第1話 出会いは酔っぱらってあまり覚えていない
土曜日の朝、起きるとラブホテルだった。
二日酔いで頭痛がした。
誰かの腕枕だった。
(やってしまったかな? でも何年ぶりだろう……)
私は自分の体を確認した。ブラもパンティもつけていなかった。アソコに手を当てる。大丈夫そうだった。
(よかった!やっていない……いやよかったのか?)
隣で寝ている男を見た。少しカッコイイかもしれない。私にしては上出来だ。年齢は……私より5歳くらい上かな?
男の目が覚めた。
「おはよう」
「おはようございます……」
「昨夜はよかったよ。覚えている?」
「いえ……私たちやってませんよね?」
男は少し笑った。優しそうな目だった。
「実は致す前に僕のがダウンしたんだ。できなかったよ。安心して」
「そうなんですか……残念」
私はだんだん思い出してきた。
立ち飲み屋で一人で飲んでいて隣にいた彼と意気投合した。
男の娘×男はBLになるかどうかとか、パンツを履いた百合セックスがセックスに当たるかどうかとか、たわいもない話だった。
その後、お互いに『セカンドバージンだ』と告白し、『セカンドバージンを卒業しよう』と言ってホテルに入ったのだった。
「シャワーを浴びてくるわ」
私はそう言って、胸を隠しながらベッドの周りに散らばったブラやパンティ、服を拾い、シャワー室に向かった。
軽くシャワーを浴びて着替えると、彼はもう服を着ていた。
「君にお願いがあるんだ」
「何でしょう」
彼はすごく真剣な顔をしていた。
「僕は恋愛のリハビリをしたいと思っているんだ」
「?」
「僕に付き合ってくれないかな?」
私は少し考えた。彼は優しそうだ。しかもわりと『いい男』だ。
「私で良ければ……私もリハビリしたいと思ってました。ちゃんとした恋愛の」
彼の顔が一気に明るくなった。
「もし、今日、時間があればデートしてくれませんか?」
「ええ、喜んで」
「ああ、自己紹介がまだだったね。一晩一緒に過ごしたのに」
「あら、忘れてましたね。ごめんなさい」
私たちは笑いながら自己紹介をした。
「僕はナツキといいます。山本ナツキです」
「私はナツミです。五十嵐ナツミです」
「ナツキとナツミか、いい偶然だね」
「そうですね、ナツキさん」
私たちは一旦別れ、午後、駅で待ち合わせてデートすることになった。
――いい方向に進みますように……
出会いはアレだが、最後のチャンスかもしれないと思った。私は祈る気持ちだった。




