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6.よねんせい



 4月1日

 AM 5:45起床、ぐぅっと伸びをして布団を跳ね除ける、この体になってからというもの、寝起きの良さに関心させられるが、昨日は本を読んでて夜更かししてしまった。

 少しぼぅっとした頭で階段を降り一階へ、父が飲んでるコーヒーの香りが鼻をかすめる。


 「おはよう、ひな」


 「ひなちゃんおはよう」


 「おはよ」


 母が牛乳を入れてくれて、父のコーヒーを少しもらいコーヒー牛乳を作る。

 本当はコーヒーが大好きなのだが、9歳の体ではカフェインはそんなに多く摂取できない。

 前世のようにブラックコーヒーをガバガバ飲んで、カフェイン中毒にでもなったらシャレにならない。


 「ひなももう4年生かぁ、学校はどうや?」


 「楽しいで、友達もちょくちょく増えてきたし、でも転校生フィーバータイムは終了したわ」


 「ええこっちゃええこっちゃ、またお家連れてきーや」


 ちょうど母が朝ごはんを持ってきてくれたので席につく。


 「いただきまーす」


 「クラス替えどうなるやろね、次は一華ちゃんとも同じクラスなれたらいいねぇ」


 「大丈夫大丈夫、4、5、6は同じクラスやから」


 「ほんま仲良しやなぁ、クラス離れたら泣くんとちゃうか」


 それは無い、というかずっと同じクラスだと知っているので心配していない。

 いや、もしかして男女が入れ替わった事によって変化があるのだろうか?

 クラス替えはクジではなくバランスを見て学校が決めてるだろうし…

 巴や春樹と離れることもあり得るかも知れない。

 などと思っていると顔に出ていたらしい。


 「あら、この子今になって不安になってやるわ…大丈夫なんちゃうの?」


 「う、うん……大丈夫かなぁ?」


 「まぁ、隣のクラスなっても遊んだらええんちゃう?小学生なんていつでも遊べるんやらか」


 「えぇー!嫌やわ!せっかく仲良くなれてんから一緒がいい!!」


 「さっきまでクールぶってやったのに、ぷぷぷっ」


 「うっさいなぁ…ごちそうさま!!」


 食器を流しに持って行きその足で洗面所へ、髪にブラシをあててから、鏡を見ながらサイドに三つ編みを作っていく。


 「ほんまマメな子やな、誰に似たんよ?」


 「可愛くできたらテンション上がるやんか」


 「ふわぁ〜、おはよ〜」


 そのタイミングで姉の夕陽が起きてきて、寝ぼけ眼で朝食を食べ出した。

 自分の分が終わったので、今度は姉の髪を結っていく。


 「ちょっとゆうちゃん、頭揺らさんとって」


 「ふぁい」


 「どっちがお姉ちゃんやねんな」


 そこから身支度を済ませて持ち物確認、と言っても本日は始業式なので、待っていく物も少ない。


 「ほな、いってきまーす」

 

 「いってきますー」


 「はい、2人ともいってらっしゃい。気をつけてね」


 日向は春樹の家に寄って行くので、登校時間としては少し早めに家を出るが、夕陽はまだ眠いのか、隣で大きな欠伸をしていた。


 「ゆうちゃん無理しやんでええよ?まだ7時過ぎやで?」


 「ええのええの、ひなと一緒に行きたいし、こっち方面同級生おらんから」


 「……ゆうちゃん学校どう?」


 「楽しいで、友達も出来たし。今度家くるわ」


 日向は知っている、姉は積極的に友達を作るのが苦手で中学の頃から1人になる事が多くなっていく。

 高校に入るといよいよ周りと孤立して、結構寂しい高校時代を過ごしたのだ。

 2人で、交互に石を蹴りながら話していると春樹の家についた。


 「ほいじゃあ、また後でね」


 「ほいほい、いってきまーす」


 姉の背中を見送りながら、インターフォンを押してそのまま扉を開ける。


 「百合子さんおはようございます。ハルまだ寝てますかー?」


 「日向ちゃんおはよう。いつも有難うね。あの子まだベッドの中だわ。」


 春樹の家は父親が単身赴任で母親も働いているので、朝はバタバタしている。

 前世でも、毎朝春樹を起こしに来ていた事もあり、今世でもなんやかんやで起こしにきていた。

 春樹の部屋へ行き布団を勢いよく剥ぎ取る。


 「ハルー!起きやー!朝飯全部食うてまうで!!」


 「うがっ、うぅー、もう朝かよぉ」


 「お前また寝ながら漫画読んでたやろ、そんなんやから目ぇ悪なんねん」


 「…?そんなに視力悪くないけどなぁ」


 「これから目ぇ悪なんねん!」


 どうやらまだ春樹の視力は悪くなっていないようだ。

 そういえば春樹がメガネをかけだしたのは中学3年生になってからだったか…

 

 「ひなってさ、ちょこちょこ未来のこと言うよな。当たるから怖いんだけど。」


 「そら、ウチ未来から来たもん。未来人やで。」


 「この前は予知夢って言ってたけど…」


 「どうでもええねんそんな事!早よ起きいや!」


 腕を引っ張ってズルズルとベッドから引きずり出す。

 百合子さんはすでに家を出ており、朝食が机に置いてあった。

 2人で向かい合って座り、テレビをつける。

 日向からしたら貫禄があり、安定感のあるアナウンサーだった人が、新人としてデビューしていた。


 「なぁ、4年生やで、4年生」


 「そうだな」


 「いうてる間に、大人なってまうねんで」


 「想像つかないなぁ」


 「せやろなぁ、今のうちに、いっぱい遊ぼなぁ」


 「クラス、一緒だといいな」


 ゆったり時間が流れているような、心地よい2人のペースで、取り留めのない話しをする。

 今世では出会ってまだ半年程だが、お互い無理のない良い関係になっていた。

 


————————————



 (思った通り、4年は2組やったな)


 「ひなちゃん!一緒で良かったよぉ」


 「あっ!ともちゃん!いっちーも!」


 「いっちーですとも、おはようございます」


 予想通り、一華と巴は同じクラスだった。

 春樹も同じクラスなので、去年特に仲が良かったメンツが揃った。

 他のクラスメイトもとも挨拶を交わし、席順が書いてある紙を見る。

 新学年という事もあり席は五十音順で、日向たちは幸運なことに縦一列に並んでいた。


 「ちぇー、横一列が良かったなぁー」


 「まぁまぁ、こればっかりはしゃあないで。席替えに期待やな。」


 「ひーちゃん、教室のど真ん中ですね」


 「邪魔なんだけど!」


 3人で教壇のの前で喋っていると、いきなり強い口調で怒鳴られた。

 一華と巴はビクッと驚いた後、慌てて離れていった。

 髪を金髪に染め、やたらとデカい態度で歩くコイツは青葉健人あおばけんと

 

 (あぁ、そういやコイツも同じクラスやったなぁ…)


 「おぉ、すまんすまん、そんなやかましい言わんでも聞こえるがな」


 「はぁ?うぜぇんだけど。どけよ」


 「凄まな喋れへんのかお前は、避けて通ればええだけやろ」


 「黙れ!」


 青葉の複雑な家庭環境は少し知っている。

 結構酷いネグレクトの家庭で、前世では交友もそれなりにあったが、日向は両親を見た事がない。

 こういった性格になるのも、仕方ないのかもしれない。

 しかし、一華と巴のこともあり、売り言葉に買い言葉でつい挑発的な態度を取ってしった。

 それに苛立った青葉は、いきなり肩を押してきた。


 「はぁ?なんやねんお前、いきなり女の子にボディタッチとか、キショ過ぎるやろ」


 「どけって言ってんだろうが!」


 青葉は強引に日向を押し退けて自分の席に座った。

 さっきまでガヤガヤと賑わっていた教室が、しんと静まりかえってしまった。


 「あかんわアイツ、会話できてへんやん」


 「ひ、ひなちゃん気強すぎでしょぉ…肩、大丈夫?」


 「ひーちゃん…危ないですよ…心配になります…」


 「大丈夫大丈夫、ああいうのはウチが相手するから」


 それぞれの席に着いてしばらくすると、春樹が教室に入ってきて静まり返った教室を不思議がっていた。


 「どうした?なんかこのクラス暗くない?」


 「おーハル、そこの金髪が空気殺しよってん。デカい鳴き声やったで」


 「健人か……ひなもあんまり挑発すんなよ」


 「んなっ、ウチが悪いんかいな!」


 「違うって!不要な喧嘩しないでって言ってんの。ただでさえ口回るんだから」


 春樹に怒られてしまった。

 先に向こうから突っかかって来たのだし、2人も怖がっていたのだが…

 前世では春樹に怒られる経験はなかったが……そんなに悪いことをしただろうか?

 

 「ひーちゃん、一ノ瀬くんは心配してくれてるんですよ」


 「い、いや、でもアイツ、怒ってたで?ちょーっと、びっくりしたわ」


 4年生になって親しい友達と一緒になれたというのに、新しいクラスの雰囲気は良くないスタートを切ってしまった。



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