第4話 ファーストキスはもっと計画的に!
私はひとりで、ピクニック予定地の森林公園――標高50メートル程度の丘の雑木林をそのまま残して公園にした、都会の中の森林公園に行った。
ロケハンだ。せっかくのチャンスだ。フイにしてはいけないと思った。この努力をほかに回せばもっと……私は何をしているのだろう。
(可愛い女の子とキスするために……いや違う。読者である彼女の期待を裏切らないためだ!)
どこでキスするのがいいのか、ただっ広い公園内を歩き回って探した。ここ数か月で一番の運動量だ。デートは健康にいいことがわかった。で、小説に書いたいくつかの『キス』のポイントを確認した。
①樹のトンネル――芝生広場の脇にあり、高さ2メートルくらいの生垣のような樹が1メート幅くらいで2列に50メートルほど並んでいる。その列の間に入ると、足元から上が周りから見えなくなる。ただし子供に人気なので子供が多くいる場合は、小説のように邪魔される場合あり。
(端の方は少し曲がっているので、見られにくくなるのでは? もし子供が近くにいたら睨んで追い返せば……)
②見晴台――急な階段を上った先にある。景色が良くて周りに人がいなければワンチャンありか……
(下から見ている人は無視してしまえ!)
③湿地エリアの木道のそばのベンチ――これも人通り次第だ。
(躰で隠すようにすれば……)
④丘の反対側の見晴しポイント――公園外になり少し遠い。だが、遠くに大都会東京のビル群が見え景色は抜群。夜景ならなおさら良い。
(これはそのうち彼女と夜景デートしよう!)
⑤芝生広場の隅にある大きな木の裏――小説に書いた第一候補の場所。結局ここが一番良いように思えた。周りに邪魔する子供がいなければ……
(これも子供が近くに来たら睨みつけて追い返そう!)
当日、私たちは駅で待ち合わせし、バスで公園へ向かった。小説に書いたような簡易テントは持って行かなかった。今日は暑くなりそうだったからだ。
広場に着いてレジャーシートを広げる。近くに何組も家族連れやらカップルがいた。みんな楽しそうだった。
遅い昼食が始まった。彼女の手作りだった。小説で書いように応援? してくれる子供はいなかったが、私たちはサンドイッチを『あーん』して食べた。
その後、バドミントンをしたり、フリスビーをしたりした。彼女が持ってきたワインも少し飲む。少し疲れて彼女に言った。酔いもあったのかもしれない。
「ひざまくら、してくれない?」
冗談半分だったが、彼女は膝をポンポンした。私は喜んで彼女の膝に頭を載せた。彼女の膝は柔らかかった。
「カオリの膝、柔らかい! いい気持ち!」
「もう、先生ったら……」
上を見上げると、青い空が二つの山で1/3ほど隠れていた。いい景色だ。彼女と目が合う。私は急に恥ずかしくなって、起き上がった。彼女は胸を腕で隠した。
「いや、恥ずかしい……こうですよね」
二人で笑い合った。これは私が小説の中で好きだ!と書いた仕草だ。
(私はエロオヤジか! いや、たぶんそうだな……)
「ちょっと散歩しましょう。あっちの木陰に行きましょうね」
「いいですよ、先生」
彼女の目が笑っている。何かを悟ったようだった。まあこれは二作目の小説と同じ流れだ。
樹の向こう側――広場から隠れる方に移動し、彼女とたわいない話をしながらタイミングを待った。近くに邪魔しそうな子供はいない。
(もしいたら睨みつけてやるんだ!)
樹木に『ドン』した。彼女が目を瞑る。私は彼女のクチビルに軽くキスした。ミッション達成だ。
「「うまくいったね!」」
私たちは笑い合った。私は肩の荷が下りてほっとした。
(私の小説は間違っていなかった! これも小説のおかげだ!)
私は調子に乗った。
「実はいくつかファーストキスのポイントをピックアップしてあるの。あっちにも行ってみましょう!」
樹のトンネルは子供でいっぱいだったが、私が睨むと子供がいなくなった。軽くキスをした。
見晴台は……少し待つとあたりに人がいなくなった。私たちは3回目のキスをした。下の方からは丸見えだったが気にならなかった。
(『木道のそばのベンチ』は帰りに試してみよう)
帰りはタクシーで彼女のマンションまで送った。小説では二人は近所に住んでいる設定だったが、カオリも私も割と近くだ。私もタクシーを降りて歩いて帰ることにした。
別れ際に、マンションの入り口でキスをした。あたりに人はいなかった。今日、5回目のキスだった。帰りの木道そばのベンチでもキスしていたのだった。
「今日はありがとう。楽しかったわ。それにミッションも達成できてうれしい」
「次回のミッションも楽しみにしています、先生!」
(残念だけど、次が最後になるのかな……頑張らなきゃ!)




