何もしてませんからっ!
要望により
首元にかかる風がくすぐったくて、メイは目を覚ました。
んっ?
風の送り主を見ようと横を向くと、柔らかなブラシの様なものがメイの鼻先をくすぐった。
えっ?
即座に上半身を起こして、現場を把握する。
リオン様が隣にいるっー!!!
メイは見覚えのないパジャマを着ていて、隣にはリオンが一緒のベッドに寝ている。
「んっ」
リオンが寝返りをすると、何も着ていない上半身が露わになった。
しかも、半裸っー!
…私は幼気な少年に何をしたのだろうか…生娘の私が何かできるわけ…もしかしたら生まれつきの痴…
「メイ様、寒いです…」
まどろむリオンに、メイはまたベッドに寝転んだ。
冷静に、冷静に、考えろ私。昨日は確か…楽しく話して…
「楽しい時間をありがとうございます。」
「こちらこそ。」
お茶を飲み干し、メイはリオンにお礼を言った。
リオンの話は兄弟のいない私には新鮮な感じがしたし、リオンも私の失敗話に可愛く笑ってくれた。多分、そこそこ仲良くなれた手応えはあった。
「リオン様、頑張ってくださいね。いってらっしゃいませ。」
そう言って手を振ってリオンを見送った後、メイは片付けをする。そして、一息ついてから帰ろうと思って…寝てしまったのだ。
それならばドレス姿のままソフィアで寝ていたはずである。しかし、何かがあれば体に違和感のあるはずだが、それも全くない。
何もなくてよかっ…て良くない!少年と同衾!しかも朝帰り!
「メイ様起きたの?」
メイは寝起きのリオンと目が合う。
「私、こんなフシダラな…」
「大丈夫です、メイ様。メイ様はしっかり屋敷に送り届けますから。」
リオンが天使の笑顔をメイに向けるが、全然大丈夫ではない。
「朝ごはん、一緒に食べましょう。」
呑気なリオンに心でツッコミを入れるメイだが、加害者故にリオンのペースに従いっぱなしだった。
馬車に乗ってメイが屋敷に着く頃には、太陽は高く上がっていた。
説明すると言ってリオンは付いてきたが、混乱の予感しかなかった。
お父様、お母様、親不孝な娘をお許しください。
心にそう叫んで、馬車を降りた。
屋敷に入ると入り口の前で心配そうに立っている両親がいた。
「メイ…よかった…」
「何かあったのかと心配したのよ。」
両親が口々にそう言う。
今までのメイの日頃の行いなのか、事件事故方向で心配してくれていたようだ。
「ごめんなさい、お父様、お母様。」
「ところでそちらの方は?」
両親がメイの隣に立つ少年、リオンを見つめる。
「ご挨拶が遅れまして大変申し訳ありません。私、クロスフォード家次男のリオンと申します。この度はメイ様をこのような時間に送り届けることになってしまい、深く謝罪いたします。」
リオンが畏まってメイの両親に話している。
あれ?雲行き怪しくない?
「つきましては、きっちりと責任を取り、メイ様を婚約者として迎え…」
「って違うから!」
メイは両親とリオンの間に入り込み、説明をする。
「リオン様純粋で少し勘違いしていらっしゃるみたい!私は何もないから!調べてもらっても構わないし!うたた寝してしまったの!例えば小さい頃ルーカス様と絵本読みながら寝ちゃったみたいな!本当に何にもないからっ!」
スラスラと早口で言い訳を並べた後、恐る恐る両親の顔を見た。
「そうなの。そうよね。お母さん、少しびっくりしてしまったわ。でもダメよ、うたた寝なんて!行儀の悪い!」
「はい、お母様。」
「何よりメイが無事でよかった。」
メイは父に抱き締められる。
言い訳にしろ、リオンを勘違い呼ばわりしてしまったのは良くないと、リオンの方を見てみる。リオンは天使のような優しい笑顔をしたままだった。
良かった…
「リオン様、はしたない真似をしてしまい申し訳ありません。リオン様の優しいお心遣い、いたく感謝申し上げますわ。ですが、今回のことは自分でしでかしたこと。リオン様は何も責任を感じられないでください。」
メイはリオンの両手を握る。
「…そうですね、今日のところは引きます。またご一緒にお茶を飲みたいのですが、お誘いしても良いでしょうか?」
「ええ、私はある事情より暇しておりますので、嬉しい限りですわ。」
「では、明後日はいかがですか?」
「はい、楽しみにしております。」
なんだか丸く収まり良かったとメイは肩の荷を下ろした。
その瞬間、リオンが繋いでいた手を力強く引き、メイは前のめりになる。
「婚約のこと考えていてくださいね。」
リオンの言葉と吐息がメイの耳に襲いかかり、すぐにメイの顔が熱く熱を帯びた。
「それでは、お邪魔いたしました。メイ様また明後日お待ちしております。」
レオンはまた少年らしく笑って、屋敷を去っていった。
「さっきの…」
「えっ?どうかしたの?」
どうやら父とに母は聞こえなかったみたいだ。
ならきっと聞き間違えだわ。
メイはそう思って、真っ赤になった顔を冷ました。




