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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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第四十四話 知られた隠れ家


 夕方。埠頭、涼子所有の倉庫。


 水戸は、モニターに映し出される『Warning』の文字を見ていた。


 それが静かに、赤い色で点滅している。


 “庄司エンタープライズ”から身を守るために隠れていた倉庫内に設置しているセキュリティーシステムが作動したのだ。


 既に、外の監視カメラは破壊されているようで、送られてくる映像が映るはずのモニターは“砂嵐”になっていた。


「どうしたんですか、刑事さん」


 強張った表情の水戸が気になり、木戸家の主人、修一は声を掛けた。


「どうやら侵入者です」


「え!ええっ!」


 修一は顔を青くした。自分の家で起きたことを思い出す。


「落ち着いて…あなたのご家族と、私の家族、あとお爺さんを呼んでください」


 “ここ”は安全、涼子からはそう言われていて、確かにいくらか安心していたが、水戸は警戒心は解いていなかった。


 すでに武器庫にあった防弾ベストにショットガン“レミントンM870”を用意し、スラッグ弾が装填済みだった。


 そして水戸は、事前に倉庫内でどこが一番安全か涼子に聞いて確認していた。


 この倉庫にはいくつか部屋があるが、かつて六堂が涼子に“扱かれた”という部屋は扉がもっとも頑丈だという。


 そして排気システムがあり、催涙ガスを放たれても、充満しにくいようになっていて、電気も予備電源が確保してあるため、暗くしてからの奇襲は出来ない。


 直接対決になることは必至だった。


――たくっ…どうやってここを知ったんだ…


 今回は前の住宅街とは異なり、本格的にこちらの命を消しに来るであろうと水戸は考えていた。


 修一が家族たちと、そしてホームレスの老人を連れて集まると、水戸が全員にこの倉庫内に侵入者がいることを簡単に説明した。当然、皆不安な表情を浮かべる。


「…侵入者は私が食い止めますので、皆さんはその部屋に隠れててください」


 水戸は泣きそうな妻と子供二人を抱きしめた。


「大丈夫、俺が必ず守る」


 子供たちと優しくグータッチをする水戸。


 皆が通路から、その部屋に向かうのを見届けると、水戸は深呼吸をした。


――わざわざ監視カメラを破壊したんだ、“透明な奴”ではないだろう。となると、あの目出し帽の兵士か…


 木戸宅でやられたことを思い出す水戸。戦闘能力と、痛みへの耐性は常人のそれとは異なることは身に沁みていた。


 今度はやられまいと自らに言い聞かせて、ショットガンを強く握りしめて、部屋の外に出たのだった。


 緊張感高まる中、銃口を正面に構え、侵入者がいるはずの広い大部屋に向かって歩を進めると…




 バンッ!ババンッ!バンッ!

 ダダダダダダッ!

「ぐわっ!」


 複数の銃声と、声が聞こえてきた。


――な、何だ!? 撃ち合い??






― その三分前… ―


 暗くなるのが早い冬の夕暮れ時。


 人気のない埠頭。海の向こうに、行き交う船のシルエットが小さく見える。



 ボンッ!



 小さな爆発音が鳴ると、鋼鉄製の扉の鍵と、蝶番が破壊される。そして倒れた扉は地面にぶつかり、ゴオンッ!と鈍く重い音を立てた。


 プラスチック爆弾で倉庫の出入り口を破壊したのは、戦闘服に目出し帽を被った、四人の男たち。


 ここに“ターゲット”がいる可能性があると、大佐から派遣された“部隊零”の戦闘員たちだ。


 その中のリーダーが声を出さずに“GOのサインを出すと、全員、近接戦闘用の最新のサブマシンガン“APC10”を構えて建物の中に入った。


 物資の置いてある、広い空間に素早く展開していく四人。


 彼らは、見つけ次第ターゲットとその関係者を全員殺せとの命令を受けていた。


 “ターゲット”とは、庄司エンタープライズ企画六課が、防衛庁副長がリーダーとしているプロジェクトから受注し、極秘に開発している兵器について、少しでも見た者、情報を聞いた者たちのこと。


 戦闘員四人がそのまま更に奥へと進もうとした、その時だった。


 建物の外から、大きなエンジンの音が近づき、けたたましいブレーキ音が響いた。


「…!」

「…!」

「…!」

「…!」


 男たちは一斉に振り返った。


 リーダーが“外の様子を見て来い”という指示をサインで出すと、一人の戦闘員がサブマシンガンを構えながら破壊した扉の外へと向かった。


 残った三人は、命令を続行するためにそのまま中へ進もうとした。


 しかし…


 ババンッ!ババンッ!ババンッ!


 外から銃の発砲音が連続して響いた。自分達が装備しているサブマシンガンの音ではないことに気づく三人。


 外に様子を見に行った戦闘員は、弾丸を何発も喰らいながら入口から勢いよくよろめきながら、入ってきた。


 防弾ベストを着用してるとは言え、その数、威力に、思い切り倒れた。


「な、何だ、一体!?」


 大の字で倒れる部下の姿に驚くリーダー。だが、更に驚くのは次の瞬間だった。


 長い髪を靡かせながら、風のごとく倉庫に入って来た女性。ブラウスの上からダブルショルダーホルスターを装着した女性だ。


 倒れた戦闘員はうめき声をあげながら、辛うじて起き上がろうとするが…


 ババンッ!


 女性は持っている両手の拳銃を左右同時に発砲し、その戦闘員の頭を撃ち抜いた。


 タイトスカートにヒール。とても機敏に動ける格好には見えないが、空間内に広く展開してる戦闘員たちに向かって、左右に腕を広げて発砲しながら、物凄いスピードで走って来た。


「敵襲!応戦!発砲許可!」


 リーダーの指示で、戦闘員たちは一斉にその女性向かってマシンガンを発砲した。激しい銃声が倉庫内に響き渡る。


 カカカッ!とヒールの激しい音が立てながら走る女性のそのスピードたるや、戦闘員たちの銃口が定まらない。


「何だこいつは!人間の動きじゃないぞ!」


 戦闘員の一人は女性の動きに驚愕した。


 ババンッ!


「ぐわっ!」


 女性が左右二丁の拳銃を撃つと、驚愕した戦闘員の両膝が撃ち抜かれた。崩れ落ちる戦闘員。


「くそっ!」


「落ち着け!相手は一人だ!挟み撃つぞ!」


 残った二人の戦闘員は、女性を左右から狙い撃ちしながら、距離を詰めた。


 二人の弾道を読んでいるかのような動きで女性は体を捻って、鉄柱に隠れ、攻撃を防いだ。


「よし、追い詰めた!一気に始末するぞ!」


 二人の戦闘員は、発砲をしながら少しずつ鉄柱に向かう。 


 ところが、追い詰められたかのように見えた女性だったが、壁に掛けてある消化器に向かって拳銃を撃った。一気に、破裂した消化器から白い消化剤が吹き出て、部屋は何も見えなくなった。


「くそ!」


「慌てるな、一旦、振り向かず後退しろ」


 このまま女性を仕留めたかったリーダーだったが、空間で方向感覚を失うことを危惧し、一度、出入り口に向かって後退に転じた。


「あら、どこに行くのかしら?」


 二人の戦闘員は、背中に冷たいものを感じた。今、間違いなく正面の鉄柱にいた女性。それが、いくら消化剤で周囲が見えないとはいえ、まさか真後ろにいるとは、信じられなかった。


 バンッ!バンッ!


「あっ!」

「おごわっ!」


 至近距離から、背中を撃った女性。防弾ベストを着ているために、死んではいないが、二人は勢いよく倒れた。


 女性は二人の元にカツカツと足音を立てて歩み寄り、一人に一発ずつ、左右同時に頭を撃ち抜き、止めを刺したのだった。


 倉庫の排気システムで消化剤はすぐ排出され、見えるようになると、血の跡と、三人の遺体がはっきり見えた。


「…ば…馬鹿な」


 両膝を撃ち抜かれた戦闘員は、その様を見て、起きていることに理解が出来ないでいた。


 そんな男に近づくと、女性は銃口を向けた。


「貴様、何…者だ?」


「あんた、どうせ脅しても何も話さないんでしょ?話してくれるなら、私のこと教えてあげてもいいわよ」


 苦しそうに笑う男は、首を横に振った。


「そうかい…。何も、言う気は…ない」


「じゃあいいわ」


 バンッ!


 容赦無く頭に一発、止めを刺す女性。


 倉庫内を見渡し、気配がないことを見定めると、両手の拳銃を左右のホルスターのそれぞれしまった。


 ふうっと、ため息をつく女性。その顔は、今ここで銃撃戦を繰り広げたとは思えないほど、涼しげだ。


 そこに一人の男が現れた。

 

「…じ、巡査部長!」


 奥からショットガンを手にした水戸だった。その女性の姿と、戦闘員の遺体を見て、目を丸くした。


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