21話
「おっ、フードの。いい女連れてるじゃねぇか。」
「あるじゃん。」
「ありましたね。」
あるじゃなくいるかな。冒険者ギルドでテンプレにであった。フラグ回収はやい。仕込みか?見た感じ仕込みなんだよな。
「おい、聞いてんのかぁ。あぁ。」
大きな声で威嚇された。だが残念。威嚇され威圧も感じるが見た目で半減以下に。子供だからね仕方ない。もしかし頭脳は超賢い?服やズボンに所々穴があるのは衣装?
周りは困っている。とりあえずお小遣い、100ジェニーを渡してみた。
「先輩。何しているんですか?」
「お金で解決するダメな大人いるからマネ~てみた。」
うん。うまいこと言えた。隣白けているが気にしない。
周りの大人の一部が顔を背け、一部が嫌なことを思い出したような顔をし、一部が納得した顔をした。みんな思い当たる何かがいるらしい。
ぱっとみ受付の向こう側と、きちんと手入れしている装備を持っている人ほどその傾向が高い模様。AIにも歴史あり?
「ありがとう。はっ違う。えっと。」
ポケットから布きれを取り出し何か確認している様子の子供。
「流石、冒険者ギルド。わざわざ定番を用意するなんて。」
「この前の件で忙しくしていたはずなのに暇なのですね。」
結の言葉でいたたまれない雰囲気が漂い、ひそひそと声がする。犯人探しをするようだ。
「ちょっといいかい。」
「はい。」
西洋人と一緒思った。外国の歴史かファンタジー映画に出てきそうな男性傭兵。かっこいいという感じだ。
「こちらで話さないか。」
「あぁ、ちょっと待ってよ。こっちが先なんだから。」
そうじゃないぞ子供よ。彼は仕込みじゃない。
結は頷いた。
「わかりました。君もおいで飲み物代ぐらいあるから。」
明るい顔をした子供はすぐにおろおろし、辺りを見渡した。探している人物は見つからないのか走って飲食スペースに。
1人の戦士風な男、マーカー付きのプレイヤーの所に行き声をかけ押し倒されてプレイヤーは速足で何処かに。
「一応運営に連絡しました。」
「本当に迷い人って真なる神に訴状できるんだ。」
結の仕事がはやい。
冒険者ギルドと時間、出来事が揃っていればログから参照できだろう。それにしても、それだけテンプレしたかったのか?
結は運営と連絡の単語を使ったが、一緒にいる彼には運営は真なる神に連絡は訴状に聞こえたらしい。自動変換機能がある模様。訴状という程大層なことではない気がする。問い合わせ機能は大抵のことについている。
ゲームは僕らだけ。当たり前な事だが、それを強く感じた。
「教会で行う祈りに近いかもしれません。ただ声を届けるのが他よりも簡単というだけです。」
ウィンドウを開いて準備して送信ボタンを押すだけのお手軽作業。教会関係者が聞いたらがっくりするかもしれない。それとも自信をなくすか、怒るかするかもしれない。そういう人、専門の修行してそうだしね。
「それに資料だと別枠の扱いの印象あるから一緒にしていいものか。」
「あ〜。ノエルが言ってた見てるだけでたまに世界に試練をだすってやつか。」
それも仕事ですから。と何処からか聞こえそうな気がした。
ノエルさんとやらが誰だか知らないが、試練って公式イベントだろう。
少なからず、2人以上6人以下のパーティーなのではないか。盾、剣、魔法、回復が基本でそこに盗賊系、召喚系、付与系があわさる感じかな?
「お待たせしました。」
男の人が声をかけた先にはさっき倒れた子供を回収した見るからに神官と魔法使い風の服を着た女性が2人にプレート製の鎧を着た1人だけ中性的な顔立ちの女性? 判断に迷う。襟首から黒い線が見える。怪我かな? 5人パーティーのようだ。
「初めまして迷い人。私は天秤のリーダーを勤めているアリーシャ。」
鎧の人は女性かもしれない。声が高い。天秤のイメージにあるのは司法関係者と黄金の鎧の戦士。司法関係者かな。誰かを1人より大勢を、というカリスマ性の様なものを感じる。 もしそうなら社会科見学?
「白い服がノエル。黒い服がエリー。君達を連れてきたのがフリード。」
「初めまして鬼灯です。」
「結です。よろしくお願いいたします。」
「君は?」
「リーシャ。」
彼じゃなくて彼女はリーシャと言うらしい。子供の性別の区別がつかない。洋風だから? いや、名前のイメージが女性なだけで男の子の可能性も。ノエルさんは意外と早く会えた。
「さあ座ろう。」
アリーシャの左右にノエル、エリーがその後にフリードが立つ。座るとは?
空いている向かい側、端から順に僕、結、リーシャ。男性の地位が低い空間?
「それでご用件は?」
「無いよ。ちょっと大変そうだったからね。」
結のちょっと低い声にあっけらかんと返すアリーシャ。なにやら戦いが始まった模様。
とりあえず、話は任せて何か飲み物を。水はセルフサービス?
メニュー表もないし、出てこない。ファーストフード形式かな。
「あとは迷い人に興味がある。」
「どうしました?」
「水とメニュー表をとって来ようかなって。」
「ありませんよ。」
アリーシャの言葉をスルーして席を立とうとする。苛立ちに似た空気を感じる。隣の2人、もしくは3人にとってアリーシャはとても大切な人物なのだろう。冷たい言葉で返したのはノエルからも見て取れる。それに比べアリーシャはよほど面白かったのか笑いを堪えている。常識を疑われた?
「す、すまない。私も昔、似たような間違いしたのでな。悪気があるわけじゃない。それから水もお金がかかるから。」
「水よりお酒の方が安い地域ですか。」
「少しだけな。今は水が150で一番安い酒が180。水源地でも外なら最低50はとられる。ついでに言うと回復薬は100から。」
水だけで町に入る入場料と10しか変わらない。下水道があるからといって全体に水が届いているわけではないのか。それとも汚水を流し貯めるだけ? そう言えば井戸あったな。からとつくのは性能によるということ。80か60始まりと勘違いしていた。大量発注で値引きしてもらったんだな。
「今はとは?」
「3、4日前に下水道からネズミと虫が溢れてきてね。白、青、薄い青の魔石をそう取り替えして費用がかかっているんだ。」
「なるほど洗浄と貯水量の問題ですか。」
「そう言うことだ。」
イベントの影響がここに。汚水を貯めるとは別に清水を作り出す仕組みがあるのか。
白が浄化で青と薄い青が水を出すか集める作用があるのだろう。魔法石もしくは魔力石と言われるぐらいだから力はあるはず。薄いい青というよるは水色?
「その時に面白い現象を見てね。白い光が街を3分の1ぐらいを包んで綺麗にして傷を癒す。光や炎剣を出して敵のみを焼き払う。あれはどんなスキルだい。」
結が顔を向け首を振るう。僕も心当たりはない。
「知らないです。あるとしても職業由来の特殊スキルだからとしか言い様はないです。」
あるなら特殊職業の限定スキルというものだろう。体への反動が強そう。
「なるほど。本人たちに聞くしかないか。」
並べられた木のカップ。向こう側は紫色、葡萄酒?こちらは透明、気泡があるな。もしかして炭酸?
頼んでないのだが。向かい側が頼んだのか。ここでは水=炭酸水?
「さて飲もうか。2人の年齢がわからないから酒じゃないけど酒の方が良かったかい。」
「いえ大丈夫です。」
「ん。ゲホッ。ゲホッ。」
むせるリーシャ。毒味をさせている気分になる。急に飲むからと思いながら口にする。
「微炭酸という感じですか。甘さは砂糖?」
「蜂蜜だよ。蜂蜜も高いけど砂糖よりはまだまだ安いからね。迷い人はサイダーと言っていたそうだ。」
蜂蜜の方が高価な現代社会。環境の問題か。外来種に駆逐もある。他はここにミツバチ以外にも花の蜜を集める生物がいそう。
炭酸の技術。
「重曹か苛性ソーダ。水酸化ナトリウムはたして。」
「掃除でもするんですか。」
「漬物も美味しくなるらしいよ。」
漬物のもとの近くに重曹あったから他の2つもできるだろう。しぶぬきも苛性ソーダでできるらしいし。
「失礼。こっちの話です。」
「迷い人の技術というやつだね。確か、君達も対して知らないちぐはぐな印象だったかな。」
ネットに転がった情報はある。だが、所詮素人。専門的な話はできない。
「どうやらこちらから提供できる情報はないようですね。」
「そのようだね。けどそれは君達基準だ。絶対ではない。」
「それでご用件は?」
結とアリーシャの主導権争いはアリーシャ有利という感じかな。結の方が先に切り込んだがアリーシャの方が余裕がある様に見える。
「これを修復できるスキルを探している。」
アリーシャが袖を捲り腕には黒い線が巻き付いているのを見せた。紋様か陣か。付与系統? 修復できるのか? 使い捨てが基本と勧められた本にあったが。
「使い切って同じものを付けるか、付けた人に直接依頼すれば宜しいのでは。」
「それが出来ないんだよ。」
「ご病気で。」
「さあねえ。何をしているのやら。これが呪いなら話はもっと楽なんだけどね。呪いっぽいだろう。」
捲った服を下ろし腕をしまう。笑いながら言うアリーシャは本当に困っているという感じがしない。何かある?
軽い感じで言うが呪いは呪いで大変なのでは。特別製なら特別な解き方があるわけだから。それとも呪われる心あたりがあって呪解が容易? 謎な人、アリーシャ。
「どう思いますか。」
「無理。」
「断言するほどかい。」
周りの人から圧力を感じるのですが。仕方ない。出来ないものは出来ない。
「それがなんでもない普通のなら材料、道具さえ揃えば僕でもそれ風に見せる程度はできます。でもそうではないでしょ。」
「そんな技術持ってたんですか。」
心底驚いた様子の結。結が驚くほど難しい訳ではない。事はできる。人に見せたりお金を貰ったりする技術はない。
「やろうと思えば出来るってだけだよ。結局なところ針に染料付けてチクチクするだけでもそれっぽい物は出来るからね。最悪、布に絵を書いて色縫って乾く前に移すなんてことすれば見てくれ上はいいわけだし。」
「あ〜。そういうことですか。」
「なるほど。言われてみればそうだね。」
「安心しなよ。やらないよ。」
アリーシャにかかる無言の圧力。そして次に余計なことをと抗議の視線をむけらる僕。ここは安心させるべきかな。
「仮に修復技術持っていてもやれないいけどね。
個人的な意見だけど絵を修復するときってさ、職人の技術以上に材料の選別が重要だと思うんだよね。書かれた時代が同じならいいけど、昔なら使っている絵の具の材料が違う。あっていてもそれを調達するのに苦労する。いまのを使う場合も乾燥させたら色あいが違うなんてこともあるそうだし。混ぜ合わせたものが下地とあわり色が滲むなんてことがあっても可笑しくない。その辺をカバーするのが職人の技術なのだけれど。ただ、そこそこ技術を持ち、同じ材料、同じ配分が揃えば出来る可能性もある。そこそこなら筆の動きぐらい真似することも出来るだろうし。元の絵を少し傷つけるかもしれないが見れなくはない。」
「つまり材料があれば出来る人がいるはずだから他に出来る人を探せと。」
「普通の物ならね。けど、逆。そう言ってきた人に近づくなという話。」
「先輩。わかりづらいうえに回りくどいです。」
「いまのは普通を前提にした話。普通ならそれでいいんだよ。ただ、魔素、魔力的な物が含まれるならだめ。いくら材料と道具が揃っていても例外はあるかも知れないけど確証が無いならやめた方がいい。どの程度の期間を探しているか知らないけど、少しいたか、これから会うかわからないが気を付けた方がいい。失礼。長々と無駄に話だった。」
「いや構わない。気をつけるよ。同じ事をエリーにも言われたばかり出し。」
「魔力個体論ですか。最近来たばかりなのに。勉強しているのですね。」
黒い服のエリーさんが口を挟む。ヒャッハーしているイメージが強いのかな。生産プレイヤーもいるはずなのだが。レベル上げ? 材料の現地調達?
「最近、そういう話を聞いただけですよ。まとわりつかせることは出来るが取り込めないって。それはギリギリ取り込めない範囲なんでしょう。」
これで終いかな。これ以上はわからないというのもあるが、最後は余計な一言だった。威圧が警戒に変わる。
それだけ貴重な物なんだろう。
「さて、話は聞けたからそろそろ行くよ。」
アリーシャは、席を立つとリーシャの方を向いた。
「この子は私の方で預かるよ。君達より幾分かましだから。」
「お願いします。」
「たまにしかいない人よりはいいか。」
即答する結。それから遅れて答える僕。
アリーシャの言い方が気になるが、真実そうなのだから仕方ない。最悪、眠ったまま何日、何週間、何ヵ月と言うことだってありえる。家持ちお手伝い付き庭に金の生る木があれば話は違う。けど、残念ながらそういった富裕層にいない。
「ごめんなさい。」
「大丈夫ですよ。」
「これで一つ賢くなった。気をつけるんだよ。」
結と僕で160ジェニーづつを渡す。
彼女たちがいれば大丈夫だろう。
1人1人頭を下げて外に行くアリーシャ達。あれだけ警戒していたのに律儀だなと思いながらふと思う。
「ここの代金ってさ。」
「そんなこともあります。」
僕が払うらしい。迷惑料があってよかった。ついでに言うと身分証の発行前の半券すら発行できなかった。スケスケが駄目なのか。僕には冒険者は早いらしい。次いこう。
「結局全滅でしたね。」
「それな〜。」
4つの教会全てだめだった。
これだけあるのに出ないとなるとやはり教会に種族の要素があるのだろう。
「さっきは、どうしてあれの話をしなかったんですか。」
「可能性として考えるならありだが確証があるわけじゃないからね。」
あれとはチュートリアルの時にしたアリス・パンドーラの魔力譲渡のことだろう。
エリーさんが言う魔力個体論と真っ向から否定する効果。アリス・パンドーラの手を借りれば見てくれ以外にもそれっぽく直せる。けどなぁ。
「どうも胡散臭い。」
「さっきの話がですか。それともあれがですか。」
「話の方がだよ。本によれば人体のは使い捨て、永続的にするには物だけが基本。魔道具がいい例。オフラインゲームのオーラで包むのほかにもある。術式を刻むか、術式から放出するか。その以外は隷属系。このゲーム奴隷制度あるっぽい。あと使役魔法。他に呪術の応用が必要なんだと。」
「呪いではないという話ですから隷属ですか。誰かに操られている様子はありませんでした。むしろ、明らかに逆です。」
「応用だからと言って必ず呪う訳ではないと思うよ。祝と呪は同じ意味から派生って言うし。まじないも同じ漢字。ようは使い方ってどっかできいた。」
「何か、あっ、あ〜。祝詞と言霊がどうとか言ってたような気がします。よく覚えてますね。テレビかラジオで聞いた知識の披露って現国の教師としてそれはどうなの程度にしか記憶にありませんでした。」
「さっき思い出した。」
結も思い出した様子。酷い言い様だが、実際、雑学の番組で言っていたと言っていたのだからいいか。説明もあやふやだったような気がする。覚えていないけど。
「結局の所知っている人に聞くのが一番なんだけど。」
「行方不明ですからね。人となりを聞いても簡単に話すとは思いませんけどね。」
「一番詳しい人にでも聞くさ。なんてったって神様の使徒らしいからね。」
「知識チートですね。」
そうして待っているだろうね運営の宿の扉を開ける。
「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか。私ですか。それとも、・・・・・・答えですか。」




