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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第22話 『地図2』

2/2

 


 馬車の旅一日目は、予想外の『追っかけ』に出くわしたり、『ペーパーゴーレム』の使い道を新たに見つけたり、スキルの確認をしたりとなかなかに有意義なものとなった。

 とはいえ、正直に言って馬車に揺られている状況というのは退屈極まる。


『僕』は完全に寝てしまっているくらいだ。

 昼食前までは、馬車の窓にしがみついて外の景色を眺めていたんだがな。

 昼を食べてお腹が膨れたら、あっという間に寝てしまっていた。


 『追っかけ』連中が無駄に世話を焼いたせいでもあるだろうけど。

 ちょっと食べ過ぎたようなのだ。

 屋敷から離れたせいで『追っかけ』共もクアルトも、気が抜けているのかもしれない。


 本当なら『オレ』も寝るべきなのかもしれないとは思う。

 頭の中には実質50歳手前の『オレ』がいるとはいえ、クアルトの身体は紛れもなく7歳なのだ。

 木製でクッション性皆無。

 そんな乗り物に一日中揺られるというのは、負担がでかすぎる。

 眠れやしないがね。



「あれ?」

 妙なことに気が付いて、声が漏れた。


「どうかしましたか?」

 アーネストが『オレ』の手元を覗き込んでくる。

 彼から借りた地図を眺めているところだったのだ。


「ここ」

 気になった部分を指さした。

 今まさに移動している地域の地図なのだが、なぜか『村』の表記があったのだ。


「こんなところに村があるなんて聞いたことないよ?」

「そんなはずは・・・この地図はパーヴェル子爵家の書斎にもある正確な地図なのですよ?」


 子爵家の書斎にある。

 つまりは正規の調査をされ、正式に書物として認められたものということ。

 それなのに間違いがある?


 ありえない。


 いや、そうだよ。

 荷物を引き寄せて、メリマルゴール男爵家の書斎から持ち出した地図を開いてみた。


 条件は同じはず。

 もとより、こちらの領地のことなのだから、よその貴族が作らせたものより劣っていることはあるまい。


 だが・・・。


「こっちには載っていないぞ?」

 メリマルゴール男爵家の地図には記載がない。

 ただの平野ばかりの地域となっている。


「どういうことでしょう?」

 気になったのか、アンナも身を乗り出してきた。


 ・・・暇で舟を漕ぎかけていたからかもしれないけれど。


「どちらかが間違っている。それは確実なわけですが・・・」

 アーネストの言葉にうなずく。


「問題は間違っているのがどっちなのか、だね」

 正直、前者であるべきだ。


 自分の領内の地図が間違っている。

 そんなことになってはメリマルゴール男爵家の面目は丸つぶれである。


 なのに・・・。


「心情としては、『村』があったほうが面白いと思ってしまうから、困ったものだ」

 苦笑してしまった。

 本音を言えば、あって欲しいのだ。


「幸いなことに、結論はすぐに出せますね」

「ああ」

 その通りだ。


「確かめればいいだけだからね」

 この『村』に行ってみればいい。


 ◇


「兄上」

 二時間ごとの休憩時、兄を訪ねた。


「どうした?」

 副官と話していた兄上が、少し驚いた様子で迎えてくれる。

 クアルトの方から訪ねるというのはめったにないことだからな。


「実は、ご相談がありまして」

 2割ほど演技を入れ、真剣に告げた。


「私は、席を外しましょう」

 気を利かせたつもりなのか、副官が場を離れようとした。


「待て」

 兄がそれを止めた。

 その前にクアルトを一瞥して。


「ですが・・・」

 クアルトを見て、なにやら口ごもる副官。


 なぜに?


「気にするな。プライベートの話ではない」


 ああ。兄弟での内輪の話だと思ったのか。


「え? そうなの・・・ですか?」

 半信半疑、そんな顔でクアルトに視線を向けてくる。


「もし、プライベートな話であれば、お前が場を譲ろうとしたときに止めただろう。そこまで気にすることではないから大丈夫だと、笑ってな。だが止めなかった。なぜだと思う?」


「・・・わかりません」

 数秒考えを巡らせたようだが、早々に諦めて首を振った。


 自分の能力に一定の見切りをつけている人物なんだな。

 たぶんだけど。


「お前がここにいていいかの判断を、俺に任せたのさ。つまり、まじめな話をしに来ている。そうだな?」

 証明完了。

 そんな顔で問うてくる。


 その通りなので、思わず笑みが浮かんだ。

 よく見ている。


「実は、そうなんです。まずは、これを見てください」

 取り出したのは『メリマルゴール男爵家の地図』である。


「地図?」

「はい。僕たちは今、どこにいるでしょう?」

 質問した。


 右の人差し指を立てて。

 なんか、すごく楽しい。


「それは・・・この辺りだな」

 すっと、指を滑らせて兄上が応えた。

 横で、ゴツイおじさんも頷いている。


『僕』の中のおっさんが予想した位置と変わりがない。


 なんだ、わかるのか。

 ついつい唇が尖りそうになるけど我慢した。


 久しぶりに重要な役をもらえているんだから、ちゃんとしなきゃ!


『オレ』さんも言ってた。

 『僕』が主役なんだって。


「では、こっちを見てください」

 次に出すのは『アーネ』——アーネストから借りた地図。


「同じ地図だな」

 兄上が首を傾げた。


「そうですか?」

「え?」

「僕たちはどこにいます?」

 同じ質問をした。


「だから・・・」

 さっきと同じ動きで、同じ位置を指さす。



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