【04】 ラブホテルに入るの? 嘘でしょ?
夜の街を滑るように走る由利の車。やがて、街灯の少ない暗がりに輝く派手なネオンサインが見えてきた。
由利「ここに入るぞ」
爽香「……え? ちょっと、嘘でしょ!?」
丹沢「なんでラブホテルなんだよ!」
由利「ここはな、プール付きの個室があるんだよ」
爽香「嘘だ! あたしを騙して無理やり変なことしようとしてるんでしょ!
大声出すわよ! 警察呼ぶからね!」
由利「もし本当にプールがあったらどうする?」
爽香「……一生感謝するわよ! 崇拝してあげる!」
由利「よし、交渉成立だ」
ロビーのパネル写真。空室を示すバックライトが灯る部屋の中に、爽香は目ざとく目当てのものを発見した。
爽香「あった……! 本当にプールがある……!」
由利「408号室。休憩17,000円か」
由利は淡々とフロントでクレジットカードを出し、鍵を受け取った。
エレベーターの中、爽香の目がじとーっと由利を睨みつける。
爽香「ねえ、由利さん」
由利「なんだい?」
爽香「なんでこんな場所知ってるの? 来たことあるの?」
由利「……いや、初めてだ」
丹沢「嘘だ! 迷いなくこのホテルに直行したじゃないか!
正直に言いなさい、いつ誰と来たんだ!」
由利「……言えない」
爽香「言えない!? 不倫ね!?」
由利「違う!」
爽香「じゃあ別れた元カノ!?」
由利「違うって!」
丹沢「じゃあアレだ! デリヘルだ!」
由利「勝手に決めるな!」
爽香「二人とも! 今日あたしに変なことしたらタダじゃおかないからね!
あたしはデリヘル嬢じゃないんだから!」
由利「誰がするか! 特訓のために17,000円払ったんだぞ!」
爽香「なら正直に言いなさいよ! 誰と来たの!?」
問い詰められた由利は、深々と溜め息をついた。
由利「……一言だけ言う。だが、絶対に他言無用だぞ」
爽香「いいわ、そこまで言うなら聞かない」
丹沢「そうだな、人の秘密を聞くと胃が痛くなるし」
由利「いや、聞いてくれ! 頼むから聞いてくれ!」
爽香・丹沢「……そこまで言うなら」
二人が耳を近づけると、由利は蚊の鳴くような小声で囁いた。
由利「……家屋調査」
爽香・丹沢「……は?」
由利「以前、税務課の固定資産税担当だった時、資産価値の調査でここに来たんだよ!」
爽香「……なぁんだ。つまんない」
丹沢「本当につまらん秘密だな」
由利「職務上知り得た秘密なんだから仕方ないだろ!」




