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一章-5「精隷師と冒険者」

““巻き戻し異世界生活は甘くない!””

一章-5「精隷師と冒険者」


__________________


気絶してた時間は分からないが、俺は謎の揺れで目を覚ます。


「ん…………」


どうやら、ラーナにおぶられているようだ。


「ラーナ……?重くねぇのか…?」


俺のか細い声が耳元で聞こえてくるとすぐに立ち止まり、嬉しそうに叫んだ。


「あぁ、良かったです、!リドゥル様っ!…リドゥル様ったら、全然起きないので…背中に乗せてここまでやって来ました…!」


「す、すげぇんだけど……この螺旋階段は…?本命の螺旋階段か、?―――ん」


目の前に扉があるので、もはや彼女からの返答は必要ない。

俺はゆっくりと背中から降り、目の前にある、巨大すぎる扉の前に立った。


「……流石にこんなデカイの開けるのは無理だよな…」


ならどうするか?と考えていると、ふと俺の脳に…リールクスの「名乗り」が過ぎった。


もしかしたら?と思い、早速実行に移す。


「……え、えと…!リドゥルだ!!俺!リドゥル!」


リールクスのようなカッコ良さは無く…ゼロに等しいが、そんな名乗りでも優しく受け入れて開門してくれた。


「お、開いた…!俺って屋敷だと意外と有名人なんだな…。たはは…」


不安を誤魔化す為にラーナの手を握って先に進む。

おんぶされたり抱きしめたり頭を撫でたりした仲だ。

今更ボディタッチが気まづい様な関係ではない。


「………ラーナ。精隷師って本当に優しいやつなのか、?大丈夫?突然殴りかかってきたりしない?」


「はい!きっと大丈夫ですっ!―――多分?」


「すげぇな。多分っつー言葉って、ここまで人間を不安にさせることが出来るんだ。」


薄暗い部屋で、地下特有の無情な寒さに晒され、握る手が不意に強くなる。

「恐怖」「不安」「不気味」、負の根源が、俺の足取りを重くする。


「はぁ…はぁ…はぁ……だ、大丈夫か…。ラーナ…」


「え、えぇ。大丈夫です…」


何があってもこの子だけは守ろう、そう決意した直後だった。


「…やぁやぁ諸君……!来てくれたようだね。」


「「!!!」」


前方の闇から姿を見せた黒ローブに身を包む…声的に一人の青年。


「ここに来たってことは、“ヒュン”のカラクリを見抜いたってわけだ。…君たち、凄いね〜!」


「ひゅ、ひゅん…?」


動揺と聞き慣れないワードに対する疑問が多すぎて声が震えている俺だが、相手の黒ローブ男は目元を隠しながら、それでも爽やかに笑って


「ははっ!あまり緊張しないでくれ。ヒュンってのは僕の精隷だよ。―――緊張してる原因は部屋の明るさかな?

…確かに部屋の雰囲気は暗くて不気味だけど……こっちの方が精隷達が喜ぶんだ。」


「精隷……やっぱりアンタ、精隷師の…!」


「**“ヘシュマ・グーホスト”**。ヘシュマで良いよ?」


俺の言葉をニコニコしながら紡いだヘシュマ。

若干絶妙な空気が流れるが、それを打開すべくヘシュマが口を開けた。


「で、ここに来た理由はなんだい??迷子?それとも用を足しに来た?あ、もしかして精隷と結婚したいとか??」


「どれも違ぇよ。……俺は、隣のメイオーン都市に向かいたい。その為には護衛精隷…アジュエリを手懐けなきゃならねぇんだ。―――そのアジュエリを手懐ける方法を、教えて欲しい。」


アジュエリ、というワードを聞いてどこか複雑そうに微笑むヘシュマに、俺は思わず呆れ顔。


「おいおい、まさか。**テイム条件は分からない**って言うつもりじゃねぇだろうな!?頼むよ!!お前だけが鍵なんだ!!!」


「ていむ…?まぁいいや。んー、ちょっとあの子は…護衛精隷だからか、主様であるリザールくんに従順でねぇ?『魅力的な彼との契約を破る訳にはいかない』って言って、僕らが魅力的じゃなきゃこっちの事情はほとんど聞いてくれないんだ。」


「だろうよ……」


そもそも護衛精隷じゃなくとも、彼女の性格上テイムはかなり難関と思える。


ただ、まさか精隷師であるヘシュマ様でさえ白旗を掲げるほどとは…相当だな。


「まあそもそもね?精隷は何かしらの決まった方法があって手懐けるなんて、そんな作業的なものじゃないんだ。―――精隷の心を掴んで、契約をする。これが主流。」


「アジュエリの心を掴む…?」


彼女の「魅了してみろ」という言葉の意味がようやく理解できた。


「まぁ何はともあれ、魅了しなきゃ手懐けることは出来ねぇっぽいな。」


魅了するとは何なのか、と聞かれれば頭を抱える。

そこが分からず、今こうして詰まるところ詰まっているのだが。


「……………んー!!」


そろそろリールクスとリザールは会話を終えてる頃だよな???

だとするなら、こんな精隷師と話してるより、リザールと話した方が早くねぇか?


と思い、俺は冷ややかな視線をヘシュマに向ける。

それに気づいたのか、ヘシュマは冷や汗を垂らしながら必死に自分をフォローする。


「えっ?これは僕のせいじゃないよ?普通の精隷なら力になれたかもだけど…よりによって護衛精隷のアジュエリちゃんを話題に出すもんですから……」


「………まぁ、別に期待はしてない。ありがとな」


「ちょっとぉ!?!?去り際にそれ言われるのが一番辛いんですけどぉ!?」


苦笑しつつ背を向けて手を振るリドゥルと、それに着いていくラーナ。

そしてこの二人を見つめて悲しそうに手を伸ばすヘシュマ。


「あのぉ、宜しかったら僕も同行するよ!?精隷師として、何かお役に立てる―――」


必死な精隷師ヘシュマに、リドゥルは苦笑を保ったまま申し訳なさそうに


「あのなぁヘシュマ。同行するのは別に良いんだけど……………その、今ん所はなーんもお役に立ってない。だからあんま期待はされないと思ってくれよな」


「それ言う必要あったかなぁ!?!?同行したいって素直に思えなくなってきた!!!!」


なんて声を荒ぶらせるヘシュマに、俺と手を繋ぐラーナは引き気味で笑う。


「だ、大丈夫ですよ?…お役に立てなくても……。私が、雷属性の魔法で戦いますので…」


「僕ってこんな子供にも信頼されてないんだぁ…!!あーー、悲しい…!」


本来であれば、彼に手を伸ばして同情してるのだが…今はそれどころではない。

リールクスと再会して、俺はアジュエリを手懐けなければならない。


「…待ってろよ……アジュエリ…!!」


******************


「随分と、賑やかになったな。」


後ろで愛想良く笑うヘシュマと、俺と手を繋いで離さないラーナ。

その二人を見て呆れ顔を浮かべるリールクス。


「まぁいい。……で、リドゥル。―――リザール殿からメイオーンについての情報を手に入れた。」


「分かってる。メイオーン都市は殺人ばっかり起きてて危険だから、少しでも身を守るためにアジュエリをテイムしろってわけだろ?」


以前の記憶を頼りにツラツラ〜と話を進めるリドゥルに「ていむは分からんがさすがだ」とリールクスは感嘆。

ラーナも「流石です!」と目を輝かせている。


現実世界の俺なら絶対に考えられない。

周りから尊敬されるなんて。


「……………まぁただ、そのテイム方法が分かんねぇんだよな……。」


恐らく、このまま言っても俺は巻き戻しを喰らって一からになる。

ここまで進展させたんだ、巻き戻しは喰らいたくない。


「………とりあえず、リザールの元へ向かおう。それで、アジュエリについて詳しく聞くんだ。…残念ながらヘシュマが役立ずなせいでな。」


「ほんとごめんね!?でもね、流石に精隷師だからってね、いじりすぎじゃない!?」


相変わらず荒ぶる彼を他所に、ラーナが手を胸元で合わせてから言う。


「そういえばっ、今夜の食卓に皆様を歓迎したいとリザール様も言っておられましたので…その時に、アジュエリ様について色々聞き出すのはどうでしょうか!」


「―――それだぁ!」


俺の甲高い声が廊下に響いた。

その声は微かに……自室で何かを書いているリザールの耳元へ届く。


「……ん。……どうやら、リドゥルくんが騒いでるようダネ。……記憶喪失。そのせいで明るい性格になって………ククク、少し楽しくなりそうダネェ。」


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

一章-5でした!

一章-6へ続きます!

…ん?6…悪魔の数字…?嫌な予感。

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