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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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第六十九話 最後の戦いへ

 今野の身体から発する緑の光は、涼子の持つウェポンズ・ブレイカーと同じ輝きだ。


「この光…」


 光はさらに強くなると、今野の着ている服や靴が破け肌けていく。そして身体中心部から発する光の中から“何か″が広がっていくのが見えた。


――あれは何だ?


 涼子は眩い光に目を細め、今野に起きている変化を見つめた。


 広がる“それ″は、瞬く間に今野の身体を覆っていく。まるで零した水が広がっていくように、今野の身体が“何か″に包まれていくのだ。


 そして最後に頭部をも覆うと、緑の光は消えた。


「…さあて刑事さん…いや、シャドウウォリアーさん…どうだろうか?少しは戦えそうに見えるかな?」


 G-weaponによく似た姿シルエットに変身した今野は、エコーフィルターの掛かったような声で言った。


「……さぁ、どうかしらね、“張子の虎″ってこともあるんじゃないの?シャドーウォリアーのこと知ってるんなら言う必要ないと思うけど…私、結構強いわよ」


 涼子は、微かに笑みを浮かべた。


 今野の見せた変身は、普通ならば驚くべき非常識なものなのであろうが、彼女にはその様子はない。


「余裕か?だが、私もそれなりに強いつもりだ」


 涼子は首を傾げながら、今野の姿をじっと見つめた。


「…体から発した光は、話に出てきたインダストクリュスタス。つまり、この剣と同じ“古代エネルギー″。そしてきめ細かく体を覆ったそれは、ナノ技術テクノロジーによるアーマーといったところかしら」


「概ね、正解だ」


「でも疑問が二つあるわ。一つは、インダストクリュスタス。あなたが何故持ってるの?もう一つ、そのアーマーの物質は何?」


 今野は自分を指した。


「…私の中に融合したスペスメモリアは有機体。いくら古代文明の技術が今より上だったとは言え、何万年も劣化させずに保管することは出来ん。箱にインダストクリュスタスを搭載し、保管のためのエネルギーを発っするのに使っていた」


「箱の方か…気にも止めてなかったけど、そんな秘密が…」


「ごく僅かなインダストクリュスタスだが、保管に使う程度なら、エネルギーは何万年と持つからな。これからも、まだまだ使えるぞ」


「それを流用したってわけね」


「そうだ。そして質問の二つ目、これは正確にはアーマーではない。勿論“防御″という側面を見れば鎧の役目も果たすが…」


「確かに、ちょっとしなやかな素材に見えるかしら」


「そう。ナノ技術により、神経レベルで私の身体と繋がっている、人工の筋肉だ。関節部や拳に、チタン製のサポーターは装着しているがね」


 少し感心した涼子は、驚きのため息をついた。


「…古代文明と現代科学のハイブリットってところね」


「その通り。筋力は勿論、反射神経もトップアスリートと呼ばれる人間の五倍近く高まっているよ」


 今野は右手を発光させた。緑の光が手の中に収縮されていく。


「そしてこれだ。かつて、私の造ったゴーレムは光のエネルギーを放てた。あの出力には到底及ばないが、私にもあれが出来るぞ」


 今野が手のひらを涼子に向けて構えると、バーンッ!と音を立て一筋の光が飛び出した。眩しく緑に光る閃光が物凄い勢いで、涼子に向かって飛ぶ。


「恐れ入ったわ!」


 涼子は剣を両手で握ると、切っ先を斜め下向け、目の前まで飛んできた閃光を勢いよく切り上げた。


 剣と光が衝突した瞬間、激しくスパークした。


 そして次の瞬間、ドドーンッ!という音と共に、小規模な爆発が部屋の二か所で起きた。


 涼子が切り裂いた閃光が左右に分かれ、壁に当たったのだ。


 小さな振動が起きると、ウェイティングルームから出てきていた社長や、中にいる者たちが騒めいた。


 爆発の規模は小さくとも、誰の目から見ても人を殺傷するには十分な威力であることが伝わった。


 振り向いて、その爆煙を見た涼子の顔が変わる。


「…ガディア共和国で苦戦したあの時を思い出すわね…」


 飛び出す閃光にも動じず、またその言葉を聞き今野ははっきり理解した。


「…貴様、本当にゴーレムと戦ったんだな」


「ええ…。で、私は勝った。そして今夜も、同じ。私が勝つのよ」


「それはどうかな」


「いいえ、分かるわ、勝つのは私。そして副長官、改めて言います。あなたには消えてもらいます」


 涼子はここに来て初めて、闘争心を感じる表情を見せた。それに合わせるようにウェポンズ・ブレイカーから緑の光が強烈に発した。





 部屋の反対側にいた六堂たちは、涼子と今野の戦いが始まったことを爆発で気づいた。


「…おいおい、ラスボスが何だかおかしなことになってんぞ。あの美人と戦う気だ!」


 変身した今野の姿を見て、室富は口笛をひゅうっと吹いて苦笑いをした。


「“ラスボス″に変身は定番だろ。しかし野心家のインテリ野郎だと思いきや、あんな“隠し玉″を持っていたとはな…」


 見たこともない今野の変身に驚く六堂だが、涼子の負ける姿をイメージは出来ない。


 六堂は日本刀を鞘に納めると、会議テーブルの下に美雪と隠れていた弥に返した。


「これ、ありがとうございます」


「もう…いいのか?」


 弥が尋ねると、六堂を頷き「ええ」と一言答えた。


 そして、倒れている戦闘員たちの遺体に近づき、ホルスターから拳銃を二丁と、ベストから予備のマガジンを抜き取った。


 室富も同じように、拳銃を抜き取り、サブマシンガンを拾い上げた。


 今野の変身、そして武装する六堂たちを見た大佐は、背中を向けてその場から足早に姿を消した。


「…あの野郎、副長官守るのが使命じゃなかったのか?逃げたぞ」


 六堂がそう言うと、弥は立ち上がり、大佐の立ち去った方を見つめた。


「大佐の現状離脱は恐らく、部隊零というシステムの維持のためでしょう」


「何だって?」


「私も部隊零が何なのか実態を知っているわけじゃあないが…」


 弥は以前、父と今野が、部隊零について話しているのを聞いていたことがあったという。


 戦後は、選ばれた複数の遺伝的に優秀な女性を施設に置いて、子供を産み育てていたというらしいが、時を経て今では人工的に兵士となる子供たちを産み育てているという。


 どこかに施設が存在するのだとすれば、部隊零はまだ存続する可能性があるだろうというのだ。


「そうですか。ま、それはそれとして、俺は個人的に大佐やつを倒す気なんで、ついでにその施設について聞き出せそうなら吐かせてみます」


 六堂はそう言うと、マガジンを入れ替えた拳銃のスライドを弾いた。


「六堂さん、大佐の向かった先に、通路があります」


 弥は、ポケットからキーカードを取り出した。


「それは?」


「今野と社長、そして大佐だけが持ってる、ここのアクセスレベルの最も高いキーです」


「…それを何故あなたが?」


「さっき、あっちの部屋で、親父と揉み合ってる時に、こっそり奪いました」


 弥は少し悪そうな顔をして笑った。


 六堂は少し間を空けると、思わず吹き出した。


「さぞ、疲れたでしょう…副社長」


「え?」


「あそこで動揺してる親たちの前では“バカ息子″を演じて、これまで生きてきた。さっきの演技、アカデミー賞俳優も顔負けだったと思います」


 六堂はキーカードを受け取った。


 弥の話によれば、大佐の向かった方向に扉があり、そこに“新東京″開発時の資材搬入路があるという。


 庄司エンタープライズは、新東京開発に多額の出資をしていたため、工事に直接入り込み、ここの近くの搬入路はあえて閉ざさずに、秘密の通路として残していたのだという。


「ここから出て、搬入路を通ると、セントホークタワーの真下に出ます」


「…セントホーク?じゃ、事件の時はまさか」


「ええ、ここでモニターしていたんですよ、奴らは。そしてG-weaponもここから出動しています」


――だから事件の時、警察が包囲してる中で、誰もビルから出ずにもぬけの殻だったわけか…


「おい探偵、早く行け、あいつを倒すんだろ?遠くに逃げられるぞ」


 室富は拳銃とサブマシンガンのマガジンを入れ替えながら、六堂を煽った。


「…あんたはどうするんだ?」


「本当はあの“木偶でく人形″どもを倒すと誓ってたんだがな。でもあの美人さんが戦ってるみたいだしな。上の騎兵隊たちを手伝うさ。警官の腕じゃ、かなり厳しいだろうからな」


「そうか…じゃ、あとでな」


 六堂は微笑みながら、グッドサインを出すと、室富は苦笑した。


「“あとで″か…、お前が死ななかったらな」


 六堂、“死なねーよ″と言いたげな表情で首を振った。そして弥の方を向くと頭を下げた。


「…副社長、そのを、美雪を頼みます」


 弥は、そんな六堂に言った。


「分かっている。死なないでくれ」

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