第2話 初デートは中学生よりましな程度?
私は一旦自宅に戻り、もう一度シャワーを浴びて着替えた。
デートに着ていく服がない。押し入れから昔の服を引っぱり出して探した。昔から体形があまり変わっていないのが救いだった。胸のサイズも変わっていないが……
なんとか無難な服を見つけた。スキニーのジーンズにキャミソール、上に白いワイシャツを着た。ボタンは3つ外してキャミソールが見える。これで胸があれば完ぺきだった。
(初めてのデートはあまり派手でない方がいいよね。お化粧も)
高校生の頃の初デートを思い出した。あの時もどんな格好をすればよいかわからなかった。
私は待ち合わせ時間ぴったりに駅に向かった。
社会人として時間厳守は当然だ。
本当は少し前に着いて彼が来るかどうか見ていた。彼はスリムジーンズに白いシャツを着ていた。私とおそろいだった。
(次回からは服装も打合せして決めよう……)
彼の前に立った。少し恥ずかしかった。
「僕とおそろいだね。よく似合うよ」
私たちは笑った。
「どこへ行く?」
「その前に、手をつなぎましょう。リハビリなので」
私たちは手をつないだ。
目の前をカップルが通り過ぎた。
手は恋人繋ぎだった。
私たちはそれを凝視すると、私たちも自然に恋人繋ぎに変えた。
ドキドキした。
――私たちは小学生カップルか!
「ドキドキしますね。ナツミさん。昨夜は全部を見てるのに……」
「あんまり言わないで。恥ずかしいわ」
昨夜のことを思い出した。見ているどころか、いろいろなところを触り合っていた。
「一応デートのプランを考えてきました」
①街に行って、映画を見て食事する
②近くの自然公園でピクニックデート
③ナツミさんの趣味の古刹巡り
「今、あじさい寺が満開できれいだそうですよ」
私は彼が私のためにいろいろ考えてくれたことがうれしかった。
「全部! と言いたいけど映画はいつでも行けるし、ピクニックはちゃんと準備していきたいわ。あじさい寺は何度か行ったことがあるけど、一人だった。だれかと一緒に行きたいと思っていたの」
「じゃあ、あじさい寺に行きましょう!あちらにバス停があります」
バスの中は少し混んでいた。
バスが揺れるたびに肩と肩がぶつかり、その都度見つめ合って笑った。
あじさい寺はすごく綺麗だった。山の斜面を利用したあじさい庭園で白やピンク、青紫、赤紫の花が咲いていた。
私たちは何度もスマホで写真を撮った。
近くで写真を撮っていた高校生くらいの女の子二人組にお願いして、あじさいの花をバックにツーショット写真も撮った。
お礼に彼女たちのツーショット写真も撮ってあげた。
カメラを返すときに女の子のひとりに言った。
「うまくやりなさいね!」
女の子は真っ赤になって、『ありがとう』と言った。
「彼女たちは友達じゃなくて恋人同士だわ。私、ちょっと『腐っている』からわかるの」
「僕も、そうだと思った。僕もちょっと『腐っている』かも……」
私たちはまた笑い合った。
「僕は男の娘まではイケるな。男の子は想像するだけかな、現実は……やってみないと分からないね」
「私も男の娘は大丈夫よ。女の子もたぶん大丈夫。やったことないけど」
「昨夜言っていた、パンツを履いていたからやってないっていうやつね!」
「そう! 私はまだ女の子バージンよ」
あじさいの小道の中で、少し人通りが絶えた。私は彼に訊いてみた。
「ここでキスします? リハビリに」
「キスは三回目のデートと決めているんだ。リハビリに」
「昨夜、あんなにキスをしたのに?」
「昨夜のことは忘れてください! それに今、すごくドキドキしているんだ。このドキドキをもっと楽しみたい!」
「そうね、私もドキドキしているわ。中学生みたいに」
私はつないだ手が汗でしっとりとしているのを感じていた。
私たちは本堂に行ってお参りをした。手を合わせて彼に聞こえるようにつぶやいた
「リハビリがうまくいきますように」
彼は笑って私の真似をした。
「ナツミとのリハビリがうまくいきますように!」
私たちはバスで町に戻り、少しおしゃれな洋食屋さんで夕食を取った。
彼の行きつけらしい。
「いつもはあのカウンターで食事しているんだ。でも今日はこちらのテーブルで食事できてうれしいよ」
ウェイトレスのおばさんが食事を運んできた。
「あら、今日はカワイイ彼女をつれているのね」
私はカワイイと言われて赤くなった。
「からかわないでね、おねえさん。僕の大切な人だから」
私はますます赤くなった。
「明日はどうします? 二回目のデート」
「さては早く三回目のデートに行きたいんですね。わかりました。明日もデートしましょう!」
その日は彼とSNSのアカウントを交換し、私たちは別れた。
夜、彼からメッセージが来た。
『楽しかったよ。ありがとう』――
私はたっぷりと時間をかけて返事をした。
――『私も楽しかった! 明日も楽しみ!』
私はずっとつないでいた手のひらを胸にあてて眠りについた。股間にあてるのはさすがにやめた。




