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第68話 オーガの後始末

ご訪問ありがとうございます!


先日、友人に初めてこの小説の事を教えました。書いていることは話してましたが、誰にも見せてなかったんです。でも人に読んでもらって生の感想を聞いていかないと成長しないよって言われて。その通りですよね。少しアドバイスを貰いました。それを活かして書いていきたいと思いました。

 オーガの住処からゆっくりと流れ出てくるドス黒い溶岩は煙を上げながら溝に溜まっていく。


「あの状態じゃ、さすがのオーガキングでも骨も残らなさそうだな。」と誰かが呟く。

「爆炎マグマのティア……」


 ズドッ


 ティアにわき腹を殴りつけられた。俺はわき腹を抑えてうずくまった。本気で痛い。


「ははは。」


 衛兵たちから乾いた笑い声を上がった。でもみんなの顔に浮かんでいた強張りも、いくらかほぐれた様に見えた。


「洞窟を住処にしている魔獣相手なら、このやり方で何にでも通用しそうだな。」


 そのフェルディナントの意見に衛兵たちが頷く。いくら魔獣って言ったって、この溶岩の中で生きられる訳は無いよな。


「この2人が居なかったらヤバかったな。あのオーガキングは無理だぜ。」

 アレッシオが首を振った。

「ん?それは日頃の訓練がまだまだ足りてないって事を言ってるのか?」とタイガーはアレッシオを見やるとニヤリと笑った。

「いやいや、隊長!そう言う事じゃなくてな。」と必死に否定するアレッシオの姿に衛兵たちが笑った。

「でもなこの辺は俺たちの守備範囲だ。ティアやコーヅが居なくても仕留める必要はあるからな。」とタイガーは自分にも言い聞かせるようにして言うと、衛兵たちも神妙な面持ちで頷いた。

 

 やがて溶岩の流れも止まったが、溝からは煙が立ち上り、辺りに土や石の焼けた臭いが広がる。


「おい、アレッシオ、コンラート。氷水で溶岩を冷やせ。」とタイガーが指示をした。

 

 アレッシオとコンラートはその場から水を冷却し半分凍らせたものを溶岩の辺りに落とした。

 すると激しい音とともに蒸気が立ち昇った。アレッシオとコンラートは繰り返し氷水を溶岩の辺りに落としていく。


 どのくらいか繰り返したところで、湯気もほとんど出なくなってきた。


「よし、そろそろだな。」

 

 タイガーはそう言うとゆっくりと壁に近付いていった。俺たちもその後ろをゆっくりとついていく。溶けた氷水が辺り一面を水浸しにしていて、みんなの足音がベチャベチャと辺りに響く。


「コーヅ。このくらいの覗き穴を作ってくれ。」


 タイガーが手で示してくれた直径30cmくらいの穴を開けていった。穴はなかなか貫通せず思ったよりも壁に厚みがあったことを知った。


 そしてその穴が貫通した瞬間、中からは熱と肉の焼ける臭いがブワッと噴き出してきた。


「あちっ!」


 俺は熱風の勢いに1歩2歩と後ろによろめくように下がった。俺たちは壁から少し離れた所で様子を伺ったが、中からは何の音もしてこないので、フェルディナントがそっと壁に近付いて光魔石を中に放り込むと、穴から少し離れたところから覗いた。

 

「何も動いていない。見える範囲ではみんな死んでいるように見える。」

「俺にも見せろ。」


 タイガーが代わると、穴の中に風魔術を撃ち込んでから穴に目を当てると住処の中を覗き込んだ。少しの間、中の様子を確認していたタイガーが穴から離れて振り返った。


「おい、コーヅ。人が通れるくらいの穴を開けろ。」


 俺は黙って頷くと、穴とは違う場所に人が通れるだけの穴を開けていった。その間、フェルディナントが穴の中を覗き込みオーガが襲ってこないことを見張っていた。


 人が通れるだけの穴が開くとアレッシオとコンラートがそこから交互に氷水をまき散らしていく。


「コーヅ、すまねぇ。中が水蒸気で何にも見えなくなった。上の方に水蒸気を抜く穴を作ってくれ。」とアレッシオに頼まれた。


 俺も中を覗こうとしたが真っ白で何も見えなかった。壁の上の方に何か所か穴を開けていった。そして開けたそばから水蒸気が抜けていった。


「サンキュ。」とアレッシオ。コンラートは笑顔でペコリと頭を下げた。


 徐々に抜け出てくる水蒸気も少なくなり、仕上げにエトヴィンが風魔術で中の水蒸気を外に押し出した。


「隊長、完了だ。」

「ご苦労。フェル、確認を頼む。」


 フェルディナンドは頷くとヴェイ、アレッシオ、フィリッポを指名し、穴から腰をかがめるようにして中へと入っていった。


―――


 しばらく待っていると4人が中から出てきた。


「全て死んでたよ。確認しながら魔石も全部を集めてきた。」とフェルディナンドは腰袋から沢山の魔石をチラッと見せた。


「おい、あのオーガキングは?」とタイガーがフェルディナンドに聞いた。

「ああ、魔石の大きさが桁違いだ。」

 そしてその魔石はヴェイの腰袋に入っていた。1つで一杯になってしまう程の大きさだった。

「すげぇな、初めて見る大きさだよ。」

「信じられない大きさだな。これは領主様に献上しないといけないな。」


 みんなも覗き込むようにしてオーガキングの魔石をまじまじと見ている。俺も見せてもらったが少しトゲトゲしていてソフトボールくらいの大きさがあった。


 みんながオーガキングの魔石を見終わると「中に入っても?」とショーンが聞いた。


「いいけど、あまり見れたもんじゃないぞ。」

「誰か一緒に入る?」とショーンが聞いた。俺はパスだ。グロいの駄目だし。ティアとシュリもパスした。タイガー含めた残りの人たちがショーンと一緒にオーガの住処に入っていった。


 俺たちは入っていく人たちを見送りながらフェルディナントに中の様子を聞いた。

 

「ファイアボールや溶岩に触れたと思われる部分は肉も骨も焼失してたよ。オーガなのか何なのか分からないものもあったしな。いくつかの死体からは魔石も溶けて無くなってたよ。」


 あ、聞かなきゃよかったやつだ。


「聞いておいてすみません。もういいです……。」


 これ以上、声を発すると一緒に胃の奥から何かがこみ上げてきそうになる。


 フェルディナントは俺の青くなった顔を見て「大丈夫か?」と聞いた。

「はい。すみません。やっぱりこういう話は慣れなくて。」

「がはははは。そんなんだと衛兵は勤まらんぞ。」とヴェイに笑われたが、衛兵になる気はないという反論をする気にもなれず小さな苦笑をヴェイに向けた。


「コーヅくんにもこんな弱点があったのかぁ。」と言うシュリはどことなく嬉しそうだ。何か弱みを握られた気分になった。でもそんなものは今の俺にはどうでも良くて、携帯水道を取り出して胃から上ってくるものを水で押し戻した。


 そして時間と共に徐々に気持ち悪さからも立ち直れた頃に、オーガの住処からみんなも戻ってきた。


「住処の中はもう大丈夫だ。死骸も処分した。コーヅ、壁を消してしまってくれ。」とタイガーに言われた俺は壁をざっくりと消していった。


「恐らくこれでこの辺りも落ち着くはずだ。」

「外に居たオーガが戻ってきたら?」と俺は壁を消しながらタイガーに質問した。


「もうオーガキングも居ないしな、自分たちより強い奴らが居ると思えばプルスレ村へも近寄らないだろう。」

 

 そのタイガーの意見には、みんなも同じように考えているようで頷いていた。


 俺が壁をざっくりと消し終えると、住処の前にある広場の真ん中付近に移動した。森や洞窟と適度な距離があり、澄み渡った青空がよく見える場所だ。

 俺は水や魔力回復薬を飲んで座り込んだ。飲んだものが額からじんわりと汗として滲んでくる。


「あとは皆で無事に帰ればミッション完了だな。これで領主様も安心して迎えられる。なぁ?」とフェルディナンドがタイガーに話を振った。

「そうだな。まぁ、でもその前にコーヅにはあの中途半端なプルスレ村を完成させてもらうけどな。それに合わせて領主様にも戻って頂こうと思ってる。」


 俺もプルスレ村をやりっぱなしにするつもりは無かったから、完成までを考えているならありがたい。

 外壁はあと2日程度だと思う。許されるなら壁を綺麗にしたり風呂や床、テーブルセットや子供の遊び場なんかを整えるのに追加で2日くらいあると嬉しいけど。あとはイメール次第かな。仕上げの作業はイメールにお願いしてあるし。


「コーヅくんは何を考えてるの?」

 俺の隣まで来て座ったシュリに聞かれた。

「プルスレ村でやり残した事ってどんな事があるかなって思って。」

「あ、色々途中だったもんね。」

「途中なのもあるし、雑に作っちゃってる所もあるしね。でも最後の仕上げはイメールに任せたいなって思ってるけど。」と俺はイメールに話を振ると、イメールは自信なさそうな顔をしているが頷いた。


「休めたか?暗くなる前に帰るぞ。隊列を組め。」

 タイガーの指示に俺は立ち上がった。そして、ここに来るときと同じ隊列を組んで出発した。


 帰りは行軍に慣れた事もあり、あまり苦労せずにプルスレ村が見えるところまで戻れた。


 村では北壁や東壁に衛兵が立って周囲の確認をしている姿が見える。傾いた太陽に壁は朱く染められている。衛兵たちは俺たちを見つけると手を振ってくれた。俺も大きく手を振り返した。


 無事に帰って来れた……。


 そう思うと気が抜けて身体強化が不安定になってしまった。そうなると急激に足が重たくなって疲れがどっと襲ってくる。俺は重たくなった体を不安定な身体強化で誤魔化しながら何とか最後まで歩き切った。


 タイガーは到着早々、エイラを呼んだ。


「オーガキングが居たがティアが退治した。」


「ほぅ、流石ですね。」とエイラはティアを見る。ティアはその視線には反応せず、視線を外して無表情を貫いていた。全く嬉しそうには見えない。


「これでオーガやオーガに追い立てられた魔獣が南下してくる事も無くなってくるだろうな。」

「ではプルスレ村からも撤収ですか?」

「そうなんだが、村が中途半端な状態だからな。きちんと村を作り上げる事もだが、もうしばらく村に衛兵が居た方が安心だろう。だから残留組と撤収組を分けたい。残留組は前衛の1班と後衛班の半分。ただしコーヅとコーヅの警護は残す。」


「そうですね。それが良いと思います。後衛班の選別は私が行う、でよろしいですか?」


「ああ、頼む。」とエイラに向かって言うと、「集合!」と号令をかけた。


 俺は集合時の並びに合わせて、後衛班の列の後ろの方へと移動した。

 

 ぞろぞろと村中から衛兵たちが集まってきた。タイガーは全員揃ったことを確認してから話し始めた。


「今回のオーガ騒動は恐らく解決した。オーガキングが生まれた為にオーガの連中は力をつけて勢力範囲を広げたのだろう。だがそのオーガキングは討ち取った。」


「おおお!」


 衛兵の中からどよめきが起きたが、タイガーは構わずに続けた。「明日、1日は休暇として明後日の朝、1部の者たちを残してアズライトに帰還する。プルスレ村に残る者は明日伝える。それから明日の夜は村の方々も含めてお祝いだ。解散!」


「おおお!」

 

 お祝いのくだりで、また盛り上がりをみせた。村娘の誰がかわいいとか、酒が欲しいとか解散になっても衛兵たちはその場からあまり動かずあちこちで楽しそうに話している。


 一方で解散になり気が抜けた俺は、疲れが一気に襲ってきてその場から動けなくなった。

最後までお付き合いくださりありがとうございます!

大変申し訳無いのですが、遂にストックが尽きてしまいました。

次回は1週間以内には投稿しようと思います。


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