16話
魔人、あるいは混ざり物だとか言われるその種族は、基本的にその他の人間種に比べて扱いが悪い。畜生であるだとか魔物との混ざり物だと蔑視される地域もあるほどだ。特徴も種類ごとに違っていて、全てがすべて一括りに魔人と呼ばれている。
昔は魔物扱いされて虐殺すらされていたそうだが、犬や猫の特徴が出ている程度であればほとんど人間と変わらない。まあ我々はほんの少しの差で他人を迫害できる生き物な訳で。強いて言えば低めの知性と平均より高い身体能力。やっかむには充分だろうか。
表立っての迫害がない筈のこの国でも打ち捨てられた子供が居るのだから、もし人間至上主義を掲げるような国であればどのような扱いをされているのだろうか。何らかの働きが出来ない以上無駄な仮定、無意味な想像に過ぎない。
面倒を見るといっても、何の仕事もしない人間を養えるかと言えば微妙といえる現状。あくまでも世話役は仕事をしているのだ。左腕が動かず右足を引きずるような状態では出来て頭脳労働や受付業務だが、果たしてそれが可能かと言えば。
故に尋ねた。力が欲しいか、と。寿命を削ってでも、もう奪われないだけの力を付けたくないかと。その時点での成功率こそ確実と言えるものでは無かったが、将来的に予測される戦力が必要な事態、その備えの為にも有用な技術の実験。
この世界にはレベルが存在する。イメージとしては生物としての格の違いを数値化したようなそれは、別段高いからと言って誤って食器を握りつぶしてしまうような直接的な能力の向上とは直ちに結びつかない。
高レベルの存在になれば意図すれば鋼鉄も飴細工の様に扱えるらしいが、逆に同じようなレベルの生き物が同じ道具をぶつけ合えばその結果は単純な物理現象による結果と何ら変わるところではない。つまり、逆説的に。
元より高い身体能力があれば、レベルの差を容易く覆すことも起こりうる、という事である。それこそ2桁も差があれば難しいだろうが、よく訓練された兵士の方がレベルだけ上げた子供に負けないのは想像が出来るだろう。
レベルなど飾りとは流石に言わないが、純粋な肉体の強化は純粋な戦闘力の向上につながる。つまり脳のシナプス結合やら筋繊維の本数やら骨密度やら、およそ前世で聞きかじったような要素を片端から試した場合どうなるか。
魔法は万能ではない。だが過程と結果を知識として持ち、それを起こすためのイメージがあれば人体の改造も決して不可能ではない。削げた耳も、潰れた目も、再生治療というあやふやな知識と細胞の分裂という何となくのイメージで出来てしまえたのだから。
結果としては。技術こそ拙いものの、それをでたらめな身体能力で補う怪物が誕生した。調子を確かめようと軽く飛んだつもりで天井まで跳ね上がり、そこから衝突するのでなくスーパーボールの様に部屋を跳ね回ったのには二つの意味で驚いたが。
驚くほど向上した身体能力は、質量差さえ考慮しなければ恐らく前世の大型重量車両と相撲が出来るだろう。それほどまでに改造出来たのは元が人間と比べて頑丈なファンタジー種族だからか。更には驚くほどの身体の制御能力。
寝たきりだった人間が突然歩くとよろけるのは筋肉の衰えに加えてそれまでの自身の体の動かし方との誤差によるものが大きい。1割に満たぬ差ですら人間は満足に自身の体を動かすことが出来なくなる。それが逆なら壁に大きな穴が開いてもおかしくはない。
それがしなやかに衝撃を最低限まで殺しながら跳ね回る姿は、最終的に私のすぐ隣に着地して止まった事も加えて当初コントロールできなかったところを無理矢理反射でどうにかし、更にはこの短時間で適応してのけた事を示している。
ふと気が付く。既に一人で生きていけるだけの力を得た。それどころかこれまでの境遇を思えば人を憎み、復讐に身を焦がしてもおかしくはない。手始めに1人、もしその気になれば反応させずに屠れる距離に居るではないか。
幸いにもそのようなことは無く、恭順の意を示してはいるものの。これ以降同じようなことがあれば、いつかはそうなるかもしれない。起こりうることは必ず起こるのだったか、情報の漏洩の可能性も考えれば、この方法は封印すべきだろう。
魔法無し近接戦闘力:ケモミミ>越えられない壁>王子>主人公≧世話役
魔法あり近接戦闘力:世話役≧ケモミミ>才能の壁>主人公>越えがたい壁>王子
何でもあり:主人公>口では表現できない壁>他
開始距離が一定以内ならケモミミ、そうでなければ主人公がうっかり余計な知識を教えた世話役ちゃんが、ほぼ一方的に決着を付けれる。
別に実験動物とかそういったワードは関与していない




