第5話 君とのキスを数えたら……
四回目のデートはドライブデートだ。
これも小説に書いた通りだ。
「まだこの車に乗ってるのね」
「そうだよ、一度手放したらもう手に入らないかも……って思ってなかなか替えられないんだ」
昔、仕事で出張先まで車で行ったことがあって、彼女は私が赤い旧Miniに乗っていることを知っていた。
彼女を車に乗せたかどうかは覚えていなかった。
「シティハンター好きだったものね……赤いシャツに水色のジャケットは着ないの?」
彼女は私の車に合わせて? 赤いミニスカートを履いていた。
Miniのシートは低い位置にある。助手席に座った彼女の足が気になった。
(よそ見しないように気を付けないと……)
その時、昔一度だけ、彼女を車に乗せて駅まで送ったことを思い出した。
助手席に上司が乗って、彼女は後部座席だった。
後部座席に深く沈んで乗った彼女の足が気になり、バックミラーを何度も見ていたことを……角度が悪くて見えなかったが。
出発前にまず、キスをした。今日一回目のキスだ。
「今日のミッションは知ってるわ。頑張りましょう、リョウ!」
話が早い。お互いを『リョウ』と呼び合うのがミッションだ。それとキスの回数を数えるのも……
「じゃあ、これが二回目のキスだね、リョウ!」
私たちは二回目のキスをした。
今日の目的地の一つは小説と同じくローズガーデンだ。
一時間ほどでローズガーデンの駐車場に着いた。私たちは三回目のキスをして車を降りた。
ローズガーデンのバラは綺麗だった。二人で写真を撮り合ったりした。人波が途絶えた瞬間があれば、そこでキスをした。
「バラと言えば、男×男の娘はバラかな?」
「バラじゃないわ。腐女子からは受け入れられないわよ。男性向けのBLよ」
さすが彼女だ。明確な答えが返ってきた。
「バラとBLってどう違うの?」
「ポイントは男らしさね。男らしさがぶつかり合うのがバラよ。腐女子はそれが好きなの。リョウはまだBL止まりね。腐ってないわよ」
彼女はなぜか自慢げだった。
ローズガーデンの帰りに中華街に寄って食事をした。
以前、彼女と一緒の出張で、ランチを一緒にしたお店だった。
昔のことを思い出しながら食事をした。
二人でいるのはやっぱり楽しい。彼女は私の舌が「オコチャマ」で辛いのが苦手だということも覚えていてくれた。
帰りは彼女をマンションまで送っていった。
マンションの前に着いた時、彼女が少し笑いながら訊いてきた。
「リョウ、上がっていかない?」
私はやせ我慢して小説のセリフを言った。
「セックスは五回目のデートと決めているんだ! それに次に会った時に『そうなる』と考えてごらん?」
「私がリョウの小説の中で一番好きなところはそこなのよ。 『あなたと『する』ために会う』ってとこ」
彼女は下を向いて恥ずかしそうにしていた。
(いや待てよ、彼女は一番初めから小説を読んで全部知っていたんだ。ということは……)
私たちは今日、十回目のキスをした。
ファーストキスから数えて十二回目のキスだった。




