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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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第七十八話 消えゆく野望

「支配者は権力だけに甘んじることなかれ…ベルダの言葉だ」


 四体のG-weaponの再生が全て完了すると、今野はそれぞれに、倒れた戦闘員たちのナイフホルダーに入っているナイフを取り出させた。


「どんなに強大な権力を持ち、強力な兵器や軍隊を持てたとしても、最終的に自分の身を守るのは自分ということをベルダは死に際に理解したようだ」


 今野の言葉に、涼子は(何を言うかと思えば…)とため息を漏らした。


「立ち上がる民、その中心に立つエゼル、そして迫り来るシャドーウォリアーたち……、支配者たちの“あたふたぶり”は想像出来るわ。革命クーデターは、どの国でも変わらないものよ」


「確かに…。最近ではラーディア共和国の独裁者、ムーバが民にその座を追われたな…」


「で?あなたは強さを得るためにその人工筋肉を造ったって、そういうこと?」


「そう。ゴーレムの応用で自らを強化するものを造れば、ベルダたちのように醜態を晒すこともない」


 自信を持ってそう言う今野を見て、涼子は笑った。


「残念ね。それはあなたの力ではないわ」


「…何?」


「今自分で言ったじゃない。“ 強力な兵器を持てたとしても、最終的に身を守るの自分”と。あなたが着込んでるそれは“兵器”、自分が強くなったわけではないわ」


「…ぬかせ。それを言うならば、お前とて所詮は借り物のシャドーメモリーズの力ではないか」


 涼子は首を振った。


「それはちょっと違う…」


 複雑な顔を見せる涼子。


 シャドーメモリーズはそもそも古代人に合わせて造られたものであり、理由は何であれ、異なる種族の涼子が適合したのは彼女自身が生まれ持っていた何かの才能か、体質等であり、己のポテンシャルだと言えた。


 それに既に体の一部としてシャドーメモリーズは涼子に融合してる。“借り物”というのは誤りであった。


「…強くなる道のりをワープした感は否定しないけど、私は望まずしてシャドーメモリーズに接触した。その際の“脳の未知なる部分の“覚醒”による進化で、私は本来の自分を全て失ったのよ。その辛さは口では到底説明出来ない…。でも故に私の持つ力は、少なくとも私自身のもの」


「ものは言いようだな」


「そう思うなら、これからその差をはっきりと解らせてやるわ」


 涼子はそう言うと、剣を両手で構え腰を落とした。


「かつて私が恐怖したウォリアーに比べれば、如何にお前が常人より速かろうと敵ではない。お前の言う“気配”も、察知することの出来ないスピードでは、私の動きを捉えることも出来まい」


「確かにね…。でも、“それだけ”では私には勝てない」


「その減らず口……、もう聞き飽きたわっ!」


 今野が声を荒げると、ナイフを手にしたG-weapon四体は、涼子に向かって一斉に攻撃を仕掛けた。


 迫り来る四体の絶妙な位置が、今野の動きを見えにくくしている。


 それが今野の攻撃を“より確実なもの”とするための撹乱であることは、涼子は察していた。


 そして再びG-weapon四体を破壊したところで、また再生をするだけであることも解っている。


 ならば、G-weaponを動かしている今野を倒し、今野の思念を断つことに集中すべきであると、瞬間的に涼子は判断し、セーブしている能力を解放した。


 シャドーウォリアーの能力を最大限発揮した涼子はまるで悪魔の如く瞳は黒く変わり、攻撃的になり、運動能力が増す。


 それでも、インダストクリュスタスのエネルギーを発動させた今野の人工筋肉のスピードは、自身の速さを上回ることは、さっきの攻撃を見て解っている。


 四体の攻撃をかわす、または避けることをした時点で、次の瞬間に今野の致命的な攻撃を受けることは確実だった。


 涼子の剣が緑の光を放つ。


 今野の体からも緑の光が発し始めた。


 今野の放つ光は、先程よりも更に眩い光だ。間違いなく、次の攻撃は、“辛うじてかわした前の攻撃”よりも速さが増すだろうことは、その光の強さで伝わった。


 涼子は脚を開き、より腰を落とし、両手で持っている剣を大きく後ろに回した。まるでフルスイングをするかのような大きな構えだ。


 その構えを見た今野は、笑った。


「馬鹿目が。敗れ被れのまぐれ狙いと言ったところか?動きに無駄の生まれるそんな構えの攻撃が、超高速で迫る私に当たると思っているのか?G-weaponたちの餌食になり、とどめに私の一撃が、お前の首を斬り裂くだろうな」


 涼子は構えたまま、今野の発言に何かを返すことはなかった。


「…言うことはなしか。よかろう。“なり損ない”とはいえ、因縁のシャドーウォリアーを仕留められる喜びをこの現代文明において味わえること…堪能させていただこう」




 そして次の瞬間……


 パーーーンッ!と部屋いっぱいに緑の光が放たれた。


 時間にして、およそ一秒程度か…。


 全てに決着がついたのだった。



 今野は膝から崩れ落ちて倒れ、同時に涼子に迫っていた四体のG-weaponも、糸の切れた操り人形のように次々と床に倒れたのだった。


 何が起きたのか…。二人の決着を見届けた者はいない。


 涼子だけが知る決着までの一秒。


 それは、涼子の“先手”を取った攻撃の勝利だった。


 攻撃の形としては、涼子は立っていた場からは一歩も動かず、まさに剣のフルスイング一閃、右から左に振った。


 力強く振られた剣からは、緑の光が、涼子を中心にサークル状に広がっていった。


 その“光”自体は、迫っていたG-weaponには触れても何の影響もなく、まるで本当に“ただの光”のように、四体のボディーを通過した。


 しかしG-weaponを通り過ぎたその光…、それが今野に触れた途端、激しくスパークをした。


 “この光は何かマズい”と、スパークした刹那の瞬間に察知した今野。自分の体を“光が突き抜けるよりも速く”、まるでスリッピングアウェイのように、“光に触れながら”も後方にバックステップをした。


 しかし会議室全体にサークル状に広がるそれをかわすには、屈むか、飛ぶしかなかった。


 そして今野は超スピードでジャンプをした。


――こ、これは!?


 ジャンプをし光から逃れた今野は、自分の体に“何のダメージもない”ことに気づいた。光が触れスパークした部分は無傷なのだ。


――な、何だと言うのだ!


 そして涼子の二発目の攻撃が、今野に迫った。


 涼子は、飛んだ今野目掛けて、再び剣を大きく振った。今度は斜め上に向けてだ。


 角度をつけてサークル状に広がる光。


 不思議な現象に疑問が湧いた今野の“一瞬の動揺”。それが二発目の攻撃を喰らうこととなった。


 宙空にいる今野は、ハッ!として体を捻ってかわそうとするが、間に合わなかった。


 緑の光は、今野の体を突き抜け、今野の体全体が激しくスパークした。


 だが今野は吹っ飛ぶでもなければ、燃えるわけでもなく、そのまま床に着地…。そしてそのまま膝から崩れ落ちたのだった。


 同時に、今野の後方に何か物が落ちる音がした。トサッ…という軽い音だ。


 停止し倒れるG-weaponたちの音に紛れていたが、確かに聞こえた。


 涼子は深く息を吐くと、少し不快な表情を浮かべつつも、瞳は元に戻っていた。


「…これが、あなたと私の差よ。あなたが私を上回るスピードで動けたとしても、戦闘の、それも実戦の経験がないことで、判断の速さ自体はそこまでではないってこと。いえ…判断する以上に、本能で動くことが必要になることもあるのが実戦よ」


 そう語りながら、涼子は今野の側に歩み寄る。動かない今野を確認すると、その後ろに落ちている物に気づき、近づいて確認をした。


 “それ”は薄らと煙を拭いていた。


 涼子は“それ”が何かすぐに理解し、剣を逆手に持ち、垂直に切っ先を落とそうとした。


『待て…』


 声が聞こえた。いや、聞こえた気がした。


 声は直接頭に入ってきた。それがベルダの、その意志と記憶の声であることはすぐに解った。


 声に従い涼子は剣を“それ”から逸らし、床に刺し立てた。


 煙を上げているそれは、今野の体から分離したスペスメモリア。声はそこからしたのだった。


 涼子は片膝を着き、煙を上げているスペスメモリアに手を当てた。


 すると、その瞬間、周囲は光に包まれ

古代文明の街が現れた。ベルダの記憶の世界だ。涼子はシャドーメモリーズに書き込まれているビジョンで、古代の街を何度も見てきたので、それはすぐに分かった。


 だが、今見ている風景は、とても不安定な状態で、壊れて歪み、チラついたモニターに映し出された映像を見ているようだ。

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