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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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第三十一話 逃げる

 明日美は自分の“AK”を肩に掛け、倒れた警備の持っていたライフル“ ステアーAUG2”奪い、マガジンポーチから予備弾倉を引き抜いて、自分の防弾ベストのポケットに入れた。


 そして体を低く車の陰に隠れながら、その場を離れた。複数の足音がこちらに近づいて来るのを察知したのだ。


「どうした、何があった?」


 他の警備たちが駆けつけると、物音の確認をしに行った隊員一名が、喉から

血を流して倒れているのを発見した。


「くそ!奴らか!」


 そう叫んだあとに、現場リーダーと思しき男が人差し指を振り回して、駐車場内の戦闘展開を指示し、無線で応援を要請した。


 明日美は自分の身を隠している車の陰から、移動している六堂がこちらを向くのが目に入った。


(急いで行って!)


 ジェスチャーと、口パクで力強くそう伝えると、六堂は頷き、自分の車に向かった。


「おい待て!そこ!」


 警備の一人が六堂たちを見つけた。


 明日美は奪ったライフルをその警備に向かって発砲した。


 タタンッ!と、乾いた音が地下駐車場に激しく反響する。


「あうわ!」


 六堂にライフルを向けた警備にヒットする。だが装着しているボディーアーマーは強力だ。悲鳴を上げ倒れるが、死んではいない。


「こっちだ、こっちにも仲間がいるぞ」

「狙撃されている!至急応援を!」

「何をしてる!応戦しろ!」


 警備たちが慌ただしく動き出す。


 だがパニックになる様子はない。とてもよく訓練されているのが明日美にも、六堂、室富にも見て伝わった。


「逃がさんぞ貴様ら!」


 警備の内の一人がライフル発砲しながら、六堂の車に迫って来た。


「っち!」


 室富は左脇のホルスターから、拳銃を取り出し発砲した。重い銃声と共に、迫って来てきた警備のボディーアーマーを貫通した。


「気をつけろ!報告通りにアーマーを貫通する弾を持ってる!」


 警備は強化プラスチックのシールドを用意し、六堂たちを追い詰めるべくフォーメーションを取ろうとしていた。


「おい、早く乗るぞ。逃げられなくなる」


 室富に急かされ、六堂はジーナを後部座席に乗せた。室富も反対のドアから後部座席に乗り込み、ぐったりしているジーナにシートベルトを着けた。


 六堂は運転席に座るとすぐにキーを回しエンジンを掛け、アクセル全開で急発進させた。


 キキキキキッ!とスリップ音を発しながら動き出す車は、容赦なくライフルを向け迫る警備たちを跳ね飛ばした。


「おい!ところで!“刀士”さんよ!」


「何だ!?」


「ビル内の緊急セキュリティーロックで、地下の出入り口も閉まってるんじゃあねえのか!?」


「それは多分大丈夫だ!」


 車は猛スピードで地下からの出口に向かう。


「本当か!?」


 室富は運転席と助手席の間から正面を覗いた。緊急セキュリティーシステムが作動したために、シャッターが下りているのが見えた。


「あのシャッターは突っ込んでも、突破できねーぞ!」


 室富は叫んだ。


 だが次の瞬間、シャッター側で爆発が起きた。一回ドン!続いてもう一回ドン!という音と共に火花が飛び散った。


 明日美だ。


 彼女が、さっき持ち出した二個の手榴弾をシャッターに向けて投げたのだ。


 完璧に破壊は出来ていないが、強行突破するには十分なダメージを与えた。


「いくぜー!」


 車がさらにスピードを上げて一出口に向かうと、警備たちが一斉に発砲し始めた。


 明日美は隠れている車の陰から、六堂たちへの射撃を軽減させるべくライフルを警備たちに一気に発砲した。


 そんな彼女を通り過ぎる車。六堂は、片膝を付いてライフル構えている明日美が目に入った。


「…すまん」


 車はシャッターの壊れた隙間を突き破り、擦れた車体から火花を散らしながら地上へと登って行った。


 地下から飛び出て勢いよく大通りに着地する。


「おわっ!激突!トラック!トラーック!」


 車が着した直後に、大型のトラックが迫り、室富は思わず叫んだ。


 衝突しそうになったトラックは急ブレーキをかけ、物凄いブレーキ音を立てた。そして低音のクラクションを鳴らしまくる。


「くっ…!」


 六堂は、思い切りハンドルを切って車列の中に車を入り込ませるのに成功させた。見事なハンドル捌きに、室富は感心した。


 そしてそのまま、大通りを走り続けた。


 時刻は16時過ぎ。辺りは薄暗く、ビル群の西側だけを紅に染めていた。


「…助かったぜ」


 少しの沈黙のあと、室富はため息をついた。


 六堂はバックミラーでジーナの顔を見た。顔色が悪い。


「刀士さんよ」

「六堂だ」


 六堂は室富の声に被せた。


「…何だって?」


「私立探偵の六堂 伊乃だ。室富 雷朗」


 室富は片眉を下げ、(ああそうかい)と言いた気に肩を竦めた。


「探偵さん…急いで病院に行かないと、ジーナが死ぬぜ」


「病院には行かない」


「…なぜだ?」


「事件の黒幕は、一連のことに少しでも関わってる人間は全て消そうとしている。病院にいては、必ず刺客が送られる」


「じゃあどこに行く?」


「隠れ家があるにはあるが…まずは俺の事務所に行く。ここからなら、20分くらいで着く」


「事務所だ?」


「隠れ家までジーナが持たない。事務所に知り合いの医者を呼んで、容体を安定させる」


 六堂の考えに、とりあえず従うことにした室富は、一息つこうと、上着のポケットから煙草の箱を取り出した。


 そこから一本を口に咥え、火を点けようとするとが、道路の後方が騒がしいことに気づいた。


 気になった室富は火のついていない煙草を咥えたまま振り返った。


「……お、おいあれ」


 煙草を思わず口から落とす室富。


 六堂はサイドミラーとバックミラーで後方を確認した。


「…まさか…奴らか?」


 後方から、車列を掻き乱す勢いで、二台のSUVが青と赤の回転灯を照らしながら、猛追してくるのが見えると、六堂はシフトをスポーツモードに切り替えて、追越車線に入った。


「捕まってろ」


 タイヤから煙を噴き上げながら、走行している車と車の隙間、また隙間に入って逃げる六堂。


 ダダダダッ!!!


 後方のSUVからライフルを撃ってくる追っ手。


「嘘だろ!他の車もいるだろーに」


 遠慮なくこちらに向けて撃ってくる警備たち。半国家権力という大義名分なのだろう。


「とにかく逃げきる!」


 そう言い、赤信号を無視して、左折する六堂だが、ドリフト気味に急ハンドルを切ると、突然物凄い破裂音がした。


「くそ!何だ!」


 ハンドルを取られる六堂。


 もう少しで、事務所に着くというのに、後部タイヤがバーストしてしまった。


「…今の弾には当たってない。さっきの地下駐車場で弾がタイヤを掠めていたのかもしれない、くそ」


 考える暇はない。すでに、追っ手の車が近くまで迫っていた。


「降りるぞ」


 六堂は車を道脇に停車させると、車を降りた。


 室富は、気を失いかけてるジーナの腕を自分の肩に回して、無理やり立たせた。


「どうする?どこに逃げる?」


 ここは青山西通り。


 広大な霊園に逃げ込むか、入り組んだ脇道に逃げるか考える六堂。


 ふと、立っている歩道の足元に、半地下のイタリアン料理店を見て、逃げ場所として思いついた所があった。


「こっちだ、ついてこい!」

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