第102話 『要請』
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「だけど――」
クアルト――『オレ』――はちょっと考えた。
「鉄を荷馬車に使うのはもったいないな」
せっかくの金属だ。
ちゃんと『兵』にすべきかもしれない。
「編成し直そう」
というわけで、作り直す。
『パーケットゴーレム』の馬車が四台。
これを『ジョイナリーゴーレム』の馬八頭が曳き馬になる。
『ブロスブロンズゴーレム』×10 。
真鍮の騎兵。
黄金色と赤銅色が混ざり合ったような、どこか儀礼用の鎧を思わせる美しい輝き。
軽量で、動きが滑らか。
関節の可動域も広く、騎士というより『軽騎兵』のような印象。
『シンタードアイアンゴーレム』×10 。
鉄の全身鎧。
焼結鉄の黒灰色に、青銅の筋が走る。
重厚で、まるで古代の巨兵が蘇ったかのような存在感。
重量はあるが、安定性が高く、盾役として完璧。
馬に乗せれば重装騎兵だ。
騎馬ゴーレム部隊
『リクリスタライズ・マーブルゴーレム』(馬)×10
白大理石の再結晶化による『生きた彫刻』のような馬。
『真鍮騎士』を乗せよう。
『ブロンズゴーレム』(馬)×10
緑青の模様が美しい、古代戦車の馬のような金属馬。
こちらは『鉄騎士』だ。
『ラミネートクロスゴーレム』と、『レザーゴーレム』の軽歩兵×10。
一人ずつを組木の馬に乗せる。
隊長が馬に乗って、九人の歩兵を指揮する形だ。
『ファイアブリックゴーレム』×10
『グレーズドゴーレム』×10。
低身長で大盾を構える重装歩兵隊。
赤茶色の重厚感ある耐火煉瓦。
ガラス質の光沢があって、表面が滑らかなタイル。
火と魔法に対して強力な防御になる。
『ハイドロキシアパタイトゴーレム』×10
白い結晶質の細身の兵士。
ククリナイフを装備した軽装歩兵だ。
一撃でも入れば終わりの低防御力。
なので、ひたすら避け続けて、一撃で敵を倒す。
そんな歩兵となる。
『ポーセリンゴーレム』×2。
打撃も斬撃も致命的。
ただし、釉薬のおかげか魔法耐性は高い。
知性を上げる研究のため、二体作ってみた。
なにかの物語で、二体で情報交換させると進化が加速する。
そんなふうに言っていたのを思い出したのだ。
あとは、そのままだ。
馬車の『金庫』にかくまって終わりだ。
乗合馬車クラスの大きな馬車を四台連ね。
22体の騎兵。
48体の歩兵。
あとは、草系の荷馬車10台。
「騎士団っていうには少な目かな?」
集団としては十分な規模だが、騎士団の行動単位で見ると……。
「『半個中隊』とでもいうところでしょうか?」
自然な動きで、レーデルフィーヌの影が差した。
きっちりとついてきていたらしい。
「でも、十分でしょう」
「十分?」
なにが?
「領内の第二都市…ですか? そこの代官から『要請』が来てるそうですよ? クアルト様をご指名で」
「要請ってなに?!」
寝耳に水過ぎるだろ!
楽しそうに騎士団づくりをしていた『僕』が引っ込んでしまったぞ!
「もちろん、ごみの処理ですよ。溜まったごみが消えてなくなる魔法を求めているそうです」
「あ、ああ……それか」
ゴミが溜まって困っているのは、何もメリマルの町だけではない。
レーデルフィーヌは肩をすくめた。
「第二都市というからには人口が多いでしょうからね。処理が追いつかないのでしょう。“魔法で一気に片付けられる人材がいる”と聞いて、飛びついたのでしょうね」
「ふーん……」
まぁ、そうなんだろうなとは思う。
昨日の父――男爵――の様子を見ても、ごみ対策には頭を悩ませているらしかったし。
「まあ、僕には得しかないから、全然かまわないけど」
「なら、また旅ね! ・・・こほっ」
びょんっと跳ねて、セティが笑う。
少し顔が青いようだが、旅に戻るのを本気で喜んでいるのがわかる。
ペクンの町では閉塞感に苛まれていたわけで、旅の解放感がいいのかもしれない。
乾いた咳が気にはなるが、そこは保護者を自任しているらしいイーアンに任せておいていいだろう。
「できるだけ早く、ですって。あと、男爵は『本人次第だが、話はする』と答えたらしいわよ? 多分、なるべく早く行ってくれないかって打診が来るわね」
「そうなの?」
レーデルフィーヌから、執事長に視線を向ける。
「はい」
レイモンドも頷いた。
「急なことではありますが、そうして欲しいと思われているのは確かでございます」
「そっか。じゃあ、行ってみようよ!」
クアルト——「僕』――は明るく笑った。
ゴミ再生の旅が始まる。
◇
「クアルトは、行く気か」
「はい。ゴーレムの素材集めでもありますから、喜んでおりますよ」
男爵の執務室、レイモンドの報告に男爵は明らかにホッとしていた。
「喜ばしいな」
ちっともうれしくなさそうな男爵。
ただ、第二都市は南方にある。
北東に位置するペクンの町とは反対方向だ。
ペクンの町の異変を、クアルトに知らせたくない男爵には、
渡りに船だった。
一度は関わった町。
知人も増え、思い入れもあるだろう町の危機。
状況を知れば、駆けつけるかもしれない。
そのリスクが減るのなら、理由なんてなんでもいい。
「……あとは、早期に片が付くことを祈るのみだ」
男爵は机に置いた手を、ぎゅっと握りしめた。
「難しいだろうが——」
声がかすれた。
領主としての判断と、
父としての願いが、胸の奥でぶつかり合っていた。
クアルトには、まだ背負わせたくない。
あの町の“死の気配”を。
「……どうか、間に合ってくれ」
その呟きは、誰に向けたものでもなかった。
『なにに』対してかもわかっていない。
それでも、願わずにはいられなかった。
◇
ゴミ再生の旅が始まる。
クアルトはまだ知らない。
その裏で、世界が静かに軋み始めていることを。




