第67話 オーガとの戦い
いつもご訪問ありがとうございます。
あまり恋愛のシーンとか書いたりしていないのですが、バチェラーが好きでシーズン4を見ながら書いています。手が止まってテレビに見入っている方が長いですが。
出演されている皆さんの自分を表現する方法がすごく豊かですし、言葉の選び方も上手で本当に羨ましく思います。
タイガーの合図で斥候たちはオーガの住処に音を立てないように、ゆっくりと近づいていく。
入り口に立つ4体のオーガたちは、それに気付いた様子もなく眠たそうな目で暇そうにしている。
斥候たちが攻撃を仕掛ける位置についた。
いよいよだ。そしてこの後には俺の出番が来る。
ドクン、ドクン
心臓の高鳴りが止まない。手も呼吸も震えてくる。
タイガーが行けと手で合図をした。その瞬間、風魔術のウインドカッターが左右から同時に繰り出された。
ウインドカッターは音もなくオーガたちを襲い、4体のオーガたちの首を飛ばした。
きっと自分の首が飛んだことにも気付かなかっただろうと思う。それだけ鮮やかな手際だった。
続いてタイガーは俺たちに行けと合図した。俺たちは身体強化を最大にして住処の入り口に全力で向かう。しかしヴェイやフェルディナントたちが入り口に着いた時に俺はまだ半分の距離しか進めていなかった。
そして俺をサポートするようにショーン、シュリ、イメールがペースを合わせてくれている。
俺たちも数秒後には到着した。でもその数秒間は絶望的に永く感じた。
俺はすぐに全力で水晶の壁を作り始めた。入り口の端から、幅を狭くするように埋めていった。
作業を始めるとすぐに異変を感じ取った2体のオーガが住処の奥から様子を伺いにノソノソと出てこようとした。
ペタン、ペタンという素足の音が近付いてくる。俺はみんなを信じてひたすらに入り口を埋めていく。
オーガたちは俺たちの存在を確認すると、ギギャギャギギ!と叫びながら走って向かってきた。
走って向ってくるオーガ達に衛兵たちが得意魔術を撃ち込んだ。風や火、石や水などが俺をかすめて住処に入っていった。
そして一瞬の後、爆発音と共に岩山全体が縦揺れを起こして入り口から吹き出す熱風に俺の耳や頬が焼かれるような熱さを覚えた。
住処の中を覗いたその光景に俺は目を疑った。すぐそこまで来ていたはずのオーガたちは跡形もなく吹き飛んでどこにも居なくなっていた。そして辺り一帯がドロドロに溶けてぐつぐつと煮立っていて、岩や肉が焼ける匂いを運んできた。
「コーヅ!」
俺は住処の様子に気を取られていて、魔術がおろそかになっていた。慌てて壁作りに注力しなおした。
壁が徐々に入り口を狭めていくが、オーガたちも黙ってはいない。
バラバラに散って叫びながら襲いかかってくる。そんなオーガのことがどうしても意識と視界に入ってしまい、魔力が安定しない。
そこを1体のオーガが抜けて、外へ出ようとした。しかし入り口で待ち構えていたヴェイが一瞬でオーガの懐に踏み込み、切り刻んだ。
俺が入り口を埋め切るにはまだ少し時間が必要とみたヴェイは、住処に切り込んで行った。そこにショーンを含む数名も一緒に飛び込んでいった。
俺が入り口の半分くらいを塞げた時だった。地響きのような足音が住処の奥から聞こえて来た。
ズシン、ズシン、ズシン、……
そして住処の中ではその大きな足音の魔獣との戦闘が始まったような声が聞こえた。しかし程なく衛兵たちが外に逃げ出してきた。
「なんかやべぇ奴が居る。」
「何だよ、あれ……。」
「多分オーガキングだ。あんなオーガは居ない。」
そしてそのオーガキングが俺のすぐ前に居て入り口の壁を殴り始めた。これまで見てきたオーガより縦にも横にも2回りほど大きい。その大きすぎる体のお陰で住処の外に出るには壁が邪魔になっていた。
ズドン!バリン!
ズドン!バリン!
しかしその壁を殴られると端の方から割れて、砕けた石が頭に降り注いでくる。
痛みよりも恐怖の感情しか湧いてこなかったが、やらなければいけないという使命感でなんとかその場から逃げずに踏み止まることができていた。
そして砕かれて広がった入り口を全力で補修していく。衛兵たちからもオーガキングに魔術が打ち込まれたが、少し注意が反らされる程度で払い除けられている。でもその少しの時間で壁を厚く広くしていける。
「コーヅくん、魔力回復薬。」とシュリが口の中に瓶を突っ込んできた。
「あひはほ。」と答えると俺は上を向き魔力回復薬を一気に飲み干した。その間も入り口を埋める手は止めなかった。
オーガキングの脇をオーガが抜けて外へ出てきた。憎悪の感情を剥き出しにしたオーガと目が合った。その瞬間、俺をターゲットに定めたように感じた。
どうする?
そう思った瞬間にはピンポイントにコントロールされた魔術にオーガは頭を撃ち抜ぬかれて、その場に倒れた。
安心したのも束の間で、すぐその後ろから2体のオーガが飛び出した。その2体も憎悪にまみれた表情を俺に向けてきた。
しかし次の瞬間には俺の周りにいるショーンやイメール、そしてヴェイに斬りつけられ倒れた。
オーガに注意を逸らされて魔力を注げていない壁はオーガキングに破壊され入り口が広がってきた。
「コーヅ、オーガは出てきても大丈夫だから。壁作りに集中して。」
俺はその言葉に頷くと、魔力を更に強く流していった。
ズドン!
ズドン!
壁を殴る音は止まらない。魔力を注ぎ直した壁は少しずつ厚くなり、徐々に割られにくくなってきた。するとオーガキングは壁に手を掛けて引っ張り始めた。
グオオオォォアア!!
メキメキと壁が割れていく音がする。そしてその少し見えた指を目掛けてすかさずウインドカッターやファイアボールが飛んだ。
ガゥアアアア!
叫びを上げて手が壁から離れた。
「イメールくん、反対側から壁を作ってコーヅくんをサポートして。」
シュリがイメールを俺のサポートに入るように指示をした。
「は、はい!」とイメールは返事をすると、俺とは逆側に移動して入り口を埋めて始めた。その速度は遅いが、それでも少しずつ入り口が狭まっていく。俺も全力で入り口を埋めていきながら、壁を厚くしていった。
怒り狂ったオーガキングがイメールが作った壁を何度か蹴って壊した。そのほんの少しの時間が俺の壁を厚くする助けになった。
徐々に俺たちが入り口を埋める速度がオーガキングが入り口を広げる速度を上回ってきた。
グアォォォオオオ!!
これまでにない大きく、そして怒りに満ちた雄叫びをあげて、壁をこれまで以上に強く激しく殴った。しかし俺が作った壁を割ることはできなくなっていた。
オーガキングはもう一度大きな雄叫びを上げて、狭くなった隙間に体をねじ込んで外に出ようとした。身体をかがめて、片腕を出し、それから顔を出した。そして俺たちを視認すると、その目には深い怒りが燃え盛り、更に憎しみを加えたような色が浮かび上がった。
その目に俺は一瞬たじろいだ。だがみんなに守ってくれることを信じて、魔力を流していくことに注力した。
オーガキングの姿が大きく見えたことで、後方から魔術による遠隔攻撃が始った。オーガキングは頭を腕で守りながらも、近くに居る俺たちを殴ろうと窮屈ながらに腕を振り回す。しかしその腕は既に傷だらけだ。
「魔術止め!」
突如、タイガーの指示が辺りに響いた。そしてそれに呼応して魔術が止んだ。すかさずタイガーは「フェル!」と叫んだ。
フェルディナンドやヴェイたちは待ってましたとばかりに、オーガキングの太い腕に斬りかかった。そして腕だけでなく顔も狙う。
グオオォォアア!
痛みからなのか、それとも怒りからなのか雄叫びを上げて今まで以上に激しく腕を振りい始めた。
その間も俺は全力で入り口を狭めていった。そうすることで徐々にオーガキングの動きを奪うことができていた。そしてそれに気付いたオーガキングは慌てて体を引こうとした。
「みんな、離れて!」
ティアの声が聞こえた。後ろを振り向くとティアの手から放たれた黄色く光るファイアーボールが真っ直ぐオーガキングに向かっていくところだった。ファイアーボールが近付くにつれ俺の顔も焼けそうになる。本能的に俺もファイアーボールから離れる様に数歩ほど後ずさりした。
そしてそのファイアーボールはオーガキングに直撃し、オーガキングの太い腕を焼きながらファイアーボールと共に住処に押しやられた。ファイアーボールが通った部分は壁もドロドロに溶け、オーガキングの焼けた臭いが辺りに広がった。
グアォォォオオオ!!
オーガキングのこれまでにない大きな叫び声が住処の中に響き渡った。そしてズウウゥゥンという鈍い音がして静かになった。
住処からは煙や熱と肉や岩が焼ける臭いが流れ出てきた。
「コーヅ!今のうちに入り口を埋めろ!」俺はタイガーの言葉に我に返って入り口を埋め始めた。中からは熱風が噴出してくるのであまり近付くことはできない。
「他の連中は距離を取って風魔術と火魔術を撃ち込め!」
グギャァァァアアア!!オーガたちの断末魔の叫びだろうか。そしてブファっと火災旋風が住処から立ち昇った。火災旋風は荒々しく吹き出してくる。俺はその熱に耐えながら魔力を放出し続けた。
そして徐々に温度を高めてくる壁に触れ続けることも辛かったが、少々のヤケドなら後で治せばいい。全力で住処の入り口を埋め続けていった。入り口が狭くなるに連れて吹き出す炎も小さくなり、入り口を埋まると同時に消えた。
「できた……。」
俺は住処の出入口を埋めてしまう事に成功した。しかしまた壁を壊されて次のオーガが出てこないとも限らない。
俺は壁から離れタイガーたちが居る場所に急いで戻りながら魔力回復薬を飲んだ。
「コーヅ、まだだ。塞いだ壁をもっと厚くしろ。」とタイガーが指示を出した。そして「ヴェイ、ショーン、イメール、シュリ!」と俺について行くように指示した。
「はっ!」
また住処の入り口へと戻った。壁は更に強く熱を発していた。手を触れるのは勿論近付くのも少し怖いくらいだ。ただ壁に触れないと魔力を届かせるために消費してしまう。意を決して壁に手を触れた。
「あちっ」
手のひらに鋭痛が走る。残念ながら俺には身体強化をしながら土魔術で壁を厚くするという技術は無い。
「無理しないで。魔力回復薬はあるから魔力の心配は要らないよ。」
シュリはそう言うと、俺の手を取ってヒールで治してくれた。
俺は壁から手を少し離して魔力を送り込み始めた。閉じた壁が厚くなるようにと移動しながら全体を厚くしていった。
そして壁を厚くしつつも中の様子を音でうかがい知ろうとしたが、オーガの声や足音と思われるような音は聞こえてこない。
壁を厚くする作業を続けていると、足元が熱くなってきた。なんだろう?と足元を見ると地面から湯気が立ち上っている。
「溶岩が流れてくるかも!」
俺は衛兵たちに声をかけて湯気が立ち上る辺りを厚くしていった。だが作る傍から溶けて柔らかくなっていく。
イメールは壁の手前に溝を掘って溶岩がそこに溜まる様にしていった。
「コーヅ!無理しないで危ないわよ。」
後ろから届くティアの声に俺は壁から少し離れた。
すると遂に溶岩が壁を溶かし破ってドロドロと流れ出してきた。イメールが掘った溝も軽く飲み込んでしまいそうな量だったので、俺とイメールは慌てて溝を深く広く掘っていった。
「コーヅ、もういい。戻ってこい。」
タイガーの指示で俺たちはタイガーたちの居る場所に戻った。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
次回は12月1日(水)に投稿予定です。
1話まるごとがっつり戦闘シーンは初めてだったので表現方法とかなかなか思い浮かばずに結構時間がかかりました。




