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交渉

リオンが力強くメイの手首を握った。


「痛っ…」


あまりの強さにメイの声が漏れる。


「五年も待てばメイ様は他の人と結婚してしまっています!そんなの絶対許しません。他の人なんて絶対に渡しません。」


リオンの握った手は強いまま、メイに近づいていくあまりの気迫にメイは簡単にソファに押し倒されてしまった。逃げ場を失ったメイに、リオンがまた距離を詰めていく。


「わかりました。私が卑怯でしたわ。」


メイが慌てて降参する。


「メイ様、それで逃げられると思いますか?」


リオンは握ったメイの指先にキスをする。メイの全身の神経にピリッとしたものが走った。メイなんかよりリオンの方が余程大人でメイは翻弄されている。


「私、リオン様が大人になるまで待ちますから!」

「本当に?」


リオンがメイの指を咥える。


指っ!指が!食べられてる!


メイの頭の中はパニックである。


「元々行かず後家覚悟ですから!また婚約して破棄されるのも嫌ですし!」


咄嗟に叫ぶと、リオンが動きを止めた。


「わかりました。私はかの元婚約者のような事は決してしませんが、メイ様が傷付くのであれば婚約は辞めましょう。」


メイは胸を撫で下ろした。


「あの…もうそろそろ離して…」


リオンの切なそうな顔にメイの心がキュッと締めつけられた。


「安心してください、リオン様。私はどこにも行きませんから。リオン様くらいですよ?私が結婚できるとお思いなのは。」

「メイ様…」


リオンがメイの首元に頭を埋める。

さっきより密着度は高いが、何故か安心した。

繋いだ手はそのままに、もう片方の手でリオン背中にさする。


「リオン様、私そろそろお暇しなければ…」

「…泊まっていかないの?」


リオンが上半身を起き上がらせ、先程のようにメイを見下ろした。

やはり、リオンの顔が目の前にある方が緊張する。


「もう!リオン様ったら!今日は帰ってからお父様とお母様に行かず後家宣言しますので、リオン様は大人しく待っていてくださいませ!」

「…わかりました。家までお送りします。」


リオンは少し笑って、メイの手を引いて起き上がらせてくれた。


「リオン?」


リオンとメイが話しながら廊下を歩いていると、目の覚めるような美しい人がリオンの名を呼んだ。

リオンと同じ瞳と髪色。

しかし、髪質はリオンと違い真っ直ぐで、さながら背の高い男装の麗人ようである。


「兄上…」


リオンがバツが悪そうに呟いた。


やっぱりこの方がりお兄様のシオン様なのね。


リオンが天使ならば、シオンは神話な世界に出てくる美の神のようであり、メイも思わず息をのんだ。


「ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。初にお目にかかります、オリエッタ家の娘、メイと申します。リオン様には大変良くしていただいております。」

「メイ様…」


メイがすかさず挨拶をし、シオンがメイの名前を呼ぶ。

その声さえも美しかった。


「こちらこそ、ご挨拶が遅れました、クロスフォード家長男でリオンの兄のシオンと申します。リオンは貴女の事を大変慕っているようですね。これからもリオンのことをよろしくお願いします。」


それまでは近寄りがたいとも思えるような美しさだったが、シオンが柔らかくメイに笑顔を見せると慈愛に満ちたような顔になった。

後光が差しているかのように眩しくてメイは目の前に手をかざす。


この兄弟は…


「メイ様!」


リオンがメイの手を握る。


「こちらこそよろしくお願いします。また改めてご挨拶申し上げます。それでは失礼します。」


リオンに手を引かれ、メイはシオンの前を後にした。


「リオン様、私、何かしでかしてしまいましたか?」


メイが様子の違うリオンに声を掛ける。


「メイ様は兄上のことを好きになってしまいますか?」


リオンがポツリという。


「それは、どういう意味ですか?私がシオン様のことを?」


メイはよく分からず目をまん丸にした。


「兄上に会うと男女問わずみんな兄上に恋をするんです。」

「男女問わず?それは凄い!」


リオンが悩んでいるにもかかわらず、メイは飄々としていた。


「リオン様、送ってくださいませんか?馬車に乗りましょう?」


今度はメイがリオンの手を引いた。


「リオン様も知っているように、私、慎重派なのですわ。あのやりとりで恋に落ちたりとかできません。仲間はずれは良くないかもしれないですけど、シオン様を含めてお話するのはリオン様が落ちついたらにしましょう。」

「…それなら、一生禁止で…」


リオンの警戒を溶かすように、メイが笑いかける。

リオンはまだまだご機嫌斜めのようだ。


「でも、リオン様には親近感湧きましたわ。私も怖がりなのです。似た者同士、私たち仲良くできるかと思いませんか?」

「…怖がり扱いは嫌ですが、メイ様とお揃いならばよいです。」


リオンの顔が少しゆるんだ。


「それでは、リオン様、お付き合いいただきありがとうございました。」

「今日は諦めますが、また明日伺います。」


リオンが去っていくのをメイが見送る。


さて、と。


メイにはもう一つ仕事ができてしまった。

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