第5話 彼女とのキスを数えたら……
四回目のデートはドライブデートだ。これも小説に書いた通りだ。
(残念だけど、これが最後のデートね。五回目はヤッちゃうことになるから。あとは良いお友達として……)
私は腐れ縁の男から車を借りた。赤い旧Miniだ。
その男からこの車のことはいろいろ聞いている。その男もセカンドバージンだが、オッパイ星人のそいつには私はただの友達としか映っていない。
一度後部座席に乗ってやったが、こいつは時々振り返って、私の足ばかり見ていた。スケベな奴だ。
「先生、本当にこの車に乗ってるのね」
「実は、数少ない友人に借りたのよ。そいつは一度女の子を助手席に乗せてドライブデートするまで手放さないって言ってたわ。だからそいつはいつまでもこの車ね」
彼女のためにドアを開けてあげた。旧Miniはドアの開け方も特殊だ。彼女の手を持って教える。すこしイチャイチャしているように見える。
「この車のドアはこうやって開けるのよ。昔の車はみなこうだったの」
(あいつ、これもやりたいんだな……)
彼女が助手席に座る。
「思ったより広いんですね」
「そう、見た目よりわね。でも狭いわ。ちょうどいいくらいに……」
彼女の顔が近くにある。私は彼女とキスをしてみた。
「まず、一回目ね。カオリ」
「わかってます。リョウ……さん」
今日のミッションはお互いを「リョウ」「カオリ」と呼び合うことだ。私はこれを『シティハンターミッション』と名付けた。それともう一つ、キスの回数を数えることもミッションだ。
「リョウでいいわ。そうでないとこの前、映画で見たようなキスはできないわよ」
「わかったわ、リョウ。これが二回目のキスよ」
彼女は私にキスしてきた。
「シティハンターは水色のジャケットでしょう。リョウは着ないの?」
「もう夏だからね。それにこの車にその姿ではさすがにね」
私は赤いシャツは着ていた。
彼女は私の車に合わせて? 赤いミニスカートを履いていた。旧Miniのシートは低い位置にある。助手席に座った彼女の足が気になった。
(あいつの気持ちがわかるわ。よそ見しないように気を付けないと……)
エンジンをかける。ギアをいれようとして、シフトレバーのすぐ隣に彼女の膝があったのが目に入った。思わず触ってしまった。
「あ、間違えた。ごめん、カオリ」
「もう、リョウったら!」
この車は、もうイチャイチャである。あいつにはもったいない。私がもらってやろう。
今日の目的地の一つは小説と同じくローズガーデンだ。
80年代のPOPな音楽をかけながらドライブした。もちろん『Get Wild』もかけた。私が好きな『City Hunter~愛よ消えないで~』も! アニメの再放送を見て気に入ったのだった。
ちなみにカーオディオはMiniDISKだった。ミニだけに……車と同じく骨董品だ。ダビングできる機器がないのでかけられる曲は古いモノばかりだった。
(一応、CDプレイヤーもついているから何とかなるわね。あいつのMDはアニメの曲ばっかっりなんだもの…‥)
彼女は初めて見るMiniDISKに興味シンシンだった。
ただ、音響は最悪だ。エンジンの音や変な振動音、風を切る音などが車内に溢れる。
旧Miniは小さいけれど目立つ車だ。それに女性が運転しているのは珍しい。途中、交差点で止まる度に歩行者がこちらを見ていた。私はカワイイ彼女が助手席にいることで鼻高々だった。
(ふふふ、この子は私の『彼女』なんだぞ!)
一時間ほどでローズガーデンの駐車場に着いた。私たちは三回目のキスをして車を降りようとした。彼女がドアを開けられない。
私は彼女の前に手をのばしてドアロックを解除した。手を戻すときに彼女の胸に少し手が触れた。
「リョウ、わざとでしょう?」
「カオリが可愛いから、つい……」
私たちは今日四回目のキスをして車を降りた。
ローズガーデンのバラは綺麗だった。二人で写真を撮り合ったりした。人波が少なくなった瞬間があれば、そこで素早くキスをした。近くにいたカップルもキスしていたので大丈夫だと思った。
「男性同士の恋愛はバラで、女性同士の恋愛は百合って言うんでしょう。リョウ、ドライブ先、どうして百合園にしなかったの」
「実は前回行った森林公園に百合のエリアがあったの。気付かなかった?」
実は芝生広場からエントランスへの帰りだけ、百合園のそばを通ったのだった。キスで盛り上がっていたのと、あまり百合の花が咲いていなかったので気付かなかったのだろう。
「!?」
「恥ずかしくて教えられなかったの。私たちはもう百合園に行ったのよ、カオリ」
ローズガーデンの帰りに中華街に寄って食事をした。いろいろな点心を何軒か回って食べた。二人でいるのはやっぱり楽しい。彼女は辛いものが大好きだと分かったことも収穫だった。
帰りは彼女をマンションまで送っていった。
マンションの前に着いた時、彼女が少し真剣な顔をして訊いてきた。
「リョウ、上がっていかない?」
私は思わず小説のセリフを言ってしまった。
「セックスは五回目のデートと決めているのよ! それに次に会った時に『そうなる』と考えてごらんなさい」
彼女は少しニヤリとした。
「五回目は無いんじゃなかったの? 私がリョウの小説の中で一番好きなところはそこなのに……『あなたと『する』ために会う』ってとこ!」
(やられた! これは五回目のデートに行く流れだ。そして……)
彼女は下を向いて恥ずかしそうにしていた。
(いや待てよ、カオリはもう心を決めているんだ。あとは私が覚悟を決めれば……)
「カオリ、今度、私の部屋に来る? 覚悟ができているなら……」
これは私自身に言ったのかもしれない。
彼女は私にキスをしてきた。私たちは今日、何回目のキスをしたのかわからなくなった。
いよいよ次がラストですね。
この尊い二人がどうなるのか、お楽しみください。




