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時間潰し

私は道端のたんぽぽ…とはいかないか。


壁に生える野草こと、メイは壁側に立って時間を潰していた。

私の噂の囁き声はディル様とのダンスでより一層大きくなってしまっていた。最初の男の人と何かあるよりは遥かにマシだけれども。


やっと1時間かぁ。1時間では楽しんだに入らないですよねー。


1時間と言えば、婚約していた当時に友人たちと話していた時間とかわらない。あの時は一瞬だったに、今日はとてつもなく長く感じる。


せめて、あと1時間。


一匹居ると何匹も居るアレのように、失恋してチョロそうな令嬢との一晩のアバンチュールを狙う輩はまだまだ居るみたいだ。なんとなくだが、気持ち悪くて目が合う輩が1人いや、2人いる。婚約者以外の人と複数回踊ることはできないし、もうディルに助けを求めることはできない。


やっぱり戦いだ。


準備をしていた時に思っていたことは本当だったらしい。


「お嬢様、お疲れのようですね?」


斜め上の遠くを眺めていたので、声の主は見えない。少し下を向いてようやく声の人主を見つけた。そこには絵画に出てくる天使のような美しい少年がいた。


「ひえっ大丈夫れす!」


一瞬、天国に行ってしまったのかと考えて慌ててしまい、声が裏返る。天使が紡ぐ黄金の糸のようなブロンドでフワフワの髪に、海を閉じ込めた宝石の様な瞳。

画家がこの少年に出会えたなら、いくつもの作品が出来上がるだろう。

メイは胸に手を当て心を落ち着かせた。

少年はメイよりも少し背が低く、まだ社交界に出るような年頃ではない様だ。


「この屋敷の方?」


メイが尋ねる。


「はい。クロスフォード家次男、リオンといいます。よかったら、休憩室まで案内します。」


少年はメイの手を引いて、少し強引にメイン会場を後にした。


「…休憩室は何処も使用中ですね。」


リオンは少年らしく無邪気に休憩室ドアを開けようとするが、その度にメイが『声が聞こえてきますわ』と静止した。


優しく無邪気で純粋なリオン様にはショッキングするぎるもの。


17歳のメイだって、あまり得意でないので少し声が聞こえてきただけで耳が真っ赤になってしまった。


「うーん…どうしよう。」

「リオン様、どうかお気になさらずに。」

「あ、そうだ!」


リオンが思いついた様にまたメイの手を引いて、廊下の奥の方へ進んで行った。


「ここなら静かでゆっくりできますよ。」

「此処は…?」

「私の部屋です。」

「えっ、そんな…悪いですわっ。」

「気にしないでください。後で様子を見に伺いますね。それでは…」


ホールに戻ろうとするリオンの手をメイが両手で握って、引き止める。


「お茶を飲みたいのですが、お付き合いしていただけませんか?」

「はい、いいですよ。」


リオンはメイの提案に快く返事をして、メイドにお茶の準備をたのんだ。


「すみません、引き止めてしまって。」

「いえ、大丈夫です。」

「なんとなく、リオン様もお疲れのようでしたから。」

「そんなこと…」

「壁側に立っていると、よく見えるのですよ。夜会を滞りなく進む様に頑張っている、綺麗なブロンドの髪とか。」


メイが微笑む。


「リオン様、お茶をお持ちいたしました。」

「ありがとうございます。私が後は入れますので、大丈夫ですわ。」


メイはメイドが持ってきたトレーを受け取り、お茶の準備をする。再び二人っきりになった部屋に、紅茶とクッキーのいい匂いが広がる。


「私に声をかけてくださったのも、そうでしょう?こんなに美しい方とは思いもよらなかったですけど。」

「いえいえ、お兄様には遠く及びませんから…」

「お兄様は確かシオン様でしたよね?私、まだ遠目でしかお会いしたことなくて…しかし端正なお顔立ちだということは聞いておりますが…」

「きっと、会えばわかります。」

「ふふ…どうかしら?リオン様はお顔立ちもそうですが、私を助けてくださった格好良い方ですからね。大きくなったらもっと女性におモテになるのではないかしら。」


リオンの少し照れたりする顔も可愛らしくて、メイはホッとする。


今日はディル様とリオン様が居なかったら、余計男性不信になるところだったわ。


温かい紅茶と優しい味のクッキーが、メイの心をさらに解きほぐしてくれる。


「リオン様が居てくださってよかったわ…」

「私もメイ様とお話しできてよかっです。」

「あ、私の名前…」

「すみません、お噂で…」

「謝らないで下さい。噂を聞かないでおく方が無理ですもの。」

「でも!貞淑な方だと…」

「そして、見るも無残に捨てられた人間ですわ。」

「…」

「笑って下さいまし。私、不幸では無いのです。リオン様とこうやってお話しできたのですから。楽しくお話しをして私を幸せにしていただけませんか?」

「…はい。私でよければ。いくらでも。」

「ふふ…嬉しい。幸せですわ。」

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