おまけ(作中作)――君は待っていた。あのバス停で
このお話は第3章1話で、登場人物「カオリ」が書いた『小説』(作中作)――『ちょっとセツナイお話』を形にしてみたものです。
私は存在しない。
でも彼女――カオリはそんな私をバス停で待っている。今日もまた……
そのバス停はバスはほとんど停まらない。止まってもただ駐車しているだけだ。路線維持のため週一回走っているバスのためのバス停だった。
そのバス停でカオリはスマホを取り出し、web小説――恋愛小説を読んでいた。
口元は少し微笑んでいた。
周りを多くの人が通り過ぎる。ほとんど気にも留めてないが、何人かは『何故?』と言った顔をしていた。
このバス停のある駅は『あの人』の小説の舞台だ。
このバス停の存在は『あの人』もきっと知っているだろう。
小説を読み終えたカオリは今度は感想を書き始めた。
カオリはこれまでも感想を送っていた。
『素敵なお話でした。ドキドキしました。キュンキュンするってこういうことなんですね!』
なんとあの人――作者の先生から返事が届いていた。
『読んでくれてありがとう。私も君に読まれてドキドキしているよ!』
それからカオリは投稿される度、感想を送っていた。
『素敵です。私も主人公のような恋をしたい』
『私もペアルックでデートしたい』
『こんな素敵なファーストキスをしてみたい』
……
今日は小説の最終話が投稿されていた。
カオリは感想を書いていた。
『私も先生のような物語を書きたいと思って小説を投稿しました。読んでください』
タイトルとリンク先も書いた。
それは存在しない恋人を待つ、ちょっと悲しいお話だった。
そのメッセージを送るボタンをタップしようとする指先が少し震えていた。
私は彼女の前に出て大きくうなずいた。
それからカオリは毎日バス停に行った。何かを期待しながら……
私は彼女に付き合って一緒に待っていた。
足音が近づいてきた。
彼女がふと見上げた。
彼女とおそろいのスキニーのジーンズに白いシャツが輝いていた。
そこには存在しないはずの私が立っていた。
「……カオリさん?」
私は存在しなくなった。
カオリが、なぜ女性である私と『恋愛のリハビリ』をすることに向かって行ったのか、動機づけになるお話になればいいなと思っています。
皆さんはどう思いますか?
でもこれ、それを知らないで読むとホラーに……
さて、次回がグランドフィナーレです。
あの第1章6話で『……中略……』された内容を書き直しました。
お楽しみに!!




