一章-3「リザール邸宅にて」
““巻き戻し異世界生活は甘くない!””
一章-3「リザール邸宅にて」
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目が覚める。
まず視界に入ったのは、オシャレな照明と模様が彫られた木造の天井。
「あ………んっ……ツッッゥ…」
若干、腹部の痛みが残っているが充分に動ける。
いやそもそも、俺はあんなひょんなパンチで気絶したのか。
相変わらず弱すぎて辛い。
「お、起きましたか…!リドゥル様……」
扉の隙間から緑色の目を覗かせるメイド少女。
彼女は申し訳なさそうに扉を開け、ちょこちょこと接近。
ベッド付近で立ち止まると、頭をふかーく下げて謝罪してきた。
「も、申し訳ありませんでしたっ…!リールクス様から話を聞いて……申し訳ないですっ…!」
「あ、嗚呼。良いんだよ。あのパンチで記憶が戻ったら嬉しかったな〜!なんて……あはは。」
「ぱ、ぱんち?…よく分かりませんが…私の失態も優しさで笑いに変えようとしてくれているのは分かります…!やっぱり根はリドゥル様なんですねっ…!!」
涙を浮かべながら俺に抱きついてくるメイド。
子供相手にドギマギしている自分が情けない。
「と、とりあえず……リールクスはどこだ…?なんか、メイオーン都市に向かう準備をするっつってここ来たんだけど……当の本人が居ねぇんじゃな…。」
「リールクス様は、お家主様と二人で話し合っておりますっ!恐らく、メイオーン都市についての情報を聞き出してるのだと思われますっ!」
「ほぇ?まぁなんか、**抜かりなく**って言葉が似合うもんな、アイツには。全然よく分かんねぇけど」
まあなんだ。
リールクスがメイオーン都市に向けての準備をしてくれてるんだったら、俺は屋敷をEnjoy出来る。
「っし。屋敷のこと思い出す為に、ちょっと屋敷内散歩してくるわ。…んじゃ、リールクスには『起きた』って伝えといてくれ。……えーと?」
「あっ…申し訳ありません…!私、**“ラーナ”**と申します…!!え、えと、リールクス様に伝えておきますが…迷子にならないようにしてくださいね?―――記憶喪失なので…」
「ラーナよ。俺は大人だ。確かにここは広いが…迷子になるなんて事は、ゼッッッッッッッッッタイに**無い**。」
と、思っていた時期もありました。
「ここどこだ!?はぁ!?どこだここ!!!」
好き勝手練り歩いたせいで、完全に方向感覚を失った。
リールクスにも会えねぇし、家主のリザール?にも会えねぇ!!
ラーナも見えねぇし、俺は人を寄せつけない何かを発してるのか!?
「くそぉう…終わった…」
俺はここで誰にも見つけてもらえず餓死してしまうんだ。
そう本格的に絶望している所へ……
「何をしてる。………本当に何をしている。」
「…えっ?りっ、りり、リリリリリリ!!―――……リールクスゥゥゥウウウウ!!!!」
俺は彼の姿を見るなり押さえ込んでいた感情が一気に溢れ出し、勢いよく抱きついてしまう。
「良かったぁ!リールクスさぁん!良かったぁ!」
「お、おい。リドゥル…!恥ずかしいだろう…!やめろ……!」
グググと力を込めて引き剥がそうとするのに対し、俺は力を入れてリールクスから離れまいとする。
そんなことを廊下の中央でやっているのだ。
我ながら、アホらしい。
「良い加減に離れろッ…!さもなくば焼くぞ…!!」
「ぐすっ…良かった…良かったよ本当に………」
彼の脅し文句をスルーしていると見せかけ、内心怯えながらリールクスから離れる。
「ふぅ…まったく。」
紺色コートをサッサッと払ってから、気を取り直して準備について話し始めた。
「リドゥルが気絶している間、俺はリザール殿にメイオーン都市について説明をしてもらった。」
「ふむ?」
「どうやら、現在のメイオーン都市は危険らしい。大量の殺人事件が起きているとかどうとか。―――だから、護衛が必要だと。」
正直、リールクスだけでもかなりの戦力になると思うが………護衛か。
その方が俺の安全が保たれ、二度目の死を体験しなくて済むかもしれない。
「なるほどな?オッケーオッケー了解。……で、護衛はどうやって入手しろと?」
俺の無粋な質問にリールクスは上を指差す。
「このリザール邸宅の護衛として…200年も仕えている**“精隷”**が存在する。……その精隷と、話す。話して、護衛についてもらうんだ」
「…………あ、え?!あ、そうなのね!?こういうのって普通、リザールが家主の権力使って強制的に俺らに仕えさせるものじゃないの!?」
「彼は人格者だ。住民の意思をなによりも尊重する。……素晴らしいお方だ。」
「そのせいで住民の俺らが大変な目に遭ってますけどそこに関しては何か!?!?」
まぁキレてても仕方ない。
動かなければ何も始まらない………なんて、今まで楽してきた俺が言えるセリフでは無いが。
「じゃ、行くか。…その、精隷?っつやつが居る場所に。」
「待て!……精隷は我々人間よりも遥かに強く、高貴な存在だ。―――絶対に無礼が無いようにしろ、いいな?」
「そんなスゲェのか。」
精隷……現実世界で言う精霊だよな?
多分だが、契約すれば護衛についてもらえる感じか?
「……まぁ、実際に見てみなきゃ分かんねぇか。行こうぜ、リールクス」
リザール邸宅の最上階。
俺とリールクスの前に現れたのは、巨大な扉だった。
「…リールクスだ、開けてくれ。」
正門と同じシステムで、リールクスが名乗りをあげると扉が自動で開く。
そこへ俺らが足を踏み入れると………
「よォ。オメーら。」
褐色肌に黄土色の髪色をしたボブヘアーの少女。
見た目的な年齢はラーナよりちょっと上くらいだが…
「200歳とは思えねぇな…」
俺の戯言を聞き逃すことなく耳に入れ、クックックッと笑いながら指を指す。
「どうしたんだァ?リドゥル野郎??随分とキャラが変わったじゃねェか!クックックッ!」
「生憎、絶賛記憶喪失中なんだ。悪いが許容してくれ。」
「構わねェぜ?なんなら、ウチはそっちの方が好きだからよぉ」
いや別に少女にモテてもなぁ…なんて思っていると、リールクスが前に出て本題を切り出した。
「**“精隷・アジュエリ”**殿。どうか、貴方様のお力をお借りしたい。」
「………ほーう?…つまりそれは、護衛をして欲しいってワケだな??」
「はい。お願い出来ませんか。」
リールクスの提案…リザールの提案は、向こうには全くの利点がないものと見える。
もしも、アジュエリがとんでもなく「損はしたくねぇ!!」という性格なのであれば……交渉は決裂、ということになるだろう。
「………」
俺が生唾を飲み込んで汗を握りしめていると、アジュエリは舌を出して
「無理だ、バーカ!」
手のひらから放たれた突風?により、リールクスが呆気なく吹き飛ばされてしまう。
「リールクス!!!」
バゴォン!!と聞くに絶えない轟音が響き、俺は咄嗟に耳を塞いでしまう。
「あ、ぁぁぁ……?」
嘘だろ!?
リールクスって強いんじゃねぇのか!?
アイツがあんな呆気なく…
「……んで、リドゥル。オメーはウチを魅了することが出来んのか???」
「…み、みみっ、魅了?」
「あ?当然だろ!?ウチに護衛して欲しいってんなら、まずは**『ウチが護衛するに相応しいか』**を見せてもらわなきゃなぁ?」
なるほどな…そう来たか。
ただなぁ、魔法はよく分かんねぇんだよ…!
異世界には魔法がお決まりだから、特に触れずにここまで来たけど………自分が魔法を使える体質なのかもわかんねぇ…。
「あ、あの、アジュエリさん?俺がさっき買ったオレンビーとミガン…この二つで交渉しません、?」
「はぁっ???―――オメー、本当に………」
突如、アジュエリの顔が間隔僅か3m程の場所に出現する。
「つまんねーな。」
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目が覚める。
まず視界に入ったのは、オシャレな照明と模様が彫られた木造の天井。
「あ………んっ…ツッッゥ…」
若干、腹部の痛みが残っているが充分に動ける。
―――いや、そうじゃないだろう。
「巻き戻った……のか。」
なんでだ?
アジュエリの癇に障ったからか??
「ったく………」
巻き戻らなかったら、多分俺も吹っ飛ばされて…死んでたかもしんないな。
「ラーナに聞くか……なんか、覗いてるし。」
俺は高貴なベッドから起き上がり、扉の前に立っているラーナを抱きしめて捕まえる。
「きゃっあっ!!り、リドゥル様っ!何をするんですかぁ!」
「ラーナ。アジュエリって分かるか??」
「あっ、アジュエリ様ですか…!?アジュエリ様って、あの、精隷ですよね!?わ、、わ分かりますけど…まず下ろしてくださぁい!!!」
赤面しながら騒ぐラーナを床に下ろし、ふぅと溜息をついてアジュエリについて説明を始めてくれた。
「精隷・アジュエリ様。あの方は200年前からこの屋敷に仕えている**“護衛精隷”**です…。今までに**護衛が欲しい**として、この屋敷に訪れた冒険者様が居ましたが…全員が**『浴びると命を落とす風』**によって命を落としてます。」
「んっだよそれ…!浴びると死ぬ風とか……なんでもアリじゃねぇか…ッ!!」
「護衛について貰うには一つだけ。―――**彼女に好かれること**、それだけです。」
人差し指を立てて、彼女はそう呟いた。
つまり今の俺のクエストは
**『精隷を手懐けよ』**
「…最難関の試練だな……」
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一章-3でした!
一章-4へ続きます!




