第27話 『名もなき村の村長——幕間狂言(祈り)——』
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メリマルゴール男爵家の一行が去っていく。
だが、見送っている暇はない。
「いつものように鉱石を積み上げよ!」
掘り出した後、各家に貯蔵していた鉱石を広場に積み上げさせる。
土を削り取っただけで何もしていない『鉱石』だ。
選鉱もなにもされていない。
できないからだ。
それをするだけの設備がない。
作ることはできるだろうが、それを作ってしまえば言い訳できなくなる。
だから作らない。
わしらは、ひたすら石を掘るだけだ。
「おいっ! あの馬車の跡はなんだ!?」
馬に乗った騎士が、踏み潰そうとしているかのごとき勢いで迫ってきた。
村へ到着したばかりなのだが、さっそく気が付いたようだ。
「メリマルゴール男爵家の嫡男だという者が来ていたのです」
「なっ?!」
慌てそうになる騎士を宥めて、打ち合わせていた通りの説明をした。
充分にあり得る話なので、説得は可能だろう。
その間にも、荷運びの者たちが鉱石を馬車に運び込んでいる。
少し離れた場所では、今回連れてこられた人質が、こちらの家族と話していた。
幼馴染の孫だ。
ついこの間まで、子供だったように思うが・・・嫁を貰う年になったんだな。
しかも・・・。
一緒にいる見知らぬ女性の下腹部が、少し膨らんでいる。
妊娠しているらしい。
ひ孫が産まれようとしているのか。
ギリっ!
知らず知らずのうちに奥歯を噛み締めていた。
なんという悪辣さか!
親切めかして嫁を世話し、妊娠するや挨拶と称して顔見せに来させる。
『ひ孫が産まれようとしているぞ、無事に生まれるかはお前たち次第だ。』
それは、見え透いた恫喝。
幸せそうな二人の姿が、かえって胸を締めつけた。
いずれはそのひ孫を人質にして、息子をこの村に移すのだろう。
村にいる年寄りの代用に。
これが、延々繰り返される。
なんという理不尽か。
「邪魔するぞ」
騎士の説得が済んだわしは、幼馴染とその孫の会話に割って入った。
デリカシーのない行動であることは百も承知だ。
「村長?」
幼馴染が目を丸くしている。
通常なら、こんなことをしはせぬからな。
だが、今は仕方がない。
「『セティ』に伝言を頼む」
幼馴染の孫に語り掛けた。
「は、はい」
目を合わせてたわしに気圧されたようになりながらも、しっかりと頷いてくれた。
わずかに揺れた視線が、横に立つ妻を、腹を確認していた。
生まれてくる子供のために、強くなろうとしているのかもしれない。
「『四人目に期待している』と、そう伝えてくれ」
「? それ、だけ? ですか?」
「ああ、それだけじゃ」
頷いて踵を返す。
これ以上、邪魔はできん。
正直、あの伝言で意味が通じるかは疑問だ。
訳が分からんかもしれん。
それならそれでいい。
もとより、期待する立場ではないのだ。
これは、希望。
わずかに灯る、闇夜の星。
それでも、常闇よりはいい。
そう信じよう。




