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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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第七十七話 古代文明に取り憑かれた二人の戦い

 地下会議室中に飛び交うサブマシンガンの弾、弾、弾。


 四体のG-weaponは部屋中に散り、絶妙なコンビネーションで涼子に照準を合わせて狙い撃つ。


「ひっひぃ!」


 ウェイティングルームから出ていた順之介は情けない声を上げた。


「み、皆さんに、危険だ!扉を閉めます!中へ!」


 そして慌てて扉を閉める。


 涼子は腰のマントを翻しながら部屋を走り、飛び、駆け回っているが、焦っている様子はなかった。


 正確に狙うG-weaponの射撃だが、涼子は超人的なスピードで四方向から飛んでくる弾丸の軌道線を先読みして避け、そして撹乱していた。


――なるほど、この実力ならSATの小隊叩けるわけね…


 かけられたペットボトルの水が乾いてくると、G-weaponの姿は再び透けてくる。


 それに気づいた涼子は、走りながら床に刺した剣に向けて手のひらを向けた。すると、剣が床から抜け、空中を回転しながら涼子の元へ向かって飛んできた。


 しかし飛んでくる剣をその場で待たずに超スピードで移動する涼子。彼女の元へ戻ろうと飛んでくる剣は、その移動に合わせて方向を変える。


 狙いは、G-weaponのいる位置が重なる瞬間だった。涼子はG-weaponが直線上になった瞬間に脚を止めると、回転しながら飛んできた剣は、一気に四体のG-weaponを破壊したのだ。


 シャドーメモリーズとリンクしている、“ウェポンズ・ブレイカー”は常にその持ち主の元へと戻るシステムが組み込まれている。


 涼子はその性質を利用して、四体を一気に叩き潰したのだった。


 パシッ!と剣の柄をキャッチすると同時に、横一線に破壊された四体のG-weaponが床に崩れ落ちた。


「一丁上がり…」


 だが、破壊されたG-weaponたちは、それぞれ斬られた断面からコードのようなものが生き物のように無数に伸びて、元に戻ろうとする動きを見せた。


「ああ…こいつら再生するんだったわね」


 とても機械仕掛けのものとは思えない現象。G-weaponの修復機能は、正直気味が悪く、涼子は苦笑した。


「庄司エンタープライズのナノ技術テクノロジーは…かなりヤバいレベルね」


 涼子は、太もものホルスターから拳銃を取り出すと、それぞれ結びつこうとしているコード目掛けて発砲した。


「無駄だ、粉々にでもしない限りは、時間が掛かろうとも再生する」


 どこからか、聞こえる今野の声。


 そして同時に緑の閃光が、何もない宙空なら飛んできた。


 涼子は剣でまたも閃光を真っ二つに切り裂くと、裂けたエネルギー体が涼子を境に左右に分かれて壁で小さな爆発を起こした。


「無駄ですよ副長官…私に“その攻撃”は通じません」


 余裕の涼子だが、今野からの反応はない。


「…無視ですか?まぁ、いいわ。あなたが私について…“何も解っていない”ってところ教えてあげるわ」


 涼子はまた剣を床に刺すと、腰を落とし、手のひらを開いたままの両手を前に縦に並べて構えた。


 そして少しの間を空ける。


 次の瞬間、グッと脚に力を入れ超スピードで踵を返すと、腰のマントを翻えしながら、身を屈ませる涼子。“何か”をかわしたのだ。目に映る物はないが、前髪が数本切られ散った。


 さらに“何か”を両手で掴んだ。踵を返した際の回転の勢いで、掴んだ“それ”を思い切り引っ張り、投げ飛ばした。


「くっ!」


 今野の声が漏れる。


 そしてドダッ!という音が涼子から離れた先の床から聞こえた。


「…くっ…き、貴様」


 今野の姿は確かに消えている。だが、涼子はまるで見えているように、背後から攻撃を仕掛けた今野の腕を掴み、自らの回転と、今野の攻撃の勢いをそのまま利用して、投げ技を仕掛けたのだ。


 その見事なタイミングに、驚いた今野。しかし、声こそ漏らしたが、床から発した音から察するに、背中から落ちずに着地したことが分かった。


「…驚いたかしら副長官?手には何か刃物を持っていたわね」


「…ああ、特殊合金のアーミーナイフだ。鉄も斬り裂くナイフだ」


「そう。素手だと思っていたから、危なかった」


 そのセリフとは逆に、不敵な笑みを浮かべる涼子からは、余裕を感じる。


「…見えない場所からの閃光。そして背後からのナイフの不意打ち。どちらも、確実に防げるようだな…」


 涼子は刺した剣の柄を握り、床から引き抜くと、その切っ先を見えないはずの今野に向けた。


 そして切っ先をゆっくりと右に、右に向けて行く。


 それは“今野の質問”に対する涼子の返答であった。涼子の向ける切っ先は、今野が移動している方向なのだ。


「…見えて…いるというのか?」


「いいえ、“見えては”いませんよ。でもどこにいるかは“分かる”」


「…何だと言うのだ。どういうトリックだ?」


「あなたは、“思念”がどうとか仰ってましたが、そんなもの必要ない。“あれば”便利なんでしょうけど、なければないで気配を察知すればいい。それだけのこと」


 今野はスウッと透明ステルス機能を解除し、その姿を現した。その立つ場所に対して、涼子の向ける剣の指し示す方向に少しの狂いもなかった。


「“気配”…そんなもので、私の場所が分かるというのか?」


「…あなたの話によれば古代人は、私たち現代人より優れた力を持っていたようだけど…思念力?」


「それぞれ得意不得意、持っている力、持っていない力はあったがな…」


「シャドーメモリーズでの覚醒を経て、おそらく古代人のシャドーウォリアーは“そういった力”が強く増したのだと思う…、私にはない力。でもね、現代人は何百年も掛けて、人の持つ潜在能力や、技術を磨き、進化させてきたのよ」


「…何?それが古代人の生まれつき持っている力と同じ役割をするというのか?」


「そうね。言い方は色々あるだろうけど、私はその力は“武の力”と呼んでいる」


「武だと?」


「現代人はそういったものをずっと学び、進化させたのよ。世の中の便利さに埋もれつつはあるけどね、私はそういった力がメモリーズのお陰でより強化されてる。加えて言えば、あとは自分に向かって仕掛けてくるとわかれば、楽なもの」


 今野の表情は、覆われた人工筋肉バトルスーツのせいで見ることは出来ないが、首を傾げ、沈黙した。


 そして少し間を空けると、何かに納得したように頷いた。


「では、続きといこうか…」


 今野は一言そう言うと、腰を落とし、特殊ナイフを逆手に持ち替えた。


 “来る”と悟った涼子は、剣を両手で替え直した。


 しかし次の瞬間、今野の体が緑に発光したと認識したと同時に、涼子の右肩が激しく出血した。


「…っっ!?」


 飛び出す血飛沫。


 ナイフを持った今野はそんな涼子の背後にいた。


 発光した今野は、目にも止まらぬ速さで直進し、涼子の肩を斬ったのだ。


 しかし狙われたのは首だった。


 それでも涼子はギリギリかわし、肩へのダメージにとどめたと言えた。


「…は、速い」


 涼子から余裕の笑みは消えた。ダラダラと流れ出る右肩の出血は、腕を伝い、剣を構えるのに折り曲げている膝から床に落ちる。


「インダストクリュスタスの使い道は、何も“飛び道具”や、“姿を消す”だけというわけではない。エネルギーの戦闘時有効活用、そのために開発したのがこの人工筋肉だ」


 涼子はすぐに理解した。今野が覆っている人工筋肉は、インダストクリュスタスのエネルギーを発動し、使用できる造りになっていることは分かっている。今見せた力は、そのエネルギーで人工筋肉そのものの持つパワー上げたのだと。


――…そこから生まれたスピードで、肉体自体をさらに強化したわけね。


 脅威の今野。


 そして、再生完了した機体からG-weaponはゆっくりと立ち上がり始めた。

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