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月光の時計塔  作者: 麦野れいん
一章『中央都市リーベリア編』
9/16

一章:幕間1『とある夜の話』


幕間:月灯亭 自室にて


夜。

一日の活動を終えて、寝るまでの時間を過ごすひと時。

イーゼルはしばらく放置していた荷物整理をしながら過ごし、アルシアは本を片手に紅茶を嗜む。

すると、唐突に何かを思い出したかのように、アルシアが席を立つ。


「イーゼルさん、あれ持ってますか?」

「ん? あれって?」

「月光石です。初めて会った日に、光る湖で拾った……」

「あぁ~、あるよ!」


 イーゼルは荷物の中から小さいポーチを探し当て、その中から菱形の魔石を取り出した。


「借りても?」

「うん」


 アルシアは魔石を受け取ると、さっと窓際のいつもの席に腰を下ろした。


「それ、どうするの?」

「露店を見ていたら、丈夫そうな革紐を見つけたので、加工しようかと思って……」

「ふぅん……?」


 イーゼルは興味深そうにアルシアの手元を覗き込む。

 アルシアは手慣れた動作で、魔石に革紐を巻き付けていく。

 革紐の先を輪状にして余った紐を切る。


「これで……大丈夫ですね」


 魔石が滑り落ちないのを確認して、再びイーゼルに手渡した。


「これって……」

「首から下げられるようにしました。まぁ、使うかどうかは任せますが……」

「使う!」


 即答したイーゼルの表情がキラキラと輝く。

 イーゼルはその場で首から下げて、飾りの位置を調整する。


「どうかな!」

「似合ってますよ」

「えへへっ」

「喜んでもらえて良かったです」

「でも……なんで、首飾りにしようと思ったの?」

「えっと、魔石って本来すぐに使えるようにしておくものなので、アクセサリーとかにしておいた方が、役に立つかもと思いまして……」

「なるほどね。ふふっ、ありがとね、アルシアくん」

「いえ」


 イーゼルは相変わらず目を輝かせて、魔石を見つめる。

 すると、何かを思い出したようにイーゼルがこちらを向いた。


「そういえばさ。この魔石作ってくれた時に、魔法が使えて魔力が固められれば、誰でも作れるようになるって言ってたよね?」

「言ったような気がしますね」

「あれって、私もできるの?」

「うーん……」

「やっぱ難しい……?」


 アルシアは小さく唸りながら悩んだ。


「イーゼルさん、右手借りてもいいですか?」

「右手?」


 イーゼルは右手をアルシアの方に伸ばす。

 伸ばされた右手の手首に触れて、脈を読むように魔力の流れを読む。


「ありがとうございます。もう大丈夫です」

「そう?」

「はい」

「今のは……?」

「イーゼルさんの魔力の流れを読みました」

「どうだった?」

「まぁ……結論から言うと、あまり魔法は向いてなさそうです」

「やっぱり……?」

「自覚するところはあるんですね」

「そりゃぁ……、エルフで初級魔法しか使えないの私ぐらいだったからね。しかも右手でしか使えないから、武器を左に持つのはこれの影響だったり」

「なるほど」

「そっかぁ。魔石作ってみたかったなぁ……」


 イーゼルは残念そうではあるが、どこか納得しているような表情をしていた。


「まぁでも、諦めるのは早いかもしれません」

「え……?」

「あくまで僕の見立てではありますが、たぶんイーゼルさんは魔法使えるようになりますよ」


 イーゼルの表情は困惑に変わるが、アルシアは構わず続きを語る。


「魔法が苦手な人は、体内の魔力回路が部分的にしかなかったり、回路が細すぎて大量の魔力を扱えなかったりします。でも今の魔力の流れを見た限り、そういう心配はなさそうです。むしろ普通の人より良い回路かもしれません」

「じゃあ、他に原因が?」

「そうですね。魔力回路に問題はないですが、微かに何かを阻害する力を感じました」

「阻害する力……」

「考えられるのは……、なんらかの封印などで制限されているとか……」

「封印か……。思い当たるのはないかな」

「もしくは、自分で制限をかけてるパターンもあるかもしれません」

「自分で?」

「人を手にかける事を躊躇うのと同じく、魔法が発動することを反射的に拒む体質の人も稀に居る、と文献で見たことがあります」

「そうなんだ。そういう人もいるんだね」

「えぇ。まぁどちらにせよ、魔力回路がダメなら、それはもう素質がと言うしかないですが、魔力回路に問題がなければ、後天的に魔法がもっと使えるようになる可能性は十分にあります。原因を解決できれば、魔石を作ることもできるはずです。……というのが今の見解です」

「そっか……」


 イーゼルはなんとも言えない表情をしていた。


「大丈夫……ですか?」


 余計なことを言っただろうか、アルシアは少し不安になりながらイーゼルの様子を窺う。


「うん、大丈夫。なんていうか……、魔法はもう無理なんだって諦めてたからさ。まだチャンスあるのかな~って思って……」

「ありますよ。まだ希望的観測ではありますけど」

「そう言ってもらえると心強いね。もしもっと魔法が使えるようになったらさ、その時は魔石のつくり方、教えてね」

「……えぇ。機会があれば」



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