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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第三部 貴族

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第111話 『湖』

 


 他の細々としたものを後に回して、湖へと向かう。

 案内は同じ少年だ。

 ロマリスにいる間は、雑用係感覚で行動を共にするようだ。

 ありがたいので、町の案内はお任せする。


「おお! 広いね!」

 わかってはいたが、湖畔に立つとかなり大きい。


 ロマリスの町が3つくらい入るんじゃないだろうか?

 そのくらい大きい。


「深さはどうかな?」

 それが問題だ。


「レーデ。お願い!」

 傍らに立つ騎士に声をかけた。

 事前に話はしてある。


「いきます」

 短く応じて、やおら振りかぶる。


 そして何かを投げた。

 キラキラと光るものが飛んで行く。


 チャポン!

 結構とんだなぁ、と思ったところで湖面に落ちる。


 そしたら、モニタールームの『オレ』が観察に入る。

 レーデが投げたのは、スタビライズド・フォレストガラスゴーレムのトカゲ(緑)だ。


 というか……イモリだ。

 ゴミ置き場で経験値の積み上げをしたとき緑と茶、一体ずつ作っておいた。


 湖底を調べるのなら、やはり両生類だろう。

 爬虫類ではなく。

 あと、ガラスなのは水中に金属を入れたくなかったからだ。


 木や石、土系もちょっと不安がある。

 安心して投入できるのはガラスだけだった。


 もしくは陶磁器だが……絵面的にダメだ。

 夜会服の女性による入水シーンとか、子供の教育によろしくない。


 そんなわけで、新たに生み出したイモリ(緑)の視点で湖底を見る。

「透明度は高いな」

 意外なほど、湖水は澄んでいた。


 両手足を広げ、ゆっくりと沈ませている。

 辺りを見るに、魚影は濃い。

 釣りをしても楽しいかもしれない。

 やることがなくなったら、一日くらい釣りをしてみてもいいだろう。

 かなりの大物もいて、湖底に着くまでに何度か食われかけた。


 泥の下に、黒い塊がある。

 石ではない。

 木でもない。

 その中間のような、奇妙な質感。

 何なのかは…わからない。


「で、これが底か」

 泥の上に立たせる。

 思いのほかやわらかくて、油断すると沈みそうだった。


「これなら、掘るのは簡単だな」

 どれくらい深く掘ることになるのかは、わからないけれど。


「コハクは見つかりそう?」

 おっと。

『僕』までがモニタールームに入ってきた。

 気になって我慢できなかったらしい。


『外』ではクアルトがボケーっとしているのではないか?

 アンナやレイモンドが心配してなきゃいいが……。

 レーデに肩を掴まれて揺さぶられるとかな。


「少し探させてみよう」

 モニターしながら動かすのではなく、イモリ(緑)に探させるのだ。


 ゴーレムたちは基本的にものを『見て』いるわけではない。

 魔力で『感じて』いる。

 独自で働かせた方が結果を出してくれるだろう。


「『オレ』がクアルトに戻る。見ててくれよ」

「わかった―!」

 片手をあげて、応えてくれた。


 そんなわけで、『オレ』はクアルトに……って!

「うわ!」

 思わず仰け反った。


 目の前にレイモンドのアップがある。

 顔を覗き込まれていたらしい。


「な、なにしているの!?」

「ほっほっほっ。ずいぶんと集中しておられたご様子、お戻りにならないのではないかと不安になりましたのでな」

「だったらもう少し不安そうにしてみてよ!」

 とても、そうは見えんわ!

 まったく、困ったものだ。


 冗談はさておき、今のうちに『対湖上・水中作業装備』のお披露目だ。

 湖で作業するとわかっていたのだ。

 イモリ以外にも、作っておいたものがある。



「は?」

 周囲から声が上がった。

『ラミネートクロス』で作り上げた楕円形の物体が浮いている。


 ホバークラフト、だ。

 空気のクッションで浮いて、高速移動する。

 あの乗り物だ。


 空気だけで浮かせようとすると、ファンの駆動音や排気量が問題になるが——

「魔法があると……できちゃうよね」

 そう。できてしまっていた。


 近未来的な造形の『高速ボート』だ。

 あまりに起伏の大きなところはツラいだろう。

 だが、平らな荒れ地や水面なら、高機動を実現できる。


 馬車と同じサイズ。

 今回は幌感覚で屋根に乗せてきた。


「う、浮いている」

 レーデルフィーヌが、茫然と呟く。

 案内役の少年は、声も出せずに口を開けていた。


 他の者たちは、なぜか表情もなく立ち並んでいた。

 ゴミ置き場では作っただけで、動かしては見せなかったからな。


「これで、湖に入っていけるよね!」

 掘り出して、岸まで運ばせるのは効率が悪い。

 湖の奥まで行ければ、掘ったコハクは浮かばせて、あとは拾うだけでいい。


「あとは……実際誰に掘らせるかだけど……」

 辺りを見渡して、目についた一抱えもある石を見る。


 既存のゴーレムはもったいない。

 使い捨ててもいいくらいの気持ちで、付近の石ゴーレムだ。


「あ、玄武岩だ」

 熔岩が固まった黒い石。

 水にも泥にも強い。



『バソルトゴーレム』を製作しました。



「あ、できた」

 ストーンゴーレムになるかと思ったけど、混ざりものが少なかったのかな?


「まぁ、できるんなら、こっちのほうがいいよね」

 形状は・・・・・・カエル。

 俗にいう『ウシガエル』にした。


 できあがったバソルトゴーレムは、黒い塊となる。


 ただの黒ではない。

 濡れたような鈍い光沢があり、表面には細かな粒子が詰まっている。

 触れれば、ひんやりとした重さが指に伝わりそうだ。


 丸太のような胴に、岩を削り出したような四肢。

 ウシガエルの形をしているのに、跳ねるというより“沈む”気配がある。


 密度が高い。

 水にも泥にも負けない、そんな質感だった。


 10匹作って――

「琥珀探して掘ってきて!」

 泥の中で活動させるなら、こいつだろう。


「ほれ、おまえも行け」

 イモリ(茶)も水中に滑り込ませる。


「あとは、待つだけだ」

 ホバークラフトを、静かに進ませながら腕組みをして待ちの態勢。


 大がかりな掘削工事はしない。

 泥の中を浚ってみるだけでいい。



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