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『時代遅れスキル『ゴーレム制作』専門の男爵家四男が、転生者の知識でそこそこ頑張るはずが、なぜか王弟に目をつけられてしまう話』  作者: 葉月奈津・男
第三部 貴族

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第102話 『要請』

1/1

  


「だけど――」

 クアルト――『オレ』――はちょっと考えた。


「鉄を荷馬車に使うのはもったいないな」

 せっかくの金属だ。

 ちゃんと『兵』にすべきかもしれない。


「編成し直そう」


 というわけで、作り直す。


 『パーケットゴーレム』の馬車が四台。

 これを『ジョイナリーゴーレム』の馬八頭が曳き馬になる。


 『ブロスブロンズゴーレム』×10 。

 真鍮の騎兵。

 黄金色と赤銅色が混ざり合ったような、どこか儀礼用の鎧を思わせる美しい輝き。


 軽量で、動きが滑らか。

 関節の可動域も広く、騎士というより『軽騎兵』のような印象。


『シンタードアイアンゴーレム』×10 。

 鉄の全身鎧。

 焼結鉄の黒灰色に、青銅の筋が走る。

 重厚で、まるで古代の巨兵が蘇ったかのような存在感。


 重量はあるが、安定性が高く、盾役として完璧。

 馬に乗せれば重装騎兵だ。


 騎馬ゴーレム部隊

『リクリスタライズ・マーブルゴーレム』(馬)×10

 白大理石の再結晶化による『生きた彫刻』のような馬。


 『真鍮騎士』を乗せよう。


『ブロンズゴーレム』(馬)×10

 緑青の模様が美しい、古代戦車の馬のような金属馬。


 こちらは『鉄騎士』だ。


 『ラミネートクロスゴーレム』と、『レザーゴーレム』の軽歩兵×10。

 一人ずつを組木の馬に乗せる。


 隊長が馬に乗って、九人の歩兵を指揮する形だ。


 『ファイアブリックゴーレム』×10

『グレーズドゴーレム』×10。


 低身長で大盾を構える重装歩兵隊。


 赤茶色の重厚感ある耐火煉瓦。

 ガラス質の光沢があって、表面が滑らかなタイル。


 火と魔法に対して強力な防御になる。


『ハイドロキシアパタイトゴーレム』×10

 白い結晶質の細身の兵士。

 ククリナイフを装備した軽装歩兵だ。


 一撃でも入れば終わりの低防御力。

 なので、ひたすら避け続けて、一撃で敵を倒す。

 そんな歩兵となる。


『ポーセリンゴーレム』×2。


 打撃も斬撃も致命的。

 ただし、釉薬のおかげか魔法耐性は高い。


 知性を上げる研究のため、二体作ってみた。

 なにかの物語で、二体で情報交換させると進化が加速する。

 そんなふうに言っていたのを思い出したのだ。


 あとは、そのままだ。

 馬車の『金庫』にかくまって終わりだ。


 乗合馬車クラスの大きな馬車を四台連ね。

 22体の騎兵。

 48体の歩兵。

 あとは、草系の荷馬車10台。


「騎士団っていうには少な目かな?」

 集団としては十分な規模だが、騎士団の行動単位で見ると……。


「『半個中隊』とでもいうところでしょうか?」


 自然な動きで、レーデルフィーヌの影が差した。

 きっちりとついてきていたらしい。


「でも、十分でしょう」

「十分?」

 なにが?


「領内の第二都市…ですか? そこの代官から『要請』が来てるそうですよ? クアルト様をご指名で」

「要請ってなに?!」

 寝耳に水過ぎるだろ!

 楽しそうに騎士団づくりをしていた『僕』が引っ込んでしまったぞ!


「もちろん、ごみの処理ですよ。溜まったごみが消えてなくなる魔法を求めているそうです」

「あ、ああ……それか」


 ゴミが溜まって困っているのは、何もメリマルの町だけではない。


 レーデルフィーヌは肩をすくめた。


「第二都市というからには人口が多いでしょうからね。処理が追いつかないのでしょう。“魔法で一気に片付けられる人材がいる”と聞いて、飛びついたのでしょうね」


「ふーん……」


 まぁ、そうなんだろうなとは思う。

 昨日の父――男爵――の様子を見ても、ごみ対策には頭を悩ませているらしかったし。


「まあ、僕には得しかないから、全然かまわないけど」


「なら、また旅ね! ・・・こほっ」

 びょんっと跳ねて、セティが笑う。


 少し顔が青いようだが、旅に戻るのを本気で喜んでいるのがわかる。

 ペクンの町では閉塞感に苛まれていたわけで、旅の解放感がいいのかもしれない。

 乾いた咳が気にはなるが、そこは保護者を自任しているらしいイーアンに任せておいていいだろう。


「できるだけ早く、ですって。あと、男爵は『本人次第だが、話はする』と答えたらしいわよ? 多分、なるべく早く行ってくれないかって打診が来るわね」


「そうなの?」

 レーデルフィーヌから、執事長に視線を向ける。


「はい」

 レイモンドも頷いた。


「急なことではありますが、そうして欲しいと思われているのは確かでございます」


「そっか。じゃあ、行ってみようよ!」


 クアルト——「僕』――は明るく笑った。



 ゴミ再生の旅が始まる。


 ◇


「クアルトは、行く気か」

「はい。ゴーレムの素材集めでもありますから、喜んでおりますよ」


 男爵の執務室、レイモンドの報告に男爵は明らかにホッとしていた。


「喜ばしいな」


 ちっともうれしくなさそうな男爵。


 ただ、第二都市は南方にある。

 北東に位置するペクンの町とは反対方向だ。


 ペクンの町の異変を、クアルトに知らせたくない男爵には、

 渡りに船だった。


 一度は関わった町。

 知人も増え、思い入れもあるだろう町の危機。


 状況を知れば、駆けつけるかもしれない。


 そのリスクが減るのなら、理由なんてなんでもいい。


「……あとは、早期に片が付くことを祈るのみだ」


 男爵は机に置いた手を、ぎゅっと握りしめた。


「難しいだろうが——」


 声がかすれた。


 領主としての判断と、

 父としての願いが、胸の奥でぶつかり合っていた。


 クアルトには、まだ背負わせたくない。

 あの町の“死の気配”を。


「……どうか、間に合ってくれ」


 その呟きは、誰に向けたものでもなかった。

『なにに』対してかもわかっていない。

 それでも、願わずにはいられなかった。


 ◇


 ゴミ再生の旅が始まる。


 クアルトはまだ知らない。

 その裏で、世界が静かに軋み始めていることを。



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