4.2度目の初登校
結局夏休みいっぱいは、春樹と遊び倒した。
共通のゲームを持ち寄って通信対戦をしたり、野山をかけまわったり。
そうこうしてると、あっという間に夏休みは終わってしまった。
懐かしきランドセルを背負い鏡の前に立つ、男の子っぽい服装にピンクのランドセルを背負っているせいで、少しアンバランスに見える。
小学生らしく見えるだろうか…?
(まさかランドセルがピンク色とはなぁ…ちょっと嫌かもしれん…)
「ゆうちゃん、ひなちゃん、忘れもん無い?」
「うん、大丈夫」
「ひな?先出てまうで」
「こらこら、お母さんも一緒に着いて行くねんで」
今日から学校、気持ち良い天気で転校初日にはピッタリだった。
勝手知ったる通学路だが、この世界では初となる登校は、緊張と期待で入り混じっていた。
転校初日に緊張するなど、これではまるで本当に子供みたいじゃないか。
「ひなちゃん、学校楽しみ?」
「うん…でも、ちょっと緊張もしてるかも」
「大丈夫、ひなちゃん友達すぐ出来るやろし」
「うん…」
日向は、自分から友達を作るのが少し苦手だった。
小さいコミュニティでは苦労しないのだが、ある程度の規模の集団になると受け身になってしまう。
中学、高校でも自発的に話しかけに行く事は無く、成り行きで友達となった者が殆どである。
ましてや、今世は女である。
どうやって友人になればいいんだろうか?
そもそも男女が曖昧な存在の自分に、ちゃんと友人ができるのだろうか?
大それた人生経験を立てたが上手く行くのだろうか?
不安に思っていると、隣を歩く母がギュッと手を握ってくれた。
「ひなちゃんやったら大丈夫」
そう言って、優しく手を引いてくれた。
信じてくれているのだ。
両親には、いっぱい心配をかけてしまった。
ましてや前世では、もしかしたら親より先に死んでしまったのかもしれない。
2人が大事にしてくれてる。
そう思うと、一生懸命生きたいと思える。
「ありがとう!友達2兆人作るわ!」
「いや、無理やろ」
端的なツッコミをもらいながら、まだまだ暑さの残る通学路を歩いていく。
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「それじゃあ、名前を呼んだら入ってきてね」
「よろしゅうよろしゅう」
担任の先生が朝のHRのため先に教室に入る。
ふぅーーっと深呼吸し、キリッとした顔を作る。
(よっしゃ!第一印象や!)
名前を呼ばれたので、気合を入れてガラッと扉を開ける。
教壇に向かって歩きつつ横目でクラスを見渡すと、どいつもこいつも知った顔ぶれだ。
これから中学校卒業まで6年弱付き合うことになる。
第一印象は目立ち過ぎず、暗過ぎず。
教壇まであと数歩といったその時、右足を左足にひっかけた。
「へぁっ?」
バーン!!と大きな音を立てて前のめりに倒れた。
次にランドセルが開いて教科書や夏休みの宿題があたりに散乱した。
しんと静まりかえる教室。
(終わった。帰って屁こいて寝よ。)
先生も声をかけ兼ねているこの空気の中、どんな顔をして立ち上がればいいのか考えてたところ、教室が笑いに包まれた。
先生が強めに注意するが、まるで収まる気配がない。
先生や近くの生徒たちに、ぶちまけた教科書類を拾うのを手伝ってもらい、真っ赤な顔をしながら涙目で自己紹介を終えた。
その後のHRの内容など、何も頭に入ってこなかった。
席は1番後ろの窓際とはならず、その1つ隣の席、両隣から生暖かい目で見られてる気がして両手で顔を覆った。
「いや、面白かったぞ」
春樹の声にぴくりと反応し、顔を隠したまま返事をする。
「うっさいわ、おぼえとけよ」
「顔、真っ赤じゃん」
「やかましい!貸したゲーム返せ!」
「ねぇねぇ!夏野さん何で一ノ瀬君のこと知ってるの?」
「えっ?あぁ…家が近所でなぁ、散歩してたらおったんよ」
「夏野さん関西弁カワイイね!」
「おーきにおーきに」
なんだかんだ、春樹が話題のキッカケになってくれたので、ゲームは貸したままにしておこう。
一気に話しかけてくることは無いが、様子を伺いつつ順番に皆んな話しかけてくる。
結局、始業式が始まるまで質問攻めは続いた。
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始業式と午前中の授業を終え、給食の時間になる。
子供に混じって小学校で授業を受けるという、大人になってからは出来ない経験をして、少し感動してしまった。
「ひなちゃん、一緒に食べよ!」
ガガガーッと机を寄せてきたのは、ハルの次に話しかけて来た女の子、柊巴ちゃんだ。
ひなたの1つ前の席で、授業中も何度も振り返ってはニコニコしていた。
そういえば、この子とは高校まで一緒だったが中学ぐらいから交流は少なかった。
やはり性別が違えば交友関係も変わってくるのだろう。
「ウチで良ければ、一緒に食べよか」
「ふふ、ひなちゃんの友達一番乗りだっ!あ、一ノ瀬君が最初か……じゃあ2番っ!」
「元気な子やなー」
その後、巴の友達数人も合流して給食を食べることになった。
しかしこんなに社交的な巴と、何故中学、高校では疎遠だったのだろうか……挨拶ぐらいは交わしそうなものだが……
午後からは2学期初日なので授業が無く、HRが終わるとそれぞれ帰り支度を始める。
「そっかー、ひなちゃんと帰る方向違うんだね……今日遊びに行っていい?」
「ともちゃん読書感想文やってないって言ってたやん……明日持ってこーへんかったら居残りさせられんで」
「うがー、そうだったー」
「宿題終わらせたらさ、また遊ぼ!ここら辺のこと、色々教えてくれんねやろ?」
「うん!遊ぶ!…あっ!」
2人で廊下に出て靴箱に向かっていると、巴が誰かを見つけて走り出した。
その人物の後ろ姿に既視感をおぼえた後、心臓がギュッと鷲掴みされたように苦しくなる。
「いっかちん!!」
巴が後ろ姿に声をかけるその人は、前世にて訃報が届いた、藤宮一華だった。
ひゅっと喉が鳴る。
つい先日決意を固めたばかりじゃないか……何を戸惑うことがあるのか、藤宮一華を守るなら、仲良くなることは有利に働くだろう。
巴の友達ならば、仲を取り持ってもらうのも良い。
小学2年生だぞ?第一印象さえ良ければ、後は簡単な………
仲良くする資格なんてあるのか?
「ひなちゃん!私の幼馴染……ど、どうしたの!?顔真っ青だよ!!」
「えっ、大丈夫ですか!?先生呼んできます!」
「うぶっ…ごめん、ともちゃん、気分、悪くて、帰るっ……」
そこからは通学路をひたすら走った。
校門を出る前ら巴が声を掛けてくれたようだが、あそこにあれ以上居られなかった。
なんで、忘れてたのだろう。
ふにゃって笑うやつだった。
正義感が強いやつだった。
皆んなから好かれるやつだった。
初対面の人でも心配出来るような優しいやつだった。
「おい!おいって!お前っ……足速すぎっ…だって……」
半分ほど下校したところで春樹に声をかけられた。
「ほら、靴!上靴のまま帰ってんぞ!」
「ハァ……ハァ……」
「おい、人の話し…」
「うっ、オエッエェェ!」
「うわっ、ひな!大丈夫か!?」
何故、一華のことを忘れていたのか?
自分が傷付かないように、思い出さないように蓋をしていたからだ。
「うぇっ…ごめん…靴、さんきゅ……」
「……大丈夫だって、ひな悪いことしてないだろ、謝らなくていいよ」
「……」
「……とりあえずさ、うちの家すぐそこだし、行こ?」
正直、優しくされることに後ろめたさを感じてしまう。
春樹には悪いが、1人になりたい。
「あれ、鍵かかってる。誰もいないのかな?ただいまー!ひな、俺の部屋行っといて、2階の右奥」
「あ、あの…やっぱりウチ、帰るわ……」
「えっ?なんで?一緒にゲームしようぜ」
「いや、今日は……」
「あ、じゃあお菓子食べよー」
先ほどまでの大人びた態度と打って変わって子供らしい提案に笑ってしまう。
気遣いはしてくれるのだが、励まし方がゲームとお菓子って…
「ふっ…ほな、ご馳走になってもええ…?」
「うん、一緒に食べよ」
バリバリとお菓子を食べる姿に毒気を抜かれてしまい、さっきまでの鬱々とした気分が少しだけ晴れてきた。
「それで、どうした?緊張してたとか?」
「ううん、なんて説明したらええんか…」
「柊と何かあったとか?」
「いや、ともちゃんは関係ないねん…えぇっとなぁ……」
「じゃあ藤宮?」
ビクッと体が反応する。
あの時、春樹も近くにいたのか、急変した態度を見て追いかけてきたのだろう。
「藤宮、良い奴だけどなぁ」
「分かってる、あの子が悪いんじゃないねん…でも……理由は言われへんわ…」
「えー?そっかぁ…そのうち教えくれよ?」
説明したところで、信じるわけがない。
約20年後からやってきて藤宮一華が自殺しないための計画を立てていました。ちなみに元男です。
今のところ、誰にもこの事を打ち明けるつもりはないが…
「まぁ、酒でも飲める歳になったらなぁ」
「ふふっ、何だそれ、大人になってもこうやって話してんの?」
「せやな、お前とはずぅっと一緒におるよ」
「……ふーん」
「あ、友達としてやで!何赤くなっとんねん!」
「いや!びっくりしただけだって!」
こいつになら、いつも一緒にいたこいつにならば、いつか話してみるのも面白いと思ってしまった。
はわわ、後書きって何書けばいいのはわわっ




