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12話

「で、俺がここ来ても何も無かったのに、お前が来たら何で反応したんだ?」


 橋の上の悪霊を倒した後、朱然と合流。

 約束通り怪異について話してもらうことにした。

 場所は朱然が用意した車の中。

 よく漫画やアニメで見るような長い外車ではなく普通のワゴン車。

 まあ、今時あんな燃費悪そうな車に乗らないか。

 朱然の隣の後部座席に乗ると、ゆっくりと発進した。


「あーしね、霊媒体質…いわゆる引き寄せ体質ってやつでさ、妙なのが寄ってくるときあんのね~。だから怪異にとっては魅力的な餌ってわけ」

「その割には普通に生活してたようだけど?」


 引き寄せ体質か。聞いたことがあるぞ。

 確か、霊的なものに好かれやすく、そういったトラブルに巻き込まれやすいといったものだった。

 けど、それなら日常生活に支障をきたすはずだ。

 なのにコイツはそういった様子もなく、むしろ学年トップカーストかつ読者モデルなんて派手なことまでしてる。


「あーしの家ってそういうのに詳しくてさ、結界用や厄除けのお札やお守りとかいっぱいあんの。けど無い時もあるし、第一こっちが悪くないのにビクビクするとか嫌じゃん。だから…」

「だから殴られる前に殴りたくて俺と手を組みたいってことか」

「そゆこと!怪異って成長して力付けると碌なことにならないからね~。だから殴られる前に殴ろうってわけ!」


 なかなか攻撃的な考えだな。

 まあ嫌いじゃないが。俺に害が及ばない限り。


「今度はこっちが聞く番。ツックーって倒した怪異“食べてる”よね?」

「………抑止剤代わりだ」


 俺が怪異と戦っている理由。

 ソレは何も善意だけじゃない。

 怪異を倒すことでその力を取り込み、呪いの進行を抑える為だ。

 何故そんな知識があるのかは俺にはわからないが、そうしなくてはいけない事は理解出来た。

 おそらく怪異としての本能だろう。


「やっぱ赤マントとは違う怪異みたいね。完全に別物になってる。というか怪異の範疇からかなり外れてるし」

「あ、やっぱ俺って怪異としてもおかしい?」

「メッチャおかしい。お魚とイルカぐらい違う」


 断言する朱然。

 全然違うじゃねえか。それじゃあ別モンだろ。


「そもそも怪異って何だ?あいつらは何で人を襲う?」

「………怪異なのにそんなことも知らないの?」

「うっせえ!いいから答えろ!」


 蔑みではないが、信じられないといった目で見る朱然。

 癪に障ってつい怒鳴ってしまったが謝るつもりはない。

 こっちは素人だって言ったばかりだからな。


「怪異は情報生命体なのよ。噂や伝説に人の念や死んだ人間の魂を核にして、存在を信じた人の念によって存在を確立するの」

「?」

「あ~もう!だから…」


 言ってることが分からず頭に疑問符を浮かべると、今度はノートを出して分かりやすく図解しながら教えてくれた。

 怪異は本来この世界にいない。ただの想像上の存在でしかない。

 だが、その想像でも条件が合えば形を成し、生命が宿る。

 人の恐怖や感情をエネルギー源に、噂や伝説などの設定を核にして、人々がその存在を信じることで誕生する。

 生まれた怪異は設定通りに行動する。己のエネルギー源である恐怖を取り込み

更に存在を確立させるために。

 

「その理屈でいえば俺は何なんだ?俺は恐怖されるどころか感謝されてるぞ?」

「だからおかしいのよ。怪異なのに恐怖を集めるどころか人助けって聞いたことないわ。普段は怪異じゃなくて人間だし…ホントわけわかんない」


 朱然は髪の先端をいじりながらため息をつく。


「けど仮説は立てられるわ。多分ツッキーは他の怪異を倒して恐怖を取り込んでるのよ。肉食獣みたいにね」

「その理屈だと他の怪異は草食獣で人間は草ってわけか」

「そゆこと!で、ツッキーは食物連鎖の頂点ってわけ!」


 物は言いようだな。結局俺が人間ではないことに変わりないってのに。


「ということで、あーしは頂点のツッキーに怪異を貢ごうと思うの!あーしの人脈と資金力、この体を使って怪異取りまくってウッハウッハ!どう?悪くないでしょ?」

「何が貢ぐだ人聞き悪い。要は俺を利用して怪異をぶっ倒したいってことだろ?」

「え~いいじゃん。どうせツッキーも怪異食べなきゃいけないし、それならお互い利用した方がよくね?」

「………まあ、そうだな」


 コイツがどういうつもりで怪異を狩るのかは知らない。

 霊媒体質とかいうのだから、過去に怪異関連で嫌な目に遭ったり、何かしらの恨みがあって復讐したいという思いがあるのかもしれない。

 だがそんなことは俺にとってはどうでもいい。大事なのは俺に利があるということだ。

 コイツはかなり使える。現に俺が何度も行っておびき寄せなった怪異を簡単におびき出せたし、こうして夜中に車を用意出来たりしている。

 コイツがいればより怪異狩りは上手くいくだろう。

 ソレに・・・。


「…一人じゃないってのは、いいことだな」

「ん?なんか言った?」

「いいや、独り言だ」


 一人で出来ることには限りがある。

 だから、誰かと一緒ってのは悪くない。ただそれだけだ。


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