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9話

 まだ日も登ってない朝早い時間帯。

 住民だけでなく町そものが眠っているかのように静かな住宅街。

 パーカー姿をした一人の少年が静寂の中ランニングしていた。

 赤染月雄。彼は普段の野暮ったい眼鏡を外し、髪も後ろに結って素顔を晒している。


 これが月雄の日課。

 筋トレとランニングやナイフの素振りなど。

 紅マフラーとして戦う為の体力作りや技術を磨いている。


「あ、おはようございます!」

「おはよう高馬こうまさん」


 十字路を進むタイミングで女子が話しかける。

 ジャージ姿の健康的な容姿と美貌の少女。

 高馬麗美。月雄のクラスメイトだが、彼女は今一緒に走っている少年が同じクラスだとは気づいていない。

 しかしそれも仕方ないであろう。

 今の月雄は普段とかけ離れているのだから。


 それなりに整った容姿。

 いわゆるしょうゆ顔のイケメンといったところか。

 前髪で顔の輪郭が分かりにくかったが、今はその小顔がハッキリと見える。


「今日も精が出ますね月雄さん」

「まあ、日課だからな」


 軽い雑談を時折交えつつ走る二人。

 これが月雄の日常。こうして彼の日常は始まる。






 日課を終えて登校する月雄。

 いつも通りキッチリきた制服に鬱陶しい髪、分厚い眼鏡を掛けている。

 月雄は一緒に登校する友達はいない。今日も一人で通学路に付く…。


「おっはよ~月雄(ツックー)!」

「………」


 突然、背後から声をかけられる。

 朱然茜。彼女はフランクに月雄へ挨拶した。

 月雄はソレを無視してスタスタと歩く。


「ちょっとツックー無視しないでよ!」

「ツックーって俺のことか?」


 月雄の肩を掴む茜。

 流石にこの状況では無視できないと分かったのか、月雄は鬱陶しそうに反応した。


「そう、月雄だからツックー。いいあだ名でしょ?」

「そうか。好きにしろ」


 茜を払いのけながら歩きだす月雄。


「乗り悪いな~。まあいいや。それより今日の昼休み、屋上で待ってるから昨日の答え聞かせてね」


 それだけ言って茜は去ってった。

 遅れて、月雄は自分が周囲に注目されていることに気づいた。

 茜は学校内だけでなく町でも有名人であり、女子生徒たちにとって憧れの存在。

 対する月雄は目立たず、どちらかというと陰キャとして避けられている。

 共通点がないどころか正反対の二人。なのに茜は津古雄に対してあだ名をつけて親しそうに話している。

 それは目立つだろう。


「っチ!」


 小さく舌打ちして歩くスピードを速くする月雄。

 朝から嫌な目に遭った。そう言いたげに。





 昼食後、月雄は言た通り屋上に向かった。

 普段はカギが掛かっているのだが、 茜が手を回したのか開いている。

 戸を開けて屋上に出ると、寒いのかパーカーを着ている茜が先客として待っていた。

 今はまだ四月。寒いのも仕方ないだろう。


「じゃ、協力するってことでよろしくね」

「ああ」


 結局、月雄は茜と協力することになった。

 茜は月雄の秘密を握っているのに対し、月雄は相手の情報を何も握ってない。 最初から選択権などなかった。


「やった~!ありがとツックー!」

「抱き着くな鬱陶しい」


 そう言って月雄に抱き着く茜。

 彼女の放漫が胸が当たり、その感触に対して反射的に反応してしまうが、経緯が経緯なので純粋に喜べない。ソレに何より照れくさい。

 月雄は感触を楽しみつつ、煩悩を振り払うように距離を取った。


「………やっぱ今は普通の人間ね~」

「なんだこのパーカー?」


 そう言って茜はパーカーを脱いで月雄に押し付けた。

 裏面にびっしりとお札が張られたパーカー。

 不気味な様に若干ひきつつも月雄はソレを受けとった。


「怪異避けのお札。その辺の富裕例にも反応するほど敏感なんだけど、今のツッキーには全然反応してない。…ねえ、一度あの姿になってよ」

「………怪変」


 紅マフラーの姿になる月雄。

 数秒程かけて怪変を完了させる。

 瞬間、パーカーのお札から不気味な青い炎が発生。

 一瞬で燃え散り黒い灰となって風に流された。

 しかしパーカーは無事。焼け跡一つ付いていない。


「やっぱしね。ツックーは普段人間だけど、その姿に成る事で怪異に変異している。ねえ、もう一度人間に戻って」

「………」


 仮面を外して怪変を解除。

 今度はポケットからお札を出して月雄に押し付ける。


「やっぱし。普段の姿だと結界も厄除けも通じない。今のツックーは邪気の欠片もない百パー人間よ」

「さっきから何なんだ。怪変するのもタダじゃねえんだぞ」


 面倒くさそうにする月雄に構うことなく茜は勝手に話を進めた。


「じゃあ次はあーしの番。あーしの秘密教えたげるから心霊スポット行こ」

「は?」


 こうして、俺は今日も心霊スポットに行くことになった。


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