それぞれの思惑
メイに宣言したようにリオンは午後から顔を出した。
迎えた母と父は会って早々メイを説得してくれと、リオンに言う。
幼いリオンに言ったとしてもどうしようもないが、藁にもすがりたいのだろう。
まぁ、元凶ではあるけど。
そんな父と母から逃げるように、メイはリオンをローズガーデンに連れて行った。
「…先程はすみませんでした。今日は天気が良いので、外でお茶をしましょう。」
「…話してくれたんですね?」
「ええ…今は諦めてくれないですが、一応なんとか…」
発端はリオンだが、一応メイも結婚しない未来をなんとなく描いていたからよかったのかもしれない。
家同士の婚姻はしない、恋愛して婚姻すると宣言し、メイは一人娘なのでできない場合もしくは嫁に行くことを想定して養子を取ることを勧めた。
両親は納得していなかったが、最後は前の婚約で傷付いたアピールをして無理矢理押し通した。
一つ誤算があったのは、挽回しようと父が早速見合い話を持ってきたことだろうか。
「私が説明しましょうか?」
リオンがにこやかにそう言うが、メイはそれが波乱を呼ぶと知っている。
「私自身で何とかしますから、リオン様はお気になさらずに。最後にお見合いを一つをお断りすれば完璧ですわ。」
「お見合い?」
リオンの顔が歪む。
「本当にすぐにお断りしますし、大丈夫ですよ?」
「でも会うんですよね?今から説明…」
「いえ、結構です!」
「お見合いに付き添うのは…?」
「だめです。リオン様にももっとすべきことや予定があるはずでしょう。」
「…確かに明日から来週にかけてメイ様にお会い出来ないですけど…」
「私の噂はリオン様を堕落させてしまった悪女までも追加されてしまいますわ。リオン様、お見合いが終わればすぐ文を出しますから。」
「いや、夜になると思うけれど、会いに行きます。」
リオンもまた過保護気味だと思うメイであった。
私ってそんなに世間知らずかしら。
それから数日後、お見合いの日となった。
お見合いは断ると言っているにもかかわらず、両親から何か言われただろうメイドから丹念に身嗜みを整えられる。
わざわざ新しいドレスや靴を揃えられ、髪には花が咲き乱れていた。
そんな装飾品達に完璧不釣り合いな地味顔も、それに負けないようにと厚化粧がしてある。
自分じゃないみたい。
今まで身嗜みは整えてきたつもりだったが、美しく着飾る努力は足りなかったように思えた。
今となっては無駄なことだけれど。
両親のこのお見合いにかける熱量が伺える。
メイにはこの姿を見せたい人もいなければ、この姿を維持したいと言う気持ちもない。
最後の思い出作りだと思って両親たちの好きにさせた。
さぁ、いきましょう。
お見合い相手の待つ部屋のドアを開けた。
つつがなくありきたりな自己紹介等の話が終わり、そして『後は若い者同士で』という、ありきたりな展開になる。
相手の男性は父が選りすぐったこともあり、良い感じの人だった。
華美では無いけれど精悍な顔つきで、背も高く服を着ていてもわかるような筋肉質な身体をしている。
堂々としていて爽やかで物腰も柔らかい。
誠実な印象でどこから見ても好青年である。
領地運営に重きを置いく堅実な家柄であり長男であるということで、父親の一人娘を嫁に出す覚悟が見える。
「申し訳ないのですが、私、誰かと婚約するつもりはないのです。」
メイは男性に深々と頭を下げる。
「それは…前の婚約の件があったからですか?」
お見合い相手のエルガーという男性もまた、事前にメイのことを知っていたのだろう。
「ではなくて…婚約破棄されて気づいたことがあったのです。それまで私は婚約の為だけに生きていました。しかし、それではダメだと、もっと大切なことがあるのではないかと気づいたのです。きっと、以前の私でしたら喜んでお受けしていたと思います。堅実で誠実、私の求めていた信頼を積み重ねてゆける人、エルガー様そのものですもの。」
きっと私は惜しいことをしているのかもしれない。
でも…
「お父様のことですから、無理を承知で今日のことをお願いしたのでしょう。エルガー様の領地運営のお話はとても楽しかったし、興味深かったです。きっと私にはこういった沢山の知識を高めていくことがこれからの夢なのです。」
メイがひとしきり話すと、エルガーが考え込む。
「…それなら婚約、結婚してからでも学べるのでは?」




