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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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第四十一話 依頼遂行のための準備



「防衛庁…?そんなところが絡んでるのか!」


 スターズブルー、スタッフルーム。


 室富の話を聞いている六堂は、事件の黒幕に驚いた。


「正確には防衛庁の力を持った人間だ」


 室富は煙草の箱をポケットから取り出し、一本口に入れようとしたが、点滴に繋がれ寝ているジーナを見るなり、飛び出た一本を箱に戻してテーブルに置いた。


「だが、俺の受けた依頼は、セントホークでの実験阻止、兵器破壊、使用者を殺すことだからな。防衛庁なんぞは、そこまで関係ない…と思ってたんだが…」




1999.11.28 -SUNDAY-


 十七時過ぎ。

 日は既に沈み、少し強い冬の風が肌に痛い。


 少し休んだ後、室富は街の情報屋と、武器を闇で売買している人間に当たった。


 どの国にも裏社会の情報屋はいて、だがそれもピンキリだ。


 室富はロスで、高額を求められる一流の情報屋ラング、通称“ Catch the fish”にいつも頼っているが、そのラングから東京における信頼に足る同業者を電話で紹介してもらった。


 今回の件は、ジョーのためにも確実に“目的を果たせることだけ”を考えないといけない。そんなことから、東京でも会うことも難しい“桐谷”という情報屋から、死んだ四人の人物について聞き出していた。


「室富か…、日本ではあまり知られていないが、アメリカ裏社会における伝説の男…そしてラングの友人と聞いて驚いたよ。会えて光栄だ」


 思っていたより若い、茶髪の男。桐谷とは銀座の料亭“藤原屋”の個室で会った。


 もっとガラの悪い、物騒な場所で会うかと思っていた室富は、慣れない日本の料亭に少し落ち着かない様子を見せた。


 桐谷はまともなスーツを着て、背筋もピンとし、おちょこで日本酒を呑むの様も手慣れている感じだ。


 もちろん室富は、酒は遠慮した。


「意外かい?こんな場所で」


「…いや、こういう店は慣れてないのでね」


「そうか。日本ではこういう所は、“悪い人たちが悪いお話に使う”ことが多くてね。特に偉い人が多いので…裏路地や安宿なんかで秘密の話をするより、よほどいいんだ。ビールより日本酒が好きだしね、僕は」


 桐谷の話によると、今夜はここで衆議院と大企業の社長が、そしてメガバンクの常務と大手ホテルの専務が、悪巧みの密会をしているらしい。


「大した情報屋だ…」

 

 そんな桐谷から聞き出せたのは、ハイウェーブからの依頼を受けた四人の死因と、その場所だった。


 新宿の裏通りで、ナイフで胸部を突かれ死亡していた黒木という男。


 千葉埋立地の倉庫街で同じ手口で殺された木口という男。


 そして新東京の建築中の倉庫内で遺体が発見されたジャッド兄弟は銃弾を頭部に受けての死亡。


「“この件”は警察もロクに捜査していないんだ。もちろん、社会にとって不要な連中だ。死んでも困ることもないのだろうが、どうも意図的に捜査を打ち切った感が否めないと、僕の警察内にいる友達は言っててね」


「意図的に?」


「あまり深く捜査されたくないん輩がいるんだろうな」


「…警察が」


「わずか数週の内に、この四人が殺されるって、我々の世界においては結構凄いことなんだけどね。間違いなく、った奴は同一人物か、同じ手口を使ったかだ」


 その話を聞き室富は不審に思った。兵器の試験使用と聞いた話と違う。


――捜査打ち切りも気になるが…四人の死因が、ナイフと銃だ?おかしい…


「意外な顔をしているね?」


 疑問を感じている室富の表情の微妙な変化を読み取る桐谷。


「まあな…」


「そうだ…あとおまけだが、杉並区上萩の裏路地で身元不明の白人の遺体が発見されているらしいが、僕はこれも四人と同じ奴に殺されたと見ている」


――身元不明の白人…、ジョーか?


「遺体からは、身元の確認が出来なかったらしいが…ハイウェーブが、接触した人間にロディ・バーネットという殺し屋がいる。おそらくその遺体はそいつだろう」


 白人の遺体は遺体安置所に収容されていると聞いたが、室富は遺体の確認より武器の入手を優先した。


 料亭を出た足で、そのまま風俗街へと赴いた。


 室富は、来日の際、愛用の回転式拳銃パイソン二丁のみを持ち込んでいたが、大掛かりな仕事をこなす為の武器は持っていなかった。

 

 そもそも海を渡るのに武器を持ち出すのは難しい。


 世界でも名を馳せた殺し屋“ジャッカル”は、運送ルートを上手く使っていたというが、海を跨いでの仕事をあまり請け負わない室富にそのやり方は好まない。

 

 頼んだ武器を入手出来るルートを持った人間もいるが、今回は時間がない。


 在庫を待ち合わせ、売買している人間に直に購入する必要があった。


 桐谷からは、信頼の出来る武器商人の紹介も受けていた。もちろん、プラスαで料金を支払ってのことだ。


 その武器商人と会うために、室富は、新宿の風俗街にある“特殊な趣味“の客が集う店、“Nature

”に向かった。


「やあ、ヤズはいるかい?」


 店の経営者、矢澤やざわこと通常“ヤズ”。


 風俗店の裏で、武器の売買を行なっている。相場より高いと聞いたが、中国人マフィアあたりと取引をするより、信用出来るとの話を聞き、選んだのだ。


 妙な服装をした受付の女は、室富から差し出しれた、桐谷のメモを見ると、内線を掛けた。


「ボスが会ってくれるそうです。入ってください」


 店内は薄暗く、如何わしさ漂う人間で溢れていたが、矢澤の武器売買専用の部屋は、明るくすっきりしていた。


 無機質な雰囲気のその部屋に並ぶ武器、武器、武器。壁に、棚に、あらゆる武器が並び飾ってある。


「やあ、あんたが室富かい?」


 矢澤だ。


 ストリートギャング風なファッションの男。


 肌は浅黒く、首元や、腕から見えるタトゥーと、派手なレインボーカラーのパーマを掛けたヘアスタイルは、日本人っぽくない雰囲気だ。


「さっき桐谷から連絡が来たよ。好きな物を選んでくれ」


「そうさせてもらうよ」


 室富は、その部屋にある武器を見て歩いた。


 その中で目についたは“バレットM82-mini”

スナイパーライフルだ。


 これまでの話を総合的に考えると、わざわざ“兵器を持った奴”に近づくリスクを犯すことは考えにくかった。


 どんな兵器かは判らないが、遠距離から使用者を仕留める方向で考えるのが賢明だと考えた。


 四人の死因には疑問は残るが。


――兵器の破壊はそのあとだろうな…


「熱線暗視装置型スコープはあるか?」


 室富が尋ねると、矢澤は笑いながら、ガラスのショーケースを指差した。


「じゃ、バレットとそいつをくれ。弾は二パッケージ」


 矢澤が、側の部下に指示すると、ライフルバッグが用意され、室富の頼んだ“品”を準備し始めた。


 そして矢澤は、手榴弾を一つ、テーブルの上に置いた。


「これは?」


「クリスマスセールは十二月からなんだが、あんたにはこれを一個サービスしておくよ」


「気前がいいな」


「相手によるよ。あんたは特別だ。俺は人を見抜くのが得意でね。あんたは恩を売っておいて損をさせないと踏んだ」


「ありがたいね。じゃ、サービスついでに、車を一日、貸してくれないか?都内近郊をまわるだけだ、傷つけないし、満タン返しする」


 室富がそう言うと、矢澤は引き出しから出したキーをジャラッと出して投げた。


それをキャッチした室富。

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