』製の槍だ。
『ゴーレム』制作の要領で形にしつつ、最後の文字の書き込み段階でキャンセル。
ゴーレム化はせずに終わらせることで製作した。
これを二本。
背中に交差させて背負わせる。
そして、腰にはもちろん『ジンクサーベル』を佩かせた。
これだけでもいいが、せっかくなので交差した槍の上には長方形の大盾『ジンクシールド』を重ねる。
完全武装した重装歩兵の完成である。
そして・・・。
「いいね。いい感じだねっ!」
10体揃った『ジンクゴーレムの一団を見て拍手した。
騎士の小隊ができたのだ。
完全武装の騎士。
ランタンの灯りで金属表面が鈍く輝く。
重厚で頼もしい。
魔法力の回復速度は落ちたが、まだまだ回復している。
つまり・・・。
「まだ作れるってことだよねっ!」
まだ作れる。
そうはいっても一素材で10体の壁は変わっていない。
なら、どうするか?
「別の素材で作るだけのことっ!」
新たなゴーレム制作に取り掛かるのだ!
素材の目星はついていた。
『石灰石』。
セメントの材料であり鍾乳洞を形作るのに不可欠なもの。
これも、この坑道にはたくさんある。
【『ライムストーンゴーレム』を制作しました。】
まさかの『ストーンゴーレム』という基本形をすっ飛ばしての派生種が誕生した。
金属とは違う、ざらりとした白灰色の質感が光を鈍く返す。
まぁ当然だけど。
種類関係なく「とりあえず石で」作れば『ストーン』なのだろうけど、今回は『石灰石』というか『石灰岩』限定で作ったからな。
・・・実を言うと、もう一つ作れるゴーレムがあるのではと期待したが、それはできなかった。
なにかといえば『大理石』だ。
広義では同じものだからなんとかイケやしないかと思ったのだが、ダメだった。
生成状態が違うのかもしれない。
うろ覚えだけど、確か結晶になっているのが大理石だった気がする。
自然石の彫刻コレクターだったので、ちょこっと調べたことがあるのだ。
・・・大理石製の『亀彫刻』。
高額すぎて手が出なかったけどね。
完成したのは『ジンクゴーレム』に合わせて全身鎧っぽい見た目のものだ。
武器もまったく同じものを用意。
石は金属よりも低燃費なのか10体作っても問題ない。
現状、余裕がある。
毎時+30くらいだ。
つまり、2分で1回復する。
素晴らしい。
・・・そろそろ帰ろう。




