第5話 あなたとのキスを数えたら
次のデートはドライブデートだった。
彼は小さな赤い車――旧Miniを借りてきた。
「かわいい車ね」
「少し揺れるけど、いい面もあるんだ。助手席との距離がすごく近い」
乗ってみると確かに運転席との距離は近かった。手を伸ばせば反対側の肩まで届きそうだった。
私は彼の顔が近くにあるのを見て、さらに顔を近づけた。
彼は少し驚いたが、顔を私に向けた。
キスをした。
前回のデートではあんなに出来なかったキスが、出発前にもう出来てしまった。
「前回のデートもドライブにすればよかった」
「でも前回も楽しかったわ」
前回はファーストキスをするつもりで気負っていたが、結局、最後に頬にキスしただけで終わった。
それでもデートは、ずーっとドキドキして楽しかった。
「今日のミッションは何?」
「今日はもっと距離を縮めたい。僕のことを『ナツ』とよんでくれないかな?」
「じゃあ、私のことを『ナツ』と呼んでね。ナツさん」
「わかったよ、ナツ」
「あと、今日何回キスしたかカウントしよう!まずは一回目だね」
「二回目よ、ナツさん」
私は彼ともう一度キスをした。
私たちはローズガーデンに向かった。そんなに遠くはない。1時間程度でつくだろう。
車は少し揺れた。揺れるたびに彼が「ごめん」と言った。
運転はあまりうまくはないが、乗っている人を気遣う運転だった。
赤い旧Miniは、小さいけれど目立つ車だ。交差点で止まるたびに歩行者が見ていた。
私は少し恥ずかしくなった。
「この車、目立ちますね」
「僕は漫画で見てからずっと、この車に女の子を載せてドライブしたかったんだ! 今日、夢が叶ったんだよ」
「……シティハンターですか?」
「リョウは男の理想だよ」
「私、シティハンターに文句があるんです。カオリの胸は小さい設定なのに大きいんですよ。漫画で見ても」
「確かにアニメで見るともっと大きいよね」
「ナツさんは大きい方がいいですか?」
「小さい胸を隠そうとする仕草がすきなんだ。大きさじゃなくて。君のようにね」
わたしは思わず胸を押さえた。
「……ばか」
ローズガーデンの駐車場に着くと三回目のキスをした。
ローズガーデンのバラは綺麗だった。二人で写真を撮り合ったりした。
人波が途絶えた瞬間があれば、そこでキスをした。
「バラと言えば、男×男の娘はバラかな?」
「女の子×男の娘は百合よ。私の知り合いの女の子は、男の娘は女の子と思って付き合っていたわ」
「じゃあ、男×男の娘はどノーマルなんだね。よかった」
「ナツさんが男の娘好きでも振り向かせて見せるわ。少なくとも胸は勝ってるし」
彼は私の胸をジーっと見た。
私は恥ずかしくて胸を腕で隠した。
「その仕草がすきなんだ!」
ローズガーデンの帰りに中華街に寄って食事をした。
こういうお店もランチ以外はひとりで来れなかった。
二人でいるのはやっぱり楽しい。
彼の舌は「オコチャマ」で辛いのが苦手だと分かったことも収穫だった。
彼は私のマンションまで送ってくれた。
私は意を決して言った。
「ナツさん、上がっていきませんか?」
「……エッチは五回目のデートと決めているんだ」
(えー断るの? せっかく決心して言ったのに……)
「最初の出会いを一回目とカウントすれば今日で五回目ですよ」
「あの日はノーカウントだよ。それに次回会った時に『そうなる』と考えてごらん」
私は少し考えた。
――彼と『する』ために会う……
「ドキドキしますね」
「そう、ドキドキするんだよ。これから次に会うまでずっと!」
私たちは見つめ合ってキスをした。今日、十回目のキスだった。
(次回会うときも勝負下着、穿かないと……)




