甘い熱の残響と、冷たい嫉妬
車がマンションの地下駐車場に滑り込んだ時には、私の意識はお守りの振動で朦朧としていた。
帰宅の車中、ヒロちゃんにスマホのスライダーを少し上げられただけで、私の中に仕込まれた「お守り」は容赦なく痺れるような熱を吐き出し続けていたからだ。
「花恋、着いたよ。……立てそう?」
助手席のドアが開かれ、ヒロちゃんが覗き込んでくる。
「……っん……ひ、ヒロちゃん……?……っ///」
「ふふ、可愛いね。我慢できたご褒美だ」
ヒロちゃんは嬉しそうに目を細めると、私を軽々と横抱き——お姫様抱っこで抱え上げた。
地下駐車場からエレベーターに乗り、最上階の501号室へ。
二重の防音扉が重い音を立てて閉ざされ、カチャリと二重の鍵が下りる。
そのままベッドルームへと運ばれ、キングサイズのベッドの上に優しく降ろされた。
「車の中で、ずっともどかしかったんでしょ?……いいよ」
ヒロちゃんの手が制服のスカートを押し上げ、下着のポケットから震える玩具をそっと取り出す。それと同時に、彼の手指が濡れそぼった私の蕾を直接弾いた。
「あ……っ! ヒロちゃん、やだ……っ、あぁっ!」
車内で限界まで高められていた私の身体は、彼の優しい指使いにあっけなく跳ね上がり、激しい波に呑み込まれた。指で掻き出される蜜をすすられ、何度も絶頂を繰り返すうち、私は甘い痺れの中で意識を失っていった。
◇
〜弘樹視点〜
すーすーと規則正しい寝息を立てる花恋の頬を、指先で優しくなぞる。
愛おしくて、可愛くて、たまらない。
海外から帰ってこない関心のない両親のせいで、広い部屋で一人ぼっちで泣いていた小さな花恋。
俺が作った料理を美味しそうに食べ、俺が買い与えた服を疑いもせず着て、俺を「完璧なお兄ちゃん」と信じ切っていた花恋。
あの時、俺は心に決めたんだ。花恋のすべてを俺が満たしてあげる、と。
修学旅行で他の男に無防備な姿を見せ、連絡先を交換した時は殺意すら湧いたが、こうして501号室に閉じ込めてしまえば、花恋は俺のものだ。
毎朝お守りを仕込み、車の中で熱を上げさせ、俺の手なしでは絶頂すらできない身体にしていく。
(もっと……俺色に染めてあげなきゃ)
「んっ……?……」
俺は半分意識が覚醒した花恋の身体を抱き上げ、ベランダに併設されたシャワールームへと運んだ。
いつも通り優しく身体を洗い流してやる。
意識がはっきりしてきた花恋は、ぽやぽやとした瞳で「ヒロちゃん……お風呂、入れてくれたの?」と甘えてきた。
その無垢な瞳を見つめながら、俺は用意しておいた『服』を取り出した。
◇
「はい、今日はエプロンだよ。一緒に和食を作ろうか」
お風呂上がり、渡された服を見て私は言葉を失った。
それはベビードールではなく、繊細なフリルがあしらわれた透け透けのシースルーエプロンだった。前も後ろもほとんど隠れておらず、下着すら着けていない私の素肌がそのまま透けて見えている。
「ヒロちゃん……これ、ほぼ裸だよ……///」
「ふふ、すごく可愛いよ。俺の前ではこれで十分だ」
キッチンに並び、出汁巻き卵と肉じゃがを作り始める。
だが、料理どころではなかった。後ろからヒロちゃんがぴったりと密着し、私の腰を抱きかかえてくるからだ。
「ヒロちゃん、待って……危ないから……あ……っ!」
「いいよ、そのまま続けて? 俺も花恋を手伝ってるんだから」
そう言いながら、ヒロちゃんは自身の硬くなった熱を、私の太ももの内側に挟み込んできた。
内腿の柔らかい皮膚に擦り付けられる。
「んぁ……っ! ひ、ヒロちゃんの、が擦れて……熱い……っ///」
「花恋の内腿、すごく気持ちいいよ……ほら、手元が狂わないように集中して?」
内腿を滑る熱い感触に加えて、大きな両手は私の胸元をまさぐる。
耳元には後ろから吹きかけられる甘い吐息。
出汁巻き卵をひっくり返す手元はグラグラと揺れ、私は料理を作り終える頃にはすっかり息を荒らげていた。
完成した和食をテーブルに並べると、いつものように私はヒロちゃんの膝の上に抱っこされた。
「はい、あーん」
「ん……っ、おいしい……」
「えらいね。出汁巻き卵、上手に焼けたね」
一口食べるたびに頭を撫でられ、同時に彼の手がエプロンの裾から忍び込んで下半身を甘く弄ぶ。
内腿から伝う快楽の蜜を、ヒロちゃんは指で掬い取り、そのまま舌でペロリと舐めとった。
「ん……甘いよ、花恋」
「ひぁっ……///」
屈辱と甘い快楽に頭が痛くなりながらも、私は彼の膝の上から逃げ出すことができなかった。
◇
夕食後、前の締まらないカーディガンを羽織り、そのままリビングのソファでヒロちゃんの膝の上に乗せられたまま、まどろんでいた時だった。
ピロン、とローテーブルに置いた私のスマホが鳴った。
ヒロちゃんの手が伸び、画面が開かれる。
そこには、友達の由香からのグループメッセージが転送画面として映し出されていた。
『ていうか花恋! 今日寺島くんが「花恋ちゃんと最近連絡取れないんだけど、何かあったのかな」って凄く心配そうに聞いてきたよ〜!』
一瞬で、リビングの空気が凍りついたーーー
私の背中を抱いていたヒロちゃんの手の力が、すっと抜ける。
彼を見上げると、さっきまで優しく細められていた瞳から完全に光が消え、漆黒の闇が広がっていた。
「……寺島くんが、連絡取れないって心配してたんだ?」
「ひ、ヒロちゃん……っ! 私、何もしてないよ!? 学校でも寺島くんとは喋ってないし……っ!」
「そっか。……やっぱり、学校に行かせると余計な虫がよってきちゃうね」
ひんやりとした声が、耳元に落ちてくる。
ヒロちゃんは私を抱き上げると、ゆっくりとした足取りでベッドルームへと向かった。
「お仕置きの回数を、もう少し増やさないとダメみたいだ」
「やだ……ヒロちゃん、待って……っ!」
キングサイズのベッドに投げ出され、あの時以来の手枷をはめられる。
私の叫びはいつしか嬌声となって、重い防音扉の奥へと吸い込まれていった。
◇
暗闇の中、何度も何度も狂おしく求められ、泣き叫ぶ私の頭を抱きしめながら、ヒロちゃんは最後にこう囁いた。
「明日からの学校のルール……もっと厳しくしようね、花恋」
逃げ場のない甘い地獄の深淵に、私は再び引きずり込まれていくのだった。




