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6話

「あーしのダチから離れろ!」

「ぎゃあああああああ!!!」


 覗き込む老人目掛け、朱然が塩をぶっかけた。

 掛けられた箇所を抑えながら落ちる老人。

 その間に朱然は戸を蹴破って入り、蹲る友人を抱えて脱出。

 一目散に逃げだす。


「あ、アカネちゃ…」

「後で!今余裕ない!」


 必死に体を動かす茜。

 彼女が如何に優れた運動能力を持っているとはいえ女子高生。

 人一人抱えて走るのはキツイ。

 増して、何かから逃げる為に焦りながら全速力で走るなど以ての外である。


「ちゃんと来てよ…」


 戦力は別にいる。

 あの老人―――怪異に倒する最強のカウンターが。





「………どういうことだ?」


 急いで廃墟の中に入り込むが、怪異どころか朱然達の気配すらしなかった。

 廃墟にいるのは朱然を除いて二人。怪人アンサーの時にいた子たちの大半は怖がってこなかったらしい。

 あんな派手な格好をした女子なんて簡単に見つかるはずなんだが…。


「(それになんだ?気配するのに全く怪異に会わない)」


 確かに怪異はいる。

 しかし姿どころか影やその形跡すら見当たらない。

 奴らの嫌な気配はビンビンするのに、肝心の発生源が全く見つからないのだ。

 どういうことだ。こんなに気配が濃いのに、何で遭遇しない?

 いや、それよりも早く朱然たちと合流して連れ出さないと。

 このままじゃあいつ等が先に怪異と遭遇してしまう!


「ん?」


 胸ポケットに入れた携帯が鳴る。

 こんな時に誰だ?疑問に思いながらも俺は通話した。


『あ、繋がった?今まだ廃墟にいる?』

「ッ!? お前、朱然か!?何で俺の電話番号知ってる!?というか今どこだ!?」


 コイツには電話番号なんて教えてない。なのに何で俺の携帯電話に掛けられた?


『そういうのいいから。どうせ戻っても怪異が見当たらないから困ってるんでしょ』

「ッ!? なんでソレを!?」

『だからそういうのいいって。今から“招く”からちゃんと答えなよ?』

「招く?何のことを言ってる?」


 コイツ、こんな緊急事態に何ふざけたこと言ってるんだ?

 お前の安全、下手すりゃ命に関わることだぞ。

 さっさと何処にいるのか話せ!


『だから合流するためにも招く必要があんの。で、どうなの?こっちに来るの?来ないの?』

「ああ行くんだよ!行くからその場所を教えろ!」


 俺が電話越しに怒鳴ると朱然が笑った。


『言ったね?これで“縄張り《テリトリー》”に入れるわ』

「あ?何言ってる?いい加減にしないと怒る…ぞ………」


 気が付くと、俺は別の場所にいた。

 さっきと同じ空間。だというのに何処か違う。

 そして何よりも、怪異の気配がしっかりと感じ取れた。

 何がなんだか分からんが、元がいるなら話は簡単だ。

 今からぶっ潰しに行く。


 虚空に手を伸ばす。

 途端、俺の意志に呼応して仮面が現れる。

 ソレを顔に貼り付け、一言呟く。


「怪変」


 瞬間、霧のようなものが俺の体を包み込む。

 ソレは俺を別の存在へと書き換えるモノ。

 人間から怪異へ変えるものだ。


 黒い霧が学ランや学帽などに変わり、今の姿を象徴する赤いマフラーが巻き付く。

 変化が完了した証を示すかのように学ランに走る赤いラインと赤いマフラーが赤く光る。

 超人紅マフラー。ソレがこの姿に成った今の俺の名だ。


 怪異の気配がする方目掛け駆け出す。

 スピード自体は変わらないが、この姿になると力が溢れていつも以上に早く感じる。


 走っていると、朱然の姿が見えた。

 すごい形相で何かを背負って逃げている。

 美少女がしちゃいけない顔だ。

 プライドが高くて己の美貌に絶対的な自信を持っていそうな彼女がするわけない表情。

 ソレだけ必死であることから状況はすぐに分かった。


「はあッ!」


 朱然の背後目掛け飛びかかる。

 ギィギィと嫌な金属音が、カラカラと軽い音がする先に。

 ソイツこそこの状況の現況だ。


「ぐおあッ!!?」


 何かを蹴り跳ばす感触がした。

 車椅子に乗った老人のような怪異だった。

 外見はひ弱そうだが、これでもかなり危険な存在だ。油断するとこっちがやられる。


「やあ、おじいちゃん。車椅子でご機嫌のところ悪いね」


 敢えて軽口を叩く。

 己を振るわせ、演じきるために。

 今の俺は俺じゃない。俺にとっての理想のヒーローだ。


「ウチのヘルパーはおさわり高いぜ?」

「んなサービスしてねーし!?」


 うっせえ。おさわりが嫌なら最初からそんな露出の多い格好するんじゃねえ!


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