第24話 『閉じられた村』
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「とはいえ・・・どうする?」
顎に手を当てて、兄上が副官を仰ぎ見た。
「存在していないはずの村に行くわけですからね。警戒されるでしょうな」
「間違いなくそうだろうな」
深く頷いて、・・・なぜかこっちを見る。
「どうしたらいいと思う?」
「へ?」
なぜクアルトに聞く?!
「プリム様?」
ほら、副官も不審そうにしているぞっ!
「クアルトは昔から聡い。こういう前例がない事態では意見を聞くことにしているんだ」
「ほう。さようですか」
説明を聞いた副官が興味ありげにこっちを見る。
なんでそうなる!?
確かに、何度か意見した記憶はあるけども!
「・・・・・・」
「・・・・・・」
くっ。
なぜか二人して期待のこもった目を向けてくる。
えーい、しかたないっ!
「意見なんて、普通に当たり前の顔で訪ねるくらいしかないですよ!」
「当たり前の顔で?」
「兄上は『メリマルゴール男爵家長男』。父上のいないところでは名代としてふるまう資格があります。領内の村に領主の代理が訪ねるだけのことですよ。領内の見回りついでに」
普通に起こりうることだ。
「存在を知らない村なんだけど?」
子供っぽい仕草で首を傾げる兄上。
絶対にわざとだな。
「それは訪ねた時の反応次第ですね。敵対しようとするなら、少し高圧的な態度にすべきかもしれません。友好的な様子であれば、とりあえず『知っていたよ』という態度でよいかと」
「知っていたことにするのかい? 苦しくないか?」
「ここは辺境なのでいちいち挨拶に来るのが面倒だったということにします。状況から考えて誰の支援もなく存在している村だと思いますし、きっと貧しいでしょうから免税の対象でもあります。放置されていたとしても不思議はありません」
村には当然に領主への納税義務がある。
ただし、あまりに貧しいような村だと納税を免除することがあるのだ。
例として挙げれば、『開拓村』だ。
せっかく、小さくとも新たな村ができたのに、納税を強要して潰れては元も子もない。
援助まではしないが徴税もしないことで、発展を願うのだ。
この『村』はこれに該当するだろう。
「今回はペクン町への遠征ついでに様子を見に寄った、そういうことでよいかと」
「なるほどな。小さな村で、しかも遠いことを理由にするわけか」
ふむ、ふむと兄上が頷く。
「今回、用事で近くまで来たからついでに寄るということですな」
悪くない、と副官も頷いた。
話がまとまったようだ。
違う。
まとまってしまったようだ。
『オレ』は頭が痛いよ。
『僕』は役に立てたと嬉しそうだけどな。
◇
村まで二日かかった。
この間に『鶴』を飛ばして様子は見ている。
人口は200人とちょっと。
村としては少し大きめだ。
ただ、人数の割に村の発展度は低い。
畑はともかく、家は掘立小屋同然。
道はそもそもなく、周囲には柵もない。
この辺りに人を襲うような生き物や魔物はいないからでもあるだろうが粗末に過ぎる。
やはり、どこからも支援を受けずに自分たちだけで生き延びている感じなのだと思われた。
「柵が作られていないのは警戒心がないからなのか、その余裕すらないのか」
そこが問題だな。
警戒心の有無はそのまま攻撃性の有無に繋がる。
逆に警戒心があって、それでも柵を作るだけの余裕すらないのだとすると、困窮していて追い詰められている可能性がある。
その場合、ちょっとした刺激で暴走されかねない。
注意が必要だな。
「心配いらないよ。勝てるとは言わないが、逃げる程度のことはどうとでもできるからね」
村の中で村民総出の攻囲を受けたとしても、ということだ。
本職の騎士を従えているからこその自信、それが兄にはあるのだろう。
ま、そうなんだろうけどね。
一応、クアルトも騎士たちとの訓練には何度か参加している。
戦えと言われたら困るが、自力で逃げ出せと言われたなら何とかできるとは思えた。
兄上ならなおのこと余裕だろう。
「村人程度なら——」
「やめなさい! 血は洗ってもなかなか取れないんだからっ!」
なんか、アーネストとアンナまで不穏なことを言っている。
聞かなかったことにしよう。
「さて、行くか」
村の手前で様子を見ていたが、そろそろいいだろうと兄上が出発を決めた。
村の周囲に散って地形の確認などをしていた斥候も戻ってきて、情報の共有も済んでいる。
あとは住民の反応だけが不確定な情報で、これは行ってみないと知りようがない。
「はっ」
副官が頷き、騎士たちが整然と隊列を整えていく。
「僕たちも用意しようか」
「はい」
「わかりました」
『オレ』たちも用意をした。
馬車に乗るだけだけどね。
・・・アーネストとアンナが軽く屈伸運動をしているのとか、いつのまにか服が古くなっているっぽいモノに変わっているのが気にはなる。
気にはなるが・・・『オレ』は見ていない!




