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夜会へ行く理由

地味な野草こと、メイ・オリエッタは夜会の壁にひっそりと咲いて…いや、生えていた。本当はまだ行くつもりもなったパーティにメイがいるのには理由がある。



その日、ルーカスは宣言通り何もないのにメイの屋敷を訪ねてきた。両親も含めて午後のお茶会を開く。当たり障りのない会話を楽しみ、ひと段落したのち、その話題はやってきた。


「…メイにはすまないことをしたと思っているんだ。」


父が口火を切る。家族内でずっと触れては来なかった話題だ。腫れ物のようなメイにルーカスという緩衝材を期待して今ごろになって話したのだろう。

しかし、メイはアッサリとしたものだった。


「お父様が何かしまして?」

「しかし、もう少し見る目があれば…」

「ふふ…私ももう少し見る目がありましたら、お父様に進言して破棄しておりましたわ。」


メイはイタズラに笑うが、お父様の眉は下がったままで、お母様も少し悲しそうに目を伏せている。


強がっていると思われているのかしら?


今日届いていた破棄するはずの手紙を取り出す。


「実は今日、パーティーに行こうと思ってますの。今まで良い子にしていたので、少しぐら良いでしょう?お母様。」

「…ええ。」

「花の命は短いと言いますし、若いうちに今までできなかったことをやりたいの。それに結婚して苦しむより良かったと思っているの。」

「メイ…」


メイはお母様に近づき跪くと両手をそっと握った。


「それはちょっぴり悲しかったですけれど、不幸ではないのですわ。噂は絶えないかもしれないですが、せめてお母様、お父様には私の未来を不幸だと決めつけないでいただきたいの…」


メイはお母様の目をしっかり見て、微笑んだ。


「それに、ルーカス様も!」


母の対面に座っていたルーカスにメイが振り返る。


「せっかく、レッスンではないのだから、幼き頃のように庭に遊びに行きましょう!」


メイは少女のように、ルーカスの腕を引いて部屋を出て行く。

もう、家族を悲しめる話題が出てこないようにと。


「ルーカス様!昔、薔薇が植えたとお伝えしておりましたが、もう立派なローズガーデンになっておりますのよ!」


メイが丹精込めて世話をしている薔薇をルーカスに見せた。ローズガーデンのある場所は幼い頃、ルーカスと遊んでいた場所だ。


「随分と様変わりしましたね。」

「ふふ…でも、一緒に乗ったブランコはまだありますの。」


薔薇のアーチをくぐり、四方を薔薇で囲まれた庭は、メイの自慢の庭だ。


「とても綺麗だね。」

「ルーカス様、婚約者様へのお土産にいかがですか?」


メイはカゴからばさみを取り出すと、自慢の薔薇を剪定し始めた。


「愛を伝えるには紅い薔薇ですが、ルーカス様の婚約者の方は可愛らしい方でしたよね。こちらのピンクの薔薇なんてどうでしょうか?」


丸く小ぶりな花が沢山付いている薔薇をメイはルーカスに見せた。


「うん、あの方らしい薔薇だね。」

「でしょう?」


メイはその薔薇を三本ほど切ると、丁寧に棘を取り除き、リボンでまとめて可愛らしいブーケを作り上げた。


「ルーカス様、どうぞ。」

「ありがとう、メイ。気を遣わせてしまったね。」

「そんなことありませんわ。ルーカス様が婚約者様を大切にしてくださると、私も慰められます。」


メイはルーカスに満面の笑みを見せた。


「ですから、婚約者も居らぬ未婚女性の顔を見に訪ねるのは良くないと思いますの。」

「メイ…」

「ふふ…本当にルーカス様がお兄様だったら良かったのに。」


メイは最後のレッスンとは違って、最後までルーカスを見送った。


そして、宣言してしまった夜会へ向かう準備に取り掛かる。鏡台の前に座り、深呼吸をした。


戦いに行くみたいだ


とメイは思った。

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