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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第三部 貴族

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第113話 『タイマイ』

 


「これは……どうしようか?」

 岸へ上がり、見下ろすのは黒い塊だった。


 琥珀すくいの合間に浮いてきていた。

 ホバークラフトの上に放り投げていたものだ。


『褐炭』——石炭にまでは至っていない木の化石。


 固いが脆い。

 燃やせはするが火力は低い。

 いまいち使い道に困りそうな代物である。

 ――らしい。

 正直よく知らない。


「数があれば、なにか使い道も出るかもしれないけどな」

 経験値を上積みできるタイプで、なおかつ大量にあるなら二次ゴーレムに進化させられる可能性がある。


 二次になれば…なにになるだろ?

 石炭かな?

 石炭って燃やす以外の使い道あったっけ?


「あの……」

 考え込んでいると、袖が引かれた。

 ずっと無口だった少年がいる。


「なに―?」

『僕』が反応した。


 歳が近いので親近感があるようだ。

 そう言えば、年の近い友人がいないんだよな。

 まぁ、当然だけど。


「その黒い物なら、たくさんありますよ?」

 ああ、数があれば…って呟きが聞こえていたのか。


「琥珀と一緒に浮いてくることがありますけど、使いようがなくて向こうに捨てられています」

「ああ、そうなんだ」

 納得のいく説明だった。


「なら、そこへ案内して!」

 素材があるのなら、作ってみよう。


 で――



『リグナイトゴーレム』を作成しました。



 目の前にある塊を使って、一体作ってみる。

 知性が少し増えた。

 しかも、『圧縮』というスキルがある。

 どう見ても、経験値積み上げスキルだろう。


 形は――『黒子』。

 小さな……クアルトよりも小さな小人だ。


 黒い小人を伴って、捨てられているという場所へ案内してもらう。

 子供が三人並んでいるようで、妙にほのぼのだ。

 つい、手をつないでしまったね。


「かわいいです!」

 アンナには好評だ。




 案内されていった先は、めっちゃ黒かった。

 褐炭の欠片が所狭しと周辺に散らばっている。


「前は山になってたんですけど、いつの間にか崩れて、…こんな状態です」

 重さに耐えかねて、下が崩壊。

 崩れることで、上に積まれていたものもバラバラになって崩壊した。


 固いが脆い。

 特徴がモロに出ている。


「ようし、いくよー!」

 ハリキるのは『僕』だ。


 楽し気に『リグナイトゴーレム』を作り出しては圧縮していく。

 ベース一体を強化していく形になる。


 そして――

『コールゴーレム』を作成しました。


『二次』ができた。

 予想通りの石炭・・・・・・なんだけど。


「ちょっと待て」

 思いついてしまった。


 石炭の使い道。

 通常であれば、燃料にするくらいしかない。


 だが……『抽出』スキルを使うなら?

 不純物を完無視して『炭素』だけを取り出せるなら?


「できる。理論上できてしまう」

『リグナイトゴーレム』のスキルが『圧縮』であるのは、そういうことだったのではないかとすら思えてしまう。


 何を言いたいのか?

 炭素を極限まで圧縮させることで生み出されるもの。

 誰もが知るキングオブ宝石――ダイヤモンドである。


 石炭ゴーレムをさらに圧縮。

『三次』ゴーレムにまで押し上げる。


「で、できてしまった……」



『ダイヤモンドゴーレム』の作製に成功しました。



 真っ黒だったゴーレムが突如、透明になった。


「眩し!」

 午後の日差しが、収束されている。


 ダイヤと言いながら、大きさはちょっと反則だ。

 握りこぶし大。

 世界最大の原石ダイヤと余裕で肩を並べられる。

 何百カラットかっていうサイズ感だ。


「これは…ガラス? 氷?」

 レーデが首を傾げている。


 目をキランと光らせているのはアンナだ。

 正体に気づいたらしい。


「素晴らしいですが……」

 難しい顔をしているのはレイモンドだ。


「売るわけにはいきませんな、これは」

「ダメなの?」

「はい。ダイヤモンドは帝国が独占管理をしております。市場に出したりすれば即国際問題です」

「あー……そうなんだ」

 なんとなくそうかなとは思っていたが、やはりそうか。


「まぁ、売らないけどね」

 せっかくのダイヤだ。

 お金に換えるなんてできるわけがない。


 お金は他にも手に入れる方法がある。

 しかし、ダイヤを手に入れるのは大金払って、世間を敵に回して買い占めるか、こうして作るかだ。


 うん。

 売ることなど考えられない。


「琥珀がかすむなぁ……」

 なんというか、すっかりどうでもよくなってしまいそうだ。


「いやいや。琥珀も大事!」

 優劣などない。

 個性があるのみ!


「とりあえず、こいつは金庫行きだな」

 表は歩かせられない。

 隠さなくては!

 既存の金庫ではダメだ。


「馬車を一台、現金輸送車仕様にして作り直そう」

 それしかない。


『ダイヤモンドゴーレム』の形は『タイマイ』。

 小型の海亀だ。

 クチバシが鋭くて鷹のようだと言われる。


 ダイヤに地面を這わせたくはない。

 となると鳥系か水中生物。

 この二択だと……つい亀にしてしまう。


「可愛いから、後悔はない!」

 ともかく仲間が増えた。


 それも宝石。

『魔力収束率アップ』の効果持ちだった。


 クアルトの最大魔力が何パーセントか増加することになる。



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