第1話 出会いは小説家にとって夢の展開
いよいよ第3章の始まりです。今度の主人公たちはリョウとカオリ。
実はリョウは……
私は小説を投稿するのが趣味だ。
初めは異世界モノを書いていたが、PVがあまりつかなかった。つたない文章のせいもあるだろう。そのうち、主人公の心の動きを描く勉強を兼ねて、恋愛小説を書くようになった。
(実は、こっそりエッチな百合やBL小説も書いているんだけどね!)
エッチじゃない方の最新作は、私の住んでいる地域を舞台にした、恋愛に不慣れな男女がデートを重ねるお話だ。続編も書いた。
全て私の妄想の「こうなったらいいな」を書き留めた。
割と読まれるようになった。確かに以前の私の作品に比べると、主人公もイキイキとしている。ブックマークもいくつかついた。感想も……
(私も捨てたもんじゃないわね。エッチな小説を書いたおかげで、主人公の心情が書けるようになったんだわ)
感想を読むと、熱心な読者がいた。女性の名前のアカウントだった。
『素敵なお話でした。ドキドキしました。キュンキュンするってこういうことなんですね!』
(ははは、私の思いをくみ取ってくれてうれしい!)
私は丁寧にお返事を書いた。少し調子に乗っていたのかもしれない。
『読んでくれてありがとう。私も君に読まれてドキドキしているよ!』
続編も書いた。続編には彼女から各話に感想が付いた。
『素敵です。私も主人公のような恋をしたい』
『私もペアルックでデートしたい』
『こんな素敵なファーストキスをしてみたい』
……
最終話にも感想が付いた。
『私も先生のような物語を書きたいと思って小説を投稿しました。読んでください』
私は彼女の感想から投稿した小説を探し出して読んでみた。駅のバス停で存在しない彼氏を待ち続けるちょっと切ないお話だった。
(でもこの駅のバス停、私が小説で書いたバス停と同じじゃない!)
土曜日の午後、私は駅のバス停を見に行った。少し遠くから見ると、バス停には一人の女性がいた。
きっと彼女だ。彼女は私より少し年下に見えた。服装は……私の小説の主人公が最初にデートするときの服装――スキニーのジーンズに白いシャツを着ていた。
私は声をかけるつもりはなかったが、彼女があまりにも可愛く、けなげに思えてきた。
(少しくらいならいいよね。私も女だし、お話するくらいなら……)
私は彼女の前に出た。彼女が私を見る。驚いた顔をした。私も彼女と同じスキニーのジーンズに白のシャツで彼女とおそろいだった。
「カオリさん?」
「先生?!」
「先生はやめてね。私は素人作家だから……リョウでいいわ。ペンネームの」
彼女は驚いたようだった。それもそのはず。私のペンネームは漢字で『竜』だった。故郷の偉人から一文字『マ』を抜いてつけた名前だった。男に間違えられても不思議じゃない。でも彼の奥さんと同じ名前でもある。
「男性と思った? ごめんね」
「いえ……」
やっぱり戸惑っている。
「ここではなんだから、あっちの喫茶店でお話しない? おごるわよ」
「はい! よろこんで!」
私は彼女のナンパに成功した。
「いつも私の小説、読んでくれてありがとう。感想もね。励みになるわ」
「いえ、リョウ……先生、私も楽しくてキュンキュンして読んでます」
先生と呼ばれるのはくすぐったい。でも何か気持ちイイ。
(今度のエッチな小説、先生モノにしようかしら……)
「もう先生でいいわ。でもカオリさん、こんなことをしては危ないわよ。私が変なおじさんだったらどうするの?」
「先生がおじさんだったら、きっとステキなオジサマのはずです」
「そう? 私は中身は変なおじさんかもよ」
彼女と笑った。すぐに彼女は少し真顔になった。
「先生にお願いがあるんです」
「何かしら?」
(私にできるのは小説の書き方を教えるくらいね)
「私、高校を出てからずっと彼氏いないんです。……私セカンドバージンなんです」
「そう、私も最近ずっと彼氏いないわ。私もセカンドバージンよ。小説は私がこうなったらいいなって思った妄想なの」
彼女は少しモジモジしていた。
(まさかね、でも……)
私の小説では男から申し出ていた。でも私は女だ。でも……
「私と恋愛のリハビリする?」
彼女の顔がパーッと明るくなった。
「はい、喜んで! 先生となら私うれしいです」
「でも『最終話』は無いわよ! 女同士だから」
『最終話』は主人公が結ばれ、セカンドバージンを卒業するシーンだ。
(でもイチャイチャとキスはあるわね……どうしよう)
こうして私と彼女の恋愛のリハビリが始まった。私の書いた小説をお手本にして。
そう、リョウは女性作家だったのです!
これから始まる恋愛のリハビリとは?!
次話に期待です!




