第76話 プルスレ村のライトアップ
ご訪問ありがとうございます。
昨日投稿しようと思っていたのですが、文章の訂正に手間取りまして1日遅れました。
今年も頑張って投稿していくので、よろしくお願いします。
またお時間ある時に読みに来ていただけると嬉しいです。
男湯に来てみるとイメールがデザインし直した女湯との違いに改めて驚いた。
「何か殺風景だね。」
「そうですね。思ってた以上に差を感じるものですね……。」
イメールの言葉に俺は頷いた。真っ白でシンプルで綺麗だと思っていたんだけど、イメールの綺麗な色でデザインし直された女湯を見た後だと、退屈な空間に見えてしまう。
「女湯と同じように進めて良い?」
「はい。僕は先に魔石置きを作ってから壁の色を変えていきます。」
俺はまず着替えを置くための台を女湯より少し高い位置に作り始めた。そして石の角を取る事と着替えが落ちにくくするために、手前側に膨らみをイメールのデザインを思い出しながら作っていった。
作り終えてからイメールを見ると、まだ魔石置きを作っていた。俺は続けて照明用の魔石置き場もイメールのデザインに似せて作り始めた。
「イメールみたいに上手くできないな。」と、俺は独り言のつもりで呟いた。
「でも僕はコーヅさんみたいに大きなものを作れないですよ。細かいことだけです。」イメールは手を止めず視線も魔石置きに向けたまま答えた。
「得意不得意はそれぞれか。」
俺はこれも練習と自分に言い聞かせ魔石置き場を手直ししてバランスを整えた。仕上がりはお世辞にも良い出来とは思えなかったけど。
やっぱり何か違うんだよなぁ。
全体が見えるように少し引いた位置から見てみたが、何が違うと言葉では表現が難しい。ただ全体的に何か違ってイマイチと思えるものに仕上がっている。
悩んでも仕方ない、と小さくため息をついて、あとはイメールに任せることにした。
魔石置き場を1つ作り終えた俺はイメールから魔石置きを受け取ってじっくりと見てみた。本当に上手く作るもんだと思う。俺はそれを魔石置き場に設置した。俺の魔石置き場とのアンバランスさが気になるが、今は気にしない。
俺は魔石置き場を練習がてらイメールデザインを模倣したつもりで作っていき、イメールの魔石置きを設置していった。
俺が作り終えた時にはイメールは壁や床、棚の着色をほぼ終えていた。
「イメール、一応俺の作業は終わったよ。あとは任せる感じで大丈夫?」
「ありがとうございます。コーヅさんが大体作ってくれているので、後は少し手を入れるだけです。」
少しだけ……?じゃないと思うけどなぁ。
「後はよろしくね。」
俺は後を託して少し離れたところからイメールの作業を見ていた。イメールは黙々と色を変え、魔石置き場を手直ししていく。確かにイメールが修正してるのは少しなんだけど、仕上がりがだいぶ違う。バランスなのかな、何だろう?いくら見ていても何を直したら良いのかは分からなかった。この辺りがセンスなんだろうな。
―――
その後も作業を続けていたイメールが男湯を完成させた。
「はぁ、疲れました……。」と、イメールはその場に座り込んだ。
「お疲れさま。頑張ったね。」
はい、と答えるイメールの表情は疲れの中にも充実感が見える。
「夜に向けて光魔石が欲しいね。魔石って持ってる?」
「はい、少しなら。」
イメールは腰ベルトから3つの魔石を取り出して渡してくれた。俺はマレーナに全部あげてしまったので、手元には無い。ティアたちにも聞くか。
「魔石を貰えるか聞いてくるよ。」
そう言い残すと、俺は男湯から出てティアたちを探した。すると床の階段に腰掛けて話をしているティアたちをすぐに見つけることができた。
「光魔石を作りたいんだけど、魔石を貰えないかな?」
「私達もお風呂に置きたいんだけど魔石が足りないのよ。」とティアに返された。
「遠征先で魔石ってほとんど使わないもんね。」とシュリが腕を組んだ。
うーん、と俺たちは悩んだ。村の人達はどうなんだろう?アデリーナ婆さんの店には子供たちが魔ネズミの魔石を売りに来てたし、どこかにあるかもしれない。
「村の人に聞いてみる。」と、俺が歩き出すとシュリが「私も。」と勢い良く立ち上がると隣に並んだ。
「こういうところにも魔ネズミって居るのかな?」
「居るよ。人が住んでるところには必ずいるものよ。」と言うシュリの顔が歪む。ネズミは好きでは無いようだ。魔獣とは言え、小さくてそこそこ可愛いのに。
「それなら小さな魔石が余ってたりするかもしれないのかな。」
「余っては無いと思うけど、譲ってはくれるかも。」
シュリと村に入って行ったものの大人の姿が見えない。そりゃそうだよね、昼間からブラブラするほど暇じゃないよね。
仕方ないので子供たちに聞こうと遊び場の方に向かった。
「おーい、こんにちは!」と、シュリが子供たちに声をかけた。
「あ、普通のおじさんとお姉ちゃんだ。」
なんで俺だけその普通のってのが付くんだ?
「ねえ、みんなは魔ネズミの魔石って持ってない?」
シュリはしゃがみ込んで目線を子供の高さに合わせるようにして聞いた。
「持ってるよ。使わないけど沢山集めてるから。」
「お姉ちゃん、欲しいの?」
「うん、欲しい。譲ってもらえる?」
「好きなだけあげるよ。遊ぶところを作ってもらったしね。」
そして待ってて、と言ったと思うと、蜘蛛の子を散らすように子供たちはそれぞれの家に向かって散り散りに走り去っていった。
「手に入っちゃった……のかな?」
「そうみたいだね。あっけなかったけど、良かったね。」
あまりにあっけなかったのでやや半信半疑で待っていると、子供たちがまた走って戻って来た。そしてその手には魔石が握られている。
「はい、お姉ちゃん、どうぞ。」
戻ってくる子供たちは次々にシュリに渡していくが、俺に渡してくれるような子供がいない。
「コーヅくん、少し持って。」
俺はシュリに手渡された魔石を腰ベルトの魔石入れにしまっていく。
そして子供たちからの魔石で俺のベルトの魔石入れには一杯になったし、シュリの腰ベルトも両手も一杯になった。
「みんな、ありがとう。この魔石でね、今夜キラキラ光らせるから楽しみにしてて。」
シュリは子供一人一人に目を向けて微笑んだ。
「分かった!」
「でも、母ちゃんが外に出るのを許してくれるかなぁ。」
「バカ、そんなの抜け出すんだよ。」
そしてそのまま微笑みを浮かべながらシュリは子供たちの様子を見て話を聞いている。シュリは子供が好きなんだな。
「お風呂に入りに行くって言えば大丈夫だと思うよ。」
「そっかー、お風呂なら行けるな。ありがとう、お姉ちゃん。」
シュリは立ち上がって「じゃあ、また夜にね!」と手を振れないシュリに代わって俺が両手で手を振って子供たちと別れて村の外に戻っていった。
「沢山集まったね。」
シュリの手が魔石で塞がっていて歩きにくそうにしていたので魔石を受け取った。
「ありがとう。なかなかの紳士だね。」とシュリに褒めてもらった。
俺はテーブルの上に受け取った魔石を置いた。そしてシュリと向かい合って座った。
「凄い量の魔石が集まったね。」
「そうね。これだけあればプルスレ村をギラギラに光輝くの村にできそうね。」とシュリは笑った。
「日本でも光の夜景を売りにしたところはあるんだよ。意外と本当に名物になるかもね。」
「へぇ、そうなのか。ニホンには何でもあるんだね。」
これだけ魔石に余裕があるなら床の階段をもっと綺麗に光らせる事もできそうだ。俺は立ち上がり、床の階段に作った間接照明の受け口から魔石を取り出した。そして魔力を流して光らせた。
「シュリはこの色の光魔石を作れる?」
まだ明るい時間で本来のオレンジ色はよく見えないのでシュリは魔石を手で覆い覗き込みながら「この色なら作れるわよ。赤とか青とかマレーナちゃんが作ったようなのは無理だけど。」と答えた。
「40個くらい作ってもらえる?」
「40個!?……でもお風呂だけでも20個くらいいるのか。分かったよ。」と、シュリはサッと計算しながら納得していた。
「じゃあ俺は床の階段に照明の受け口を作っていくから。」
「はーい。」
シュリは返事をすると、早速光魔石を作り始めた。
俺は床の階段にしゃがみ込んで魔石を入れる小さな受け口を作っていった。
受け口同士の距離を均等になるようにしたり、滑らかになるようにと丁寧に作っていった。
床の階段は2段あって元々2段目だけに作っていたけど、1段目にも2段目と互い違いになるような位置に受け口を作っていった。その方が足元も良く見えるようになるし綺麗だと思って。
太陽が徐々に傾いてきて西の空に夕焼けが見え始めた頃、やっと俺の作業は終わった。イメール品質を目指すとちょっとしたことでもすごく時間がけかる。
顔をあげるとシュリは光魔石を作り終えて、テーブル席に座ったままこちらを見ていた。そしてそのテーブル席にはティアやショーン、イメールも居た。
「あ、みんな居たんだ。」
「居たよ。お風呂には光魔石も置いてきちゃったよ。」
「早いね。……俺が遅いのかな。ここの階段は先に光らせちゃおうか。」
俺は作ったばかりの受け口を指した。
「いいよ。」とシュリは作った光魔石をテーブルの上に並べて魔力を流した。魔力が届いたところから順に魔石はオレンジ色の光を放ち始める。光はどれも全く同じとはいかなかいがどれも電球色と言える範囲だ。
「シュリ、床の階段に光魔石を入れていってもらえる?」
「分かった。」
「私もやってみたいな。」
「あ、僕もやってみたいな。いい?」
みんなで手分けをして魔石を階段の受け口に入れていった。今度は俺がテーブル席からみんなの様子を眺めていた。
まだ夕方なので足元をうっすらと照らしている事が分かるくらいだ。手分けをしたのですぐに終わって戻って来た。
「早く暗くなって欲しいね。」
テーブル席に座って雑談しながら暗くなるのを待っていた。陽が落ちて薄暗くなってくると階段が綺麗に光り始めた。
「綺麗に光り始めたね。」
「うん……。」
みんなも言葉少なに光を眺めていた。
そして階段の光に気付いた衛兵も村人も近くに集まって見ていた。その中にはアリアや子供たちの姿もあった。
「あれ俺たちの魔石だぜ。」と親に自慢している子供の姿があった。俺とシュリはうまく抜け出せたんだと顔を見合わせて笑った。
そしてティアとイメールが一言二言言葉を交わすと立ち上がって大浴場の方に歩いていった。そして大浴場の照明を点けて戻って来た。
「お風呂もすごく綺麗よ。」
「思っていた以上に綺麗でびっくりしました。」
二人は興奮を隠しきれない様子だった。
「ホントに?今日のお風呂は楽しみだな♪早く入ろうね、ティアちゃん。」
「そうね。早くご飯食べないと。」
「じゃあ、ご飯貰いに行こうか。」とショーンが立ち上がった。俺たちも立ち上がって一緒に食事を貰いに向かった。
最後までお読みくださりありがとうございました。
次回は今週末くらいに投稿したいと思います。




