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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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第五十三話 倉庫の地下の会議


1999.12.6 -MONDAY-


 日付が変わって間もない、0時01分。


 佐久間は、愛理出警察署に設置されている、セントホーク事件の捜査本部に来ていた。


 同行させた佐々木は、川島と一緒に署員に引き渡した。


「皆!今手にしている仕事を止めてくれ!」


 佐久間は捜査本部のある部屋のドアを開けると、大声で注目させた。


 今いる刑事は、佐久間を含めて十三人。時間を掛ければもっと集められるが、涼子が既に、敵地に向かってるとあってはグズグズはしていられなかった。


「全員防弾ベスト着用しろ!今から、今事件の黒幕のいると思われる建物に乗り込むぞ!最優先だ!」


 その場にいた全員が、お互いの顔を見合わせた。


「何をボケッとしてる!バカ野郎ども!」


 廊下にまで響き渡る大声で叫ぶ佐久間。


 驚いた刑事たちは、PC操作をやめ、ファイルやペンを置いて、防弾ベストを次々装着しはじめた。


「よし!詳細は移動しながら伝える!」


 佐久間も、コートを脱いで防弾ベストを着る。


「あの、佐久間さん…このこと、佐々木警部はご存じなんですか?」


 後輩の森刑事が佐久間に尋ねた。


「いや…警部はこの件の担当から外れたんだよ」


「え?」


「まだ正式に次の責任者が決まったわけじゃあないが、とにかく今は時間がない」


 いつも以上に真剣な顔の佐久間を見て、森は納得して頷いた。


「解りました」


「そうだ森。装備課に行って、拳銃の予備弾倉ありったけと、ショットガンをここにいる全員分用意させるよう申請してきてくれ!」





 同じ頃…。愛理出地区倉庫街。


 六堂が運転する車は高速を降り、江村から指定された場所の近くをゆっくり走っていた。


「…そろそろだな」


 目的地である西38番地の、少し手前の道脇に車を停め、エンジンを切った。

時間も時間だ。通り過ぎる車も人もおらず、ヘッドライトを消すと、周辺は暗く静かだった。


 目的地より少し手前で停めたのは、車ごと指定された場所に行っても意味はないからだ。


 最悪、逃げるための手段は離れた場所に置いておく、そんなことも兼ねて、“自分が死んでも″ラッドに愛車が無事戻るようにとの六堂の配慮だった。


 六堂と室富は車を降り、霧雨の中、江村の指定した場所に向かうが、その間に二人が言葉を交わすことはなかった。


 西38番地、見えてきた倉庫の敷地は門が閉められていたが、守衛ボックスは電気が点いており、その光に薄らと映る人影がボックスの外に見えた。


――…ハイウェーブ?ハイウェーブの倉庫…なるほどね。


 敷地内に見えたのは、あの“株式会社ハイウェーブ”の倉庫だった。


 ハイウェーブは幽霊会社だが、きちんと利益もあげ、金の動きがあると聞いている。恐らくは、主要製品として扱ってる警備関係の品を本当にここに在庫し、取引をしているのだろうと六堂は思った。


「…来たか」


 雨衣を被り、マシンガンを手にしている警備が五人。その中の一人が、門の前まで来た六堂と室富に気付いた。


 服装は警備員だが、佇まいと雰囲気から察するに、“部隊零”の兵士なのだろう。守衛ボックスの中の男もそうだ。


 守衛がボックスの中にあるボタンを押すと、重そうな門がゆっくりと開いた。

人一人が通れる隙間が開くと、守衛は動いてる門を止めた。


「入れ」


 マシンガンの銃口を向けられたまま、指示に従う六堂と室富。


 二人の身体を調べる警備の男たちは、脇や足首は勿論、髪の毛から股間まで隅々まで手を抜かずに確認した。


「おいおい、“マクレーン″じゃねえんだ、さすがに背中に銃なんてねえよ」


 背中を触られた室富が、笑いながらそんな冗談を言った。


 携帯電話と、愛用の二丁の拳銃パイソンを抜き取られた室富は「大事に扱えよ」と言ったが、警備の男は無表情で室富を見ながら、拳銃を証拠保存用のビニールに入れた。


 六堂も、携帯電話と拳銃を抜き取られた。


「……確認だが、来る人間はもっと多いと聞いてる」


 守衛がそう問うと、六堂はため息をついた。


「まず呼び出しに応じたんだ。つまり、こちらは、ひとつ要求に応えた。どうなるかは、そちら側からの話次第。“その話″に介入する権限は、あんたらにはないだろ?」


 怪訝な顔で少し考え込む守衛は、無線の咽喉式マイクに手を当て、何かを話し始めた。


 警備責任者の志賀か、あるいは呼び出しをした江村あたりか…。


「…了解」 


 交信を終えると、守衛は部下の警備に「連れて行け」と指示を出した。


 二人の警備がマシンガンを突き出し、六堂と室富の後ろに回った。


「このまま進め、“会議”に出てもらうそうだ」


 室富は(言われた通りにしよう)と、こちらを向く六堂に、頭の動きで示した。


 倉庫の中に入ると、木箱や段ボールが沢山積み上げられているのが、目に入った。


 ハイウェーブは警備関連の製品販売をしていることになっている会社だが、六堂の思った通り、本当にそういった品を在庫しているようだ。


 だが、わざわざ江村がここを指定したのだ。ただの倉庫ということではないだろう。この沢山の在庫品もまた、何かを隠すためのものであることは想像出来た。


 当然だが警備は倉庫の中にもいた。


 スリングを肩に、マシンガンをぶら下げた男が何人か見回ってるようだが、歩き方を見て、訓練された戦闘員であることが伝わる。

 

「その突き当たりを右だ」


 言われた通り、荷物に挟まれた通路を曲がると、そこにも警備が一人立っていた。


「“ゲスト″だ」


 後ろでマシンガンを突きつけてる男がそういうと、曲がった先に立っていた男はフォークリフトに乗り、動かし始めた。そして木箱の積まれたパレットを持ち上げ移動させる。


 荷を動かしたその床は綺麗に何もないが、フォークリフトに乗せているパレットを少し離れた荷の上に乗せると、音もなく床が開いた。


 六堂は、庄司エンタープライズ本社ビルから脱出する時に、副社長 弥のプライベートルームで見た床を思い出した。

恐らく、同じ技術なのだろう。


「降りるんだ」


 下には鉄板製の階段が続いており、二人は言われるままに降りて行った。


 カンカンと足音を立てて下まで降りると、蛍光灯が一定間隔に点いているコンクリートの廊下があり、その先には扉が見えた。


 扉の向こうに黒幕連中がいるのだろうか、そんなことを考える六堂と室富。


 室富は後ろで銃口を向けている警備の男を見ようと振り向こうとした。すると

警備の男は、銃口を振り向こうとしている室富の頬に押しつけた。


「こっちを見るな、この場で殺されたいのか?」


「…落ち着けよ。俺の大事な拳銃パイソンは、丁重にしていただいてるかと心配になってね」


 銃口で頬が押しつぶされ、歯切れの悪い喋り方で室富は尋ねた。


「何だ?武器を奪って反撃でもする気か?」


「あ?いやいや、そんなつもりはねえよ」


 苦笑しながら、肩を竦める室富。


「それが懸命だ。ここには強化兵士が五十人はいる」


「そりゃまた、張り切ってるねぇ」


「…貴様は、セントホーク事件と、庄司本社ビル襲撃の容疑者だ。銃は、あとでその容疑をより確実なものにするための“証拠品″として利用する。当然、丁重に扱わせてもらう」


 警備の男は、更に強くマシンガンの銃口を室富の頬に押し当てながら言った。


「丁重に扱ってくれているならOK。気に入った…お前を殺すのは最後にしておいてやる」


 ニヤッと笑みを浮かべながら、室富は正面を向いて正面の扉に向かって歩き始めた。


 そのやりとりを見ていた六堂に「お前も行け」と、もう一人の警備の男が背中を銃口で突いた。


 廊下の奥まで来ると、扉の前に立っていた兵士二人がゆっくりと開けた。


 その中は、まるで高級ホテルにあるイベントを催す部屋と遜色ない空間だった。


 左右にはマシンガンを持った兵士が一定間隔に、二十人ずつ立っている。


 そして、大きく立派な会議テーブルと、それを囲うように座っている人間が二十人程が目に入った。


 座っている椅子は、背もたれの長い高級なものと伝わるが、一つ空席になっているようだ。


 その中に、江村や、さっき会ったばかりの副社長 弥の姿もあった。


――重役連中…か?あの空席は…前田の?


 六堂は訝しげな顔で、椅子に座る者たちをゆっくり見た。


 弥は立ち上がると、六堂と室富の近くまで歩み寄った。


 スターズブルーで会った時とは別人のような、憎たらしい表情をうかべている。


「この二人が例の?」


 弥に振られた江村は黙ったまま頷いた。


「へえ…こっちが、私立探偵。こっちが殺し屋。何だこの組み合わせ」


 弥はゲラゲラ笑い出した。

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