一章-6「異世界晩餐」
““巻き戻し異世界生活は甘くない!””
一章-6「異世界晩餐」
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この異世界では**“魔刻”**という1000年前の魔王?が制定した…ほぼ時間と変わらないシステムを使用して、今が何時何分かを確認しているらしい。
「そして、コレが魔刻鉱石。……自分で今は何刻か…一応計算は出来るんだけども……それをこれは自動でやってくれる万能魔法鉱石!…だから今は……夜之七時八分だね。」
魔刻鉱石に時間が浮かび上がり、俺は「おぉ」と感嘆。
ヘシュマは意外にも物知りで、俺はこの世界における時間というものを理解する。
問題は、数字が歪な形をしていることだ。
1でもなければ、一でもなく、1でもなければ、イチでも、いちでも、壱でも、①でもない。
なんだ、これは。
「あの、俺記憶喪失だから聞くんだけど………このちょ〜歪な文字が、この世界では主流なのか?」
苦笑しつつ魔刻鉱石に浮かび上がる時間を指さす俺に、ヘシュマの口角が上がった。
「うん、そうだね!この文字は“ベーヌム文字”。古代ベーヌム人が作り上げた文字で、ほとんどの人がこれを主流に文字を使用してるよ。」
「ほぇ〜?夜之七時八分……夜之は多分夜中とか、そういう感じだよな?」
「すごいねリドゥルくんは。呑み込みが早い」
こう見えて、俺は攻略本に一度目を通しちまえばあとは何も見ずとも、手が勝手に動いてクリアまで導いてくれるほど記憶力が良いもんで。
無論、今は記憶喪失という設定でやらせて貰ってるが…………なんて、この異世界に来てもはや何度目か分からない苦笑を浮かべていると、リールクスとラーナが俺の部屋(最初に目覚めた部屋)にやってきて
「ご飯ですよーっ、リドゥル様、ヘシュマ様〜!」
「お、飯か!」
ラーナの呼び掛けに俺は目を輝かせながら、ラーナを抱き上げ部屋を出る。
その後ろにヘシュマとリールクスが着いてくる形だ。
「……お前たちの関係が、相変わらずで良かった。」
リールクスの意味ありげな言葉に思わず「は?」と口ずさむと、彼はラーナの目を見つめながら
「リドゥルの記憶が失われる前も、このようにラーナ殿との仲は良好だった。…もちろん、抱き上げたりなどはしてないが。」
「そうなのか〜。意外と女子との関わりあるんだな」
まぁ相手が小さな少女だからこうして理性を保ちながら抱き上げてやっているが…もしもこれが同い年や年上、ちょっとだけ年下だった場合………………言わずもがな。
俺のムスコがリミットブレイクしてしまう。
「………フッ」
無論、このような幼女も悪くは―――
「お、来たようダネェ。」
階段を完全に降りたところで、長身のロングヘアーの男性が…黒いタキシード?のようなものを身につけた状態で一礼してきた。
「久しぶりダネ、リドゥルくん、リールクスくん。―――ヘシュマくんはそうでもないかな?10年振りくらい?」
「「10年…」」
いやいやそれは久しぶりという言葉が適用されるだろと、リールクス共に思う。
そんなことはどうでも良い。
恐らくだが、この長身ロングヘアー男性こそが…
「アンタが、リザールか」
少し神妙な顔で呟いた俺にリザールは特徴的な笑い声を上げて席を指さす。
「クツクツクツ…!そうダネ、私がリザールだよ。…まぁ立ち話もなんダネ。座りたマエ。」
厄介護衛精隷アジュエリを手懐けてるからどんな野郎かと思えば……喋り方と笑い方以外は常識的で、紳士な方だ。
「よいしょ…」
右にリールクス、左にヘシュマ、正面にリザールという形でそれぞれ食卓につき、目の前にあるご馳走に目を輝かせる。
「美味そうだな…!何の肉使ってるかは知らねぇけど!」
俺の言葉をリザールは聞き漏らすことなく、目の前にある薄切りされた肉を指さして説明を始めた。
「この肉は、“魔獣・ベアルトン”の肉…要は、熊の肉ダネ。これが歯ごたえと甘みがあってとても美味なんダネ。」
「すっげぇ柔らかい言葉で訂正してっけど、俺は聞き逃してねぇぞ!?魔獣っていう単語を!!!え?!魔獣なのこれ!!」
異世界だから居るには居るのだろうが…
まさか最初に対面する魔獣が、既に狩られて調理済みだなんて。
せめて、ベアルトンがどんだけやべー魔獣なのか一度実物を見てから頂きたかったな。
「さぁ、冷めてしまう前に頂きたマエ。」
ニッと微笑みながらウインクすると、両端にいる二人が肉に手をつけ始める。
それを見て俺も手を合わせてから「いただきます」と呟いて、フォークらしき器具を片手に肉を一口。
「んっめぇっ!魔獣って美味いんだな……!」
「そうダネ。よく火を通せば、家畜の豚や牛よりも遥かに美味しいお肉に出来上ガル。コレが、魔獣肉の良いところダネ。」
⠀
実物を知らないのに、ここまで「美味しい」と思えるほどのレベルの高さ。
日本で言う黒毛和牛 松坂牛なんて比にならない。
否、知らないからこそ「美味しい」と思えるかもしれないが………
「ん〜!うめぇなホントに。―――あ、これって」
ふと、小皿に盛り付けられてある柑橘類に目を通す。
するとリザールの隣で佇んでいるラーナがクスクスと笑って意地悪っぽく
「えへへっ、勝手に紙袋の中にあったオレンビーとミガン、食後の果実として料理しちゃいましたっ☆」
「その笑顔で全部帳消しだ。買ってよかったぜ本当に。」
サムズアップする俺を横目で見つめて「馬鹿馬鹿しい」と溜息つくリールクス。
「やっぱりこの屋敷のご飯は美味しいね〜。」
なんて言いながらも、俺の皿の上に緑色の物体を乗せまくるヘシュマ。
俺でも思わず呆れ顔だ。
「お前、好き嫌い激しいタイプなのか………。」
「たいぷ…?」
「性格ってこと。」
「ああ。―――まあっ、好き嫌いっていうか。…その、ほら、あっ!精隷が『これは毒だから食べるな!』って言うんだよね」
「絶対今考えたろ!!」
漫才をしてる俺とヘシュマをさておいたリールクスは、咀嚼していた肉を飲み込んで話題をリザールに持ち込む。
「―――リザール殿。……先程貴方は、“メイオーン都市に向かう際は護衛精隷をつけた方が良い”と言っておられましたが………アジュエリ殿はあまりにも難易度が高いです。…もし宜しければ、アジュエリ殿と容易く契約する方法を教えて頂けませんか??」
リザールからすれば難しい話ではないはずだ。
実際、彼は彼女に「魅力的」だと認められ、今こうして屋敷の護衛精隷として働かせている。
もしも、もしもだが……リザールがアジュエリに「彼らと契約してくれ」と強請ってくれるもんならば…話は本当に早く進む。
「……うーむ。では、私から話をしようでは無いか、ダネ」
「えぇぇぇええええ!?」
俺は俺の思惑通りに行って驚いたあまり、席を立つ。
そこへ冷たい視線が向けられる。
「っ、すまん。」
耳を赤くしながら会釈しておずおずと席につく俺。
それでもリザールはニコニコして
「アジュエリは優しいからネ。私からのお願いなら、きっと飲み込んでくれるはずダヨ。」
「ありがとうございます」
一礼するリールクスに続いて俺、ヘシュマが頭を下げる。
「あざーす!」
「ありがとうございますっ!」
とりあえず、とりあえずはこれでクエストクリア…ってことで、良いんだよな?
「…………ぶはぁあ!良い感じに気持ち解れて身体が軽い!!!よっしゃ、ラーナ!お肉オカワリ!!!」
「はい!オカワリってなんですかぁ!?」
「そこから!?」
元気よく答えるラーナにズコーッとリアクションを取った………その時だった。
「…………ん?」
リザールの手が、止まる。
「…………門が、壊されてしまったようダネ。」
とんでもないことを平然とした表情で呟くリザールに、俺は思わず再び立ち上がる。
「やべぇんじゃねぇのか!?門って、あの門だろ!?あの門が突破されたら、邸宅そのものに―――」
「ぎゃうっ…」
風が強く吹き…彼女の悲鳴のあとにラーナの首が俺の皿の上に落下する。
「ぅぇ…?あぇぇえええ……?????」
先程まで閉まっていたはずの扉が、全開にまで開いていることに気づく。
「あっ…だめ―――」
直後、俺は何者かによって背中を刺された。
「あふがっ…!あ、あああぁぁぁああ………………?」
やべぇ、死、
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「そして、コレが魔刻鉱石。……自分で今は何刻か…一応計算は出来るんだけども……それをこれは自動でやってくれる万能魔法鉱石!…だから今は……夜之七時八分だね。」
「ふぇっ…?」
一章-6でした!
一章-7へ続きます!




