第4話 ファーストキスは計画的に!
私はひとりで、ランニングを兼ねてピクニック予定地の森林公園――標高50メートル程度の丘の雑木林をそのまま残して公園にした、都会の中の森林公園に行った。
ロケハンだ。どこでキスするのがいいのか探し回った。
いくつかのポイントをピックアップした。
樹のトンネル――芝生広場の脇にあり、足元から上が周りから隠れる。ただし子供に人気なので子供が多くいる場合は、小説のように邪魔される場合あり。
見晴台――急な階段を上った先にある。景色が良くて周りに人がいなければワンチャンありか……
湿地エリアの木道のそばのベンチ――これも人通り次第だ。
丘の反対側の見晴しポイント――公園外になり少し遠い。だが、遠くに大都会東京のビル群が見え景色は抜群。夜景ならなおさら良い。
やはり小説に書いた通り、芝生広場の隅にある木の裏が一番良いように思えた。周りに子供がいなければ……
当日、私たちは駅で待ち合わせし、バスで公園へ向かった。
小説には簡易テントを持っていくことを書いていたが、テントは持って行かなかった。今日は暑くなりそうだったからだ。
広場に着いてレジャーシートを広げる。
遅い昼食が始まった。小説のように応援してくれる子供はいなかったが、私たちはサンドイッチを『あーん』して食べた。
その後、バドミントンをしたり、フリスビーをしたりした。彼女が持ってきたワインも少し飲む。少し疲れて彼女に言った。酔いもあったのかもしれない。
「ひざまくら、してくれない?」
冗談半分だったが、彼女は膝をポンポンした。私は喜んで彼女の膝に頭を載せた。
彼女の膝は柔らかかった。でもこれは言ってはいけない……と思った。
上を見上げると、青い空が二つの山で半分隠れていた。彼女と目が合う。私は急に恥ずかしくなって、起き上がった。彼女は胸を腕で隠した。
「いや、恥ずかしい……」
二人で笑い合った。
「ちょっと散歩しよう。あっちの木陰に行こうか」
「いいわよ」
彼女は何かを悟ったようだった。
樹の向こう側――広場から隠れる方に移動し、彼女とたわいない話をしながらタイミングを待った。近くに邪魔しそうな子供はいない。
樹木に『ドン』した。彼女が目を瞑る。
私は彼女のクチビルに軽くキスした。
ミッション達成だ。
「うまくいったわね!」
「うまくいったね!」
私たちは笑い合った。私は肩の荷が下りてほっとした。
(私の小説は間違っていなかった! これも小説のおかげだ!)
「実はいくつかファーストキスのポイントをピックアップしてたんだ。あっちにも行ってみよう!」
樹のトンネルは子供でいっぱいで諦めた。
見晴台は……少し待つとあたりに人がいなくなった。私たちは二回目のキスをした。下の方からは丸見えだったが気にならなかった。
帰りはタクシーで駅まで一緒に行って見送った。小説では二人は近所に住んでいる設定だったが、彼女は少し遠くに住んでいる。遠くと言っても電車で二十分くらいだが。
駅の改札前で別れ際に頬を出してみた。
彼女は「ばか!」と言ってキスしてくれなかった。確かにこの人の多さの中では無理だった。
「今日はありがとう。楽しかった。それにミッションも達成できてうれしい」
「次回のミッションも楽しみにしてるわ! リョウへイさん!」




