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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第一部、使用人が『王国の影』でした

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第21話 『偵察ドローン』

1/2

 


 馬車が再び動き出した。

 町から出た時と同じ隊列を組んで移動している。

 違う点は、どこかのキャンパーが乗る馬車が並走していること。

 もはや、隠れる意志すら見せずについてくるつもりのようだ。


 開き直りが早すぎないか?

 困ったものだ。


 ついてくるものはしょうがないので放置するとして。

 クアルトは馬車移動の時間を有意義に使おうとしていた。

 最初の二時間は生まれて初めてメルマルの町を出たということもあって、馬車からの眺めに夢中になっていた。


 しかし、ここからはただひたすらに草原が続く。

 退屈するに決まっているので、別のことをしようというわけだ。


 実を言うと、『ゴーレムマスター』という『適性』が確定した時点で、いくつかの『スキル』を得ていた。

 メインの『ゴーレム』関連にばかり目を向けてきたが、これからはそこにも着目していかなければならない。


「『ステータスオープン』!」

 眼前にウィンドウを展開させた。



 いつもの『ステータス』が表示されている。

 だが、今回はその下だ。

 画面をスクロールさせた。



 ゴーレム製造LV3 ゴーレム操作LV3 材質鑑定LV1 成形LV1 遠隔操作LV1



 一行目に並んでいるのは、明らかに『ゴーレム』関連だ。

 『製造』して『操作』する。

 『製造』するための『材料』の『質』を『鑑定』して、形を整えるために『成形』する。

 そして・・・。


 『遠隔』で『操作』する。

 字面からして、離れた場所から『操作』するってことだろう。


「というわけで、じゃーん!」

「「おー」」

 パチパチパチっ。


 何となく、効果音付きで取り出してみたのは最近では見慣れた『鶴』である。

 『ペーパーゴーレム』だ。

 これを飛ばしてみる。

 真っ直ぐ前方へ。


「って。すぐに見えなくなるよね」

 なにぶん小さいので、ほんの数十メートル先へ行かせると、もう見えない。

 これでは操作なんて無理。


「なのでっ」

 むんっと気合を入れた。


「スキル『遠隔操作』!」

 それでいいのかはわからないが、とりあえず気合を入れて技名を叫んでみた。

 アンナとアーネストから生暖かい視線を向けられるが、耐えた。


 そして。


「・・・ッ!」

 拳を握り込んだ。

 小さくガッツポーズだ。


 見えたのだ。


 先頭が。

 70メートルくらい先を進む騎兵、その後姿が見えている。


 『少し上昇、そして振り返る』


 念じるとその通りに動いたようだ。

 プリムが乗っているはずの馬車が見え、そのさらに奥に自分の乗る馬車を確認できた。


「どこまで見えるのかな?」

 ふと呟く。

 遠隔でゴーレムを操るため、ゴーレムの視界を得られることは分かった。

 だけど、この『遠隔』がどこまで有効なのかが分からないと使い勝手が分からない。


「距離ですか?」

「うん」

 アーネストが訊いてくるのに頷いた。


「騎兵たちは、進んできた道の長さなら大体わかるはずです。そういう訓練をしていますから」

 それは知っている。

 行軍距離を掴めないと、遠征の時にいろいろと不便なのだ。

 急な撤退時に、何キロ戻れば味方がいるか、拠点に戻れるかがわからないのでは命にかかわる。


「それ。今、意味ありますか?」

 言葉は丁寧だが、アンナは呆れ顔だ。

 進んできた距離を知りたいわけじゃないからな。


「いやっ待てっ!」

 気が付いた。

 振り返らせていた『鶴』をそのまま逆進させる。

 一瞬にしてすれ違い、来た道を戻っていく。


 『村へ戻って、待機』


 指示も出しておく。

 これで、途中で接続が切れた場合でも、帰りに回収できる。


「よし」

 このまま戻らせよう。

 それで。


「騎兵の誰か呼んで、村からの距離を教えてもらって!」

 村を定点観測ポイントとすればいい。


 そうして、『鶴』を村において『遠隔操作』し続ける。

 限界があるのなら、いずれ接続が切れるだろう。

 その切れたところが限界距離となる。


 あとは・・・。


「ついでだから、前と左右にも送ってみようかな」

 『ペーパーゴーレム』は10体とも『鶴』で持っている。

 そのうちの四羽を周辺哨戒に出してみよう。


「「え?」」

「え?」

 二人から驚きの声が出たので、反射的にこっちからも声を上げてしまった。

 なにかおかしなことを言っただろうか?


「べ、別々の方向、ですよね?」

「同時には、無理なのではないですか?」


「なんで?」

「「え?」」

「え?」


 何かおかしいだろうか?


「同時に四方向を見るのですよね?」

「そうだね」

「普通、人は正面しか見ません。四方向同時に見るなんてできるのですか?」

「四方向って言ったって・・・」

 実際に顔を四方向に向けようって話じゃない。

 単に四方向に向けた視点を映し出す『モニター』を同時に見ればいいだけ・・・・。


「ああ」


 わかった。

 そりゃそうだ。

 この世界の人たちには、想像もできないことなのだ。


 『オレ』が複数モニターでの状況確認やキャラ操作に違和感を覚えないのは、引き籠っていた頃に四台のパソコンと二台のスマホで同時にゲームをしていた経験があるからだ。

 複数アカウントで作成した複数キャラクターを駆使してのパーティー戦とか普通にこなしていた。

 なので、四画面プレイ程度なら苦でもないのである。

 特に今回は『移動しながら周囲を観察する』、だけだからね。


『マルチボクシング』・・・だったかな?

 そういうプレイ方法のことを、そう呼んでいたはずだ。


「えーと。・・・慣れればそんなに難しいことではないよ?」

「か、かなり、高度なスキルだと思いますが」

 スキルか・・・そうなのか?


 釈然とせずに首をかしげつつ、実際に『鶴二号』を前方に送り出した。

 後方へ進む『鶴』と前方へ向かう『鶴二号』。

 双方の映像が分割されたモニターで確認できた。


 ほら、できるじゃないか。


 確認できたので左右に『鶴三号』と『鶴四号』も送り出す。

 モニターの面積が二倍に拡張され、四分割された。


 いや、違う。

 正確には真ん中に自分視点もあるから5画面ある。




「んっ?」

 モニターが、いや、モニターの枠が明滅した。

 なにかあったのか?

 意識をそちらに向けるが、リアルタイム映像は問題がない。

 なんというか。

 生中継中に速報が入ってテロップが流れたような感じだ。


「って。マジでテロップかよ」

 思わず口に出た。

 明滅が止まった途端、右から左へと文字が流れたのだ。


『スキル【平行視野】を獲得しました』


 ああ。うん。

 スキルだったんだね。

 一瞬、「なんだ、それ?」と思ってしまったが、前後の状況と『スキル』名を見れば察しはつく。

 『オレ』のプレーヤースキルが、クアルトのキャラクタースキルに昇華したらしいと。

 手持ちの知識や、経験で培った技術を『スキル』に反映できるということだと理解できる。


 異世界転生時のチートスキルって、こういうことだったのかぁ。

 ちょっと納得する。


 『人間に想像できることは、必ず実現できる』

 そんな名言があるが、逆に言えば『想像できないことを実現させることは難しい』ということでもある。

 前世世界を知っていることで『できる』、『できていた』、『できるはず』と考えられるというのは、思いのほか重要な要素となりえるのかもしれない。


「てろっぷ?」

「どうしましたか?」

 二人に不審そうな視線を向けられてしまった。


「あー、いや。確かに『スキル』があったよ。使い方が分からなかったモノなんだけど、それが役に立っているようだ」

「そうでしたか」

「やはり」

 真実を説明するのはいろいろと問題がありそうなので、それっぽいことを言って納得してもらった。

 この現象は、今後も使えるに違いない。



 ともかく、四方向へ向けて飛ばし続けてみる。

 5画面で、それぞれを確認していった。

 これと言って代わり映えのしない風景ばかりが続いている。




「なんもないなぁ」

 ダレた。

 というか、『飽きた』。


『僕』は完全に飽きている。

『オレ』はまだ耐えられるが、退屈なのは否定できない。


「もういいや」

 見るのはやめだ。


 かわりに、『変化があったら報せろ』と指示を出す。

 具体的には、変化を感じたら視覚に【平行視野】の映像を割り込ませさせる。


 これだと、途中で接続が切れたら行ったきりになりかねないが、その場合は先行させて村へ向かわせたものの方も切れているはずなので対応可能だ。

 向こうは最初から『待機』を命じているから問題ない。

 これの接続が切れたらすぐ、二号から四号に引き返すよう指示すればいいのだ。


 『ドローン』を哨戒任務に出して、報告を待つってことだな。



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