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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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第五十九話 支配者に

「……楽しんでもらえて光栄だ」


 苦笑しながら、室富は冗談を口にした。

 

「本当に楽しかったよ。セントホークで四体のG-weaponを相手によく戦い抜いたと思ってはいたが…、探偵君を捕獲しようとした際に返り討ちにしたのも君の方ではないのか?」


 室富は、刀を斬り上げた六堂の姿を思い出しながら、首を振った。


「…いいや、あれは紛れもなく…そこの私立探偵がやった。この目で…見ていた」


「そうなのか?まぁ…どうでもいいがな」


 観念した室富は、テーブルの上に二丁の拳銃を置いた。


「…な、今野さんよ、どうせ死ぬ身だ。あんたの“目的”を教えちゃくれないか?」


「…目的?」


「ああ…この兵器ばけものが関わる一連の出来事はだいたい判っている。ただ…“その目的”が何なのか…気になってたんだ。確かここに来た時に、“国取り”がどうとか、言ってたよな?」


 顎に手を当て、少し考える今野。


 その間、室富を挟むようにして立っているG-weaponは、会議テーブルの上で、太腿に装着しているホルスターから拳銃を取り出し、その銃口を彼に向けた。


 そして前方のG-weaponは、室富に更に近づき、脚で小突くような蹴りを入れた。


 “会議テーブルから降りろ”というのだろうと察した室富は、テーブルから降りた。すると二体のG-weaponも続いて降り、室富に銃口を押し付けた。どうやら、六堂と美雪のいるパーテーションに囲まれた所に行かせたいらしい。


 G-weaponに銃口を向けられるまま、室富は六堂たちの側まで歩いた。


「…器用に動くよな。そもそもこいつらよ、どうやって言うことを聞かせている?今だって、お前が指示したわけでもねえ」


 振り返った室富が尋ねると、今野は自分の頭に人差し指を当てた。すると…


 バンッ!


突然一体のG-weaponが、構えていた拳銃を発砲した。驚いた美雪が目を思い切り瞑り、六堂に強くしがみ付く。


 弾は誰にも当たらず、部屋の壁に穴を空けた。


 部屋が静まり返ると、今野は人差し指を頭から離した。


「…私の思念、それでG-weaponたちは動いている」


 今野の言うことに、返す言葉が出てこない六堂と室富。“思念”で機械を動かすなど、科学技術という話ではない。


「最も、君らにそれを理解することは不可能だろう?私がこうしてほしい、こうあってほしいと思えば、G-weaponはその通りに動くわけだが…」


 そう言うと、更に二体のG-weaponが姿を現した。その内の一体は、片腕がなかった。六堂が事務所で返り討ちにしたG-weaponだ。


「楽しい余興ショーを見せていただいたお返しだ。死刑の前に質問に答えてやろう。目的…、そうG-weapon開発の目的だな…。ご察しの通り、この国を支配することだ。言葉の通りにね」


 口を開いた今野の説明は、とても現実的とは思えないものだった。


 日本を自分の手で支配するというのだ。要するにクーデター。しかしそれ自体は世界的に見れば珍しいことではない。ただ、今野の言う“国取り”は、普通イメージされるものとは全く異なるのだ。


「日本はまず東京を抑えれば半分は支配下に治めたも同然となる。そう、五分…、その東京制圧に掛かる時間だ」


 今野は手のひらを前に広げて言った。


 国会を中心に、自衛隊基地、警視庁は勿論、テレビ局を始めとる通信を可能とする施設、経済に関わる主要施設、主要道路の封鎖と破壊…それを同時に行えば東京は一瞬で壊滅するという。


「おいおい、ま、待て…それは」


 恵の殉職に関わる一連の事件については追ってきた六堂だったが、今野の口からその目的を初めて聞いて、驚きを隠せないでいた。


「何だね?探偵君」


「言わんとしていることは分かる、物理的にはな。だがそんな五分で、東京制圧なんて可能なのか?」


「逆に“不可能な理由”を聞きたいものだ。平和ボケして行動の遅い日本政府に、事態を把握する間も与えず、何が起きてるか理解をする前に、この首都を落とすことは簡単だ。そのためのG-weaponだからな。その時、その場で、必要な装備をし、姿を消し、作戦のための確実なポジションに着く。そして私の合図と共に、同時多発的に開始される作戦は五分で全てを変えるだろう」


 今野の自信に満ち溢れた口調に、六堂と室富は互いを見合った。


「信じられんか?その作戦に必要なG-weapon数は三十体…それで事足りるだろう」


「三十…それだけ?」


 室富がそう返すと、今野は目を丸くした。


「何を驚く?君らだってもうG-weapon性能は理解しているだろう?」


 確かに、何の前触れもなく、姿の見えないG-weaponが、突然ことを起こせば、一体で一施設を破壊することも可能だろうと、六堂は考えた。


 武装した大人数の反政府軍を用意する必要も、複数の戦車で国会を包囲することも、武装ヘリを飛ばして各所をミサイルで狙い打つことも、必要ない。


 スマート且つスピーディーに作戦は行われることは想像できた。人間のようなミスもないというオマケ付きで。


「だが理解出来ないな…計画については可能だとして、この国を支配って…、お前が支配?何の意味がある」


 六堂の質問に、今野は苦笑した。


「探偵君、君は今のこの国の体制に疑問はないのか?」


「え?」


「前の大戦から五十四年余り、日本の腐った政治家どもはゆっくりと時間を掛け、見せかけの平和を利用し、国民を支配的に飼い慣らし、そして自分たちの私腹を肥やすシステム、ルールを作り出していった…」


 今野の話は、思っていたよりも、まともなようにも聞こえた。


 大企業との癒着、メディアを通した印象操作。


 政府の決めた勉学のシステムを熟せる者をエリートとし、そのエリートが政治家や大企業の役員になること。


 表向きの話し合いはパフォーマンスで、その裏では自分たちの都合のよい法案を可決していくことを始め、政治家の作った闇のルールに則ったもの以外はそもそも政治家になれず、なれたとしてもすぐに潰されること。


 どうしようもない政府の事実を、今野は簡潔に説明した。


「面白いと思わないか?日本政府が明らかに国民に対し、バカにした政策をとっても、多少の文句や騒ぎは起きるが、それで終わる。国民は過激デモも、それこそクーデターも起こさない。日本の政治家はそれを分かっていて、ニヤニヤと腐ったことを平気で行えるわけだ。逆に言えば長年かけて国民が何もしない、波風を立てないように、飼いならされた結果でもある」


 身近な例として消費税のことを出した今野。彼曰く、これから10%、20%と搾取され続ける将来のシナリオはもう出来上がっているとのことだった。消費税に対して本気で反対をしなかった国民は、奴隷のような生活が待っているだろうが、それでも文句は言わないのだろうと、今野は笑った。


「まあ、消費税などは小さな話だがな…政府あほどもの支配はますます強くなり、この国は腐る一途を辿るだろう」


「だから、お前がこの国を変えると言いたいのか?」


 六堂が最もな質問を投げかけると、今野はふっと真顔になり間を空けた。椅子の背もたれに寄りかかり、上を向く。そして一言「…いいや」と。


「…何?」


「…それは、それ。この国を私が支配する理由の一つに過ぎない。私はね、もともとが“支配者”なのだよ」


 何を言っているのだろうかと、六堂も室富もそう思った。


「さ、少し話し過ぎたようだ。そろそろ、死んでもらおう。そうでなくても、G-weaponを作るのには膨大な時間が掛かる。だから我が計画に関わる情報が漏れないよう、G-weaponを見た人間、知った人間たちをこれから消さねばならないわけだし、色々と忙しいのだ」


 そう言い、今野が六堂たちの死刑を指示しようとすると、パチ…パチ…パチ…と、スローなテンポの拍手が部屋の奥から聞こえた。


 その場にいた全員が、一斉に拍手のした方を振り向いた。


 そこには今の今まで、誰もいなかったはず…。


 勿論、意識していたわけではないが、間違いなくそこには誰もいなかった。部屋内にいる誰もがそう思った。


 しかし今、そこには間違いなく人影がある。“忽然と現れた”としか言いようがない人影シルエット


「実に面白い計画…そして、興味深い兵器の説明、楽しく聞かせてもらった」


 黒いミリタリーウェアに身を包み、長いであろう髪を後ろでまとめている女性のシルエットだ。


 六堂は、文句を言いたげな表情で、女性に向かって苦笑した。


「誰だ…?いや、どうやってここへ入った?」


 大佐が問うと、女性はゆっくりと部屋の隅から前へ出できた。すると、部屋の照明が当たり、顔が照らされる。


「お前は……刑事の」


 髪を束ね、服装もミリタリーウェアーと印象が異なってはいるものの、その女性、涼子だ。


 セントホーク事件の最初の捜査担当、警視庁の刑事。


 情報を把握してる大佐や江村は勿論だが、その顔を知っている者たちはここにも何名かおり、その者たちは驚きの表情を見せた。


透明ステルスにならなくても、気づかなかっただろ?」


 涼子は片眉や下げ、にんまりと嫌味な笑顔を浮かべて部屋の中にいる者たちに言った。


「…上にいた兵士はどうした?」


 江村は目を細めながら尋ねた。


「全員気絶してる。重傷者もいるから、早く治療してやった方がいいぞ」


 江村は大佐の顔を見た。屈強な部隊零の戦闘員が複数人、それを女一人に本当にやられるのだろうかと、信じ難い話に(どうなんだ?)と目で訴えた。


 大佐は、動揺している江村の顔を見返すことはせず、少し首を傾げながら、涼子の方を見た。


「…なるほど、ターゲットを消しに埠頭に行った部下たちからの連絡が途絶えたのは、お前の仕業か?」


 涼子の愛車ポルシェに付けられた発信器から、倉庫に立ち寄ったことを、川島から佐々木経由の連絡で知っていた大佐は、まさかと思いつつも尋ねた。


「三人?ああ…ええ、そうよ」


「…なるほどな。合田とかいう小物の始末を任せた部下が、お前にやられたと報告を受けていたが、どうやら“ただの刑事さん”というわけではないのだな」


「“あれ”も私ってよく分かったわね…。あ…そうか、佐々木ね。内通者に使ってたみたいね、あの警部を」


「貴様が“それ”を知ってるということは…佐々やつは捕まったかのか」


「らしいわね、さっき連絡を受けたわ」


「…まあいい。小さなことだ。で、鮮やかに侵入したはいいが、お前は何をしたいのだ?」


 大佐が尋ねると、涼子は右腕を真っ直ぐ伸ばし、人差し指を今野に向けた。


「とりあえず、あいつと話がしたいわね」


 大佐は今野に「どうしますか?すぐに始末しますか?」と確認をした。



「いや…」



 今野は首を横に振る。


「ご指名とは…せっかくここまで来たのだ。生きて帰す気もないが、話くらい付き合おう。美人は見ていて飽きないしな」


 涼子は腕組みをしながら、今野に歩み寄った。


 部隊零の戦闘員たちが、彼女の動きに合わせてマシンガンの銃口を向ける。


「ありがとう」


「いえいえ」


 涼子は、近くにあった大島の座っていた椅子を引っ張り、今野の側まで引くとそれに腰を掛け、脚を組んだ。


「さて、今野副長官…、単刀直入にお尋ねするわよ」


「…どうぞ」


「1986年…スフォーニア国で“何”を見つけたのかしら?」


 涼子の質問に、江村も大島も、会議テーブルに座っていた者たちは、それぞれ隣の者たちと顔を合わせて少し騒めきを見せた。


 今野は微笑みながら、何度も頷いている。


「なるほど…驚いたな。まさか…そこに気付く者がいようとは」


「余計なことはいいから、答えなさい」


「では、私からも質問させてくれ」


 怪訝な顔をする涼子。


「あなた、質問を質問で返す気かしら?」


「まあ落ち着きなさい。どの道、君の質問に答えても、その理解は難しいと思うのだよ」


「……」


「だからまず私に質問させてくれ。その上で、君の質問にお答えしよう」


「……分かったわ」


 涼子が納得すると、今野も脚組みをし、テーブルの上に転がっているペットボトルの水を手に取り、一口飲み、一息ついた。


「…何故、私が1986年に、あの国で“何か”を手に入れたと思った?」


 涼子は、左の口角だけを上げて、フッと苦笑した。


「…あんたの作った兵器、あれは近代技術では作れない代物。まるで生き物の機動性。そして実用性の高い透明ステルスを可能にする光学迷彩。そんなもの100%今の技術では作れないわ」


 今野の顔が変わった。その表情を見て、さらに笑む涼子は話を続けた。


「ではその遥かに進んだ技術は何かってことになるわね?」


「…何だと、思っているんだ?君は」


「…そうね、時空間を超えてやってきた未来技術かしら?いいえ未来からの時空間移動そんなことなんて発送は現実的ではない。何故なら、近代よりも進んだ技術は、遥か昔、古代に既に存在していたから」


 ここまで常に冷静だった今野が、大きく目を広げた。その表情は、驚きを隠せないでいる様子だ。


「し、知っているのか?“あの文明”を」


 今野の言葉に引っかかった涼子は、首を傾げて目を細めた。


「“あの文明”ですって?」


 今野の言い方は、まるで“その時”を知っている風に聞こえた。


「…無知な歴史に記録されていない古代文明。お前がそれを知っている…どういうことだ?」

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